2015.12.24

BM RECORDS TOKYOへようこそ クリスマスのロックンロール!!

メリークリスマス。さて、皆さんはどんなクリスマスをお過ごしでしょうか。
クリスマスに似合いそうなコンピ盤で私がすぐに思いつくのはアメリカならヴィンス・ガラルディの『スヌーピーのメリークリスマス』とかザ・サルソウルオーケストラの『クリスマス・ジョリーズ』。そして日本ならクリスマスソングの鉄板にして定番中の定番である山下達郎の「クリスマス・イブ」が入ったベスト盤『OPUS ALL TIME BEST 1975-2012』あたりでしょうか。

でもこのブログは主にUKミュージックについて語る場ですので、こんな一曲はいかがでしょうか。ザ・ローリング・ストーンズのギタリストであるキース・リチャーズが1978年12月12日にリリースしたシングル「ラン・ルドルフ・ラン」です。

20151225_main2
キースといえば、先頃およそ23年ぶりのソロアルバム『クロスアイド・ハート』をリリースしましたね。ロックンロールを独自のメソッドで進化させたこの“キース節”は、世界中の彼のファンから歓迎されました。
この「ラン・ルドルフ・ラン」、キースの初ソロシングルでした。オリジナルは「ジョニー・B・グッド」でおなじみ、アメリカのロックンロールの祖、チャック・ベリー。つまりカバー曲です。現在はiTunes Music StoreやAmazon.co.jpなどのデジタルリリースで購入することができます。

20151225_main0
《走れ、ルドルフ(=トナカイ)、サンタを街に連れて行け》というクリスマスソングです。
のちにストーンズが開店休業状態だった88年に自分もソロ活動をスタートさせ、結局は「やってみたらミックの気持ちもわかった」なんて言っちゃっていましたが、かつてのキースは“ストーンズ命”といったスタンスで、相棒のミック・ジャガーがソロ活動を始めた時は胸倉を掴んで殴りかかりそうな勢いで激怒していたのです。
そんなバンド命だったキースがソロシングル。しかもあの強面でクリスマスソング。いろいろと意外な一枚であるとも受け取れます。 実はこのシングルをリリースする直前、キースは度重なるドラッグトラブルの上に、身に覚えのないドラッグ所持で摘発されてしまっていました(※これ、当局の陰謀説も囁かれましたが、いずれにせよ当時の彼がバリバリでズブズブのヤク中だったことは確かです)。
もはやこれまで。そんな覚悟で出廷したカナダのトロントで行われた裁判で、しかしキースは意外な判決を受けます。それは「視覚障害者のためのチャリティコンサートの開催」という条件付きの大岡裁きで、何とめでたく釈放されたのです。
これはストーンズのファンだった盲目の少女が裁判官にキースの才能を直訴したためと言われています。実際にそのコンサートは一度限りのスペシャルバンド“ニュー・バーバリアンズ”によって果たされました。

これ以降、キースは警察のご厄介に(ほぼ)なっていません。ドラッグトラブルを経て、少女に助けられ、心機一転という気持ちもあったのでしょうか。自身のルーツでもあるチャックのナンバーを、キースはワイルドかつ高らかに歌い上げています。
ちなみにキースがのちに開始したソロ活動を後押ししたのは、チャック・ベリーの還暦を祝う記念コンサートの音楽監督を手掛けたことでついた自信がきっかけでした。この模様は1986年公開の映画「ヘイル!ヘイル!ロックンロール」で観ることができます。イントロの弾き方違うという理由で、チャックからコテンパンにイジめられるキースが見ものです(笑)。

20151225_main3
ロックンロールに衝撃を受けた時。心機一転、出直しの時。そして新たな一歩を踏み出す時。キースの節目にはいつもチャックのロックンロールがあった、とも言えるでしょう。
ちなみにそんなキースの半生は彼自身が自伝を綴っていて、日本語訳も出版されています。「キース・リチャーズ自伝 ライフ」です。これ、アメリカでは出版時にベストセラーとなりました。これ、すんごい分厚い本ですが、前半はあまりにむちゃくちゃなエピソードが炸裂していて、ハッキリ言って下手な映画や小説より面白いです。

20151225_main4
また、ジム・マーシャル、テリー・オニール、ニール・プレストン、ゲレッド・マンコウィッツらが撮影した写真を集めた「キース・リチャーズ写真集 A LIFE IN PICTURES」の日本語訳版も先日発売したばかりです。クリスマスプレゼントや年末年始のお供にいかがでしょうか。

と、いうわけで、今回はクリスマスなロックンロールについての小噺でした。
ストーンズもビートルズも、チャックやエルヴィス・プレスリーといったアメリカのロックンロールに感化され、それを独自のオリジナリティにまで昇華させたことで、今日まで愛されるバンドとなったのです。そんなイギリスとアメリカのロックの彼の日の関係性に想いを馳せながら、こんな変化球のクリスマスソングを聴いてみるのもたまにはいいのでは?
もちろん、クリスマス以外のタイミングで聴いても、テンションが上がること請け合いです。

では、皆さん、よいお年を!!


Text by Uchida Masaki


plofile
内田 正樹

内田 正樹

エディター、ライター、ディレクター。雑誌SWITCH編集長を経てフリーランスに。音楽、ファッション、演劇、映画、フードと様々な分野におけるインタビューや編集制作全般に携わる。編著書に『椎名林檎 音楽家のカルテ』がある。サンデー毎日で「恋する音楽」を連載中。NTT DOCOMO『dヒッツ』にてプレイリストを月2回提供中。テレビ朝日の配信チャンネル「LoGiRL」ではシンガーのハナエとともに毎週木曜日の生番組にレギュラー出演中。

内田 正樹さんの
記事一覧はこちら

おすすめ商品

RECOMMEND