2016.06.24

ブリティッシュ“ライク” vol.10 ポール&ミシェル

ここのところスパイ、サスペンスと続いていたので、今回は思い切って異なるジャンルの映画「フレンズ ポールとミシェル」について触れてみたい。
簡単に内容を説明すると、在仏英国人のポールと、アルルから身ひとつでやって来たミシェルがパリで出会い、意気投合した男女はミシェルの故郷アルルへ駆け落ちするという、絵に描いたような青春映画である。文章で説明すると目新しいところのない内容に聞こえてしまうが、この映画はなかなか興味深い。まず魅力的なのは、アニセー・アルヴィナ扮するミシェルのファッションだ。花柄のワンピース、赤のハイソックス、オックスフォード、おさげの姿は鮮明に記憶に残る服装のひとつでラヴリーだ。さらに身体の特長を活かしたハイウエストスカートのタックインスタイル、絶妙な裾幅のワイドデニムパンツを用いた着こなしなど、さまざまなバリエーションを披露している。なかでもベレー帽の被り方が個性的だ。この作品が製作されたのは1971 年ということもあり、リトル・ガール・スタイルの名残や、サイケデリック、フォークロア等さまざまなスタイルが交わっていることが見受けられる。

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続いて、いかにも坊ちゃんといういでたちのポールことショーン・バリー。若干15 歳にしてタイドアップしたスーツを着こなし、くわえタバコでプリムス、メルセデス、マスタングを颯爽と乗り回す姿はニクイ。ただ、それが着させられた雰囲気を醸さず、まるで普段からそのように振舞っているように見せるありさまは見事である。駆け落ちしたポールとミシェルは新たな命を授かる訳だが、そこからのポールの危機管理能力の高さには目を見張るものがある。御曹司ゆえに働いたこともないであろうこの15 歳の青年は、金が尽き、食べるものがない状態に陥っても、逃避行をやめてパリに戻るという選択をしない。仕事を求め、是が非でも金を稼ごうと泥にまみれ奔走する。そんな土臭い一面をのぞかせる彼の姿に心を打たれる。困窮状態の最中でも、愛用のスーツを手放さずに着用しようとする高潔な精神は美しかった。
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この映画を語る上でのポイントは、意外性なのかもしれない。駆け落ちを試みた若き男女は現実の厳しさにぶち当たり、挫折して元の世界に戻っていくという展開ではない。困難に直面しながらも、腐ることなく乗り越えていこうとする、芯のある生き様が描かれたバイタリティ溢れる作品だ。そして、それを助長するかのようなエルトン・ジョンの音楽が心地よい。
忘れてはならないのが、本作の監督である英国人ルイス・ギルバート。「007シリーズ」を三作も監督した名匠自ら製作も担い、オリジナルストーリーを書き下ろした渾身の内容だ。
実は、このポールとミシェルには続編があり、3年後の彼らが描かれている。DVD 化されておらず、いまだ観ることができていないのが残念だ。


Text & Photo by Shogo Hesaka

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部坂 尚吾

部坂 尚吾

1985年山口県宇部市生まれ、広島県東広島市育ち。松竹京都撮影所、テレビ朝日にて番組制作に携わった後、2011年よりスタイリストとして活動を始める。2015年江東衣裳を設立。映画、CM、雑誌、俳優・タレント・文化人のスタイリングを主に担い、各種媒体の企画、製作、ディレクション、執筆等も行っている。山下達郎と読売ジャイアンツの熱狂的なファン。
江東衣裳
http://www.koto-clothing.com

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