2016.08.25

ブリティッシュ“ライク” vol.12 納涼、英国映画

残暑厳しい当節。ついては、身の毛もよだつような内容ながらも味わいのある映画、題して「納涼、英国映画」をお届けしたい。
まず最初に紹介したいのは、アルフレッド・ヒッチコックが1927 年に英国で製作した映画「下宿人」だ。

この作品は、1920 年代のロンドンのスタイルや風習を推し量ることができる、優れた資料としての一面も持っている。代表的なのは、”フラッパー”や”イットガール”と呼ばれた当時主流だった女性のスタイルだ。全体的に身体のラインを強調せず、ストンとした直線的なラインのドレス。ウェーブのかかったショートヘアにクローシュと呼ばれるハット。細い眉毛に強いリップと、ヒロインのデイジーなどはその最たる例である。

また、この「下宿人」は、ヒッチコックの第3作目にして初のスリラー作品である。サイレント映画のため、言葉による恐ろしさが表現できないにも関わらず、背筋が凍るような恐怖と緊張感を保ち続けることができるのはヒッチコックの手腕によるものだ。たとえば、天井が透けて見えるよう工夫されたセットを、下から見上げて撮影する趣向を凝らした技法などは、非常に独創的で印象深い場面である。

そんなヒッチコックのドキュメンタリー映画「ヒッチコック/トリュフォー」という作品が年内にも公開されるという情報を入手した。古典と呼ばれる作品を鑑賞し、その製作者たちの声に耳を傾けることができる機会というのはなかなか貴重な体験であり、得られることも多いのではないだろうか。

20160825_main1 Photos by Philippe Halsman/Magnum Photos © COHEN MEDIA GROUP/ARTLINEFILMS/ARTE FRANCE 2015 ALL RIGHTS RESERVED.
『ヒッチコック/トリュフォー』
12月10日より 新宿シネマカリテほか全国順次公開
配給:ロングライド
http://hitchcocktruffaut-movie.com/


次に紹介したいのは、1958 年に英国で製作された「吸血鬼ドラキュラ」という作品だ。

監督は、”ホラーの巨匠”として名高い英国人テレンス・フィッシャー。主演は、名優クリストファー・リーである。彼らは、「フランケンシュタインの逆襲」でもタッグを組んでおり、共に製作されて60 年近く経過しているが、今なおホラー映画の金字塔とされている。

Vol.9 でも少々触れたが、独特の声のトーンと優雅な静けさを併せ持つクリストファー・リーは非常に好きな俳優だ。彼が鬼籍に入ったとき、残念ながら追悼特集ができなかったこともあり、待ってましたと言わんばかりにここにはめ込んだという経緯だ。余談だが、「007」の生みの親であるイアン・フレミングは、クリストファー・リーの従兄弟である。

それはともかく、このドラキュラは彼の当たり役となり、合計9作ものシリーズ作品となっている(すべてにクリストファー・リーが出演しているわけではない)。最終作にいたっては、中国の山奥で復活したドラキュラは、カンフーの達人であるチン兄弟を擁するヴァン・ヘルシング博士と対決するという、色々な意味で恐ろしい内容となっているようで、恐ろしいものが苦手な僕はいまだ鑑賞できていない…

早いものでこのブリティッシュ”ライク”もvol.12、つまり一年が経過した。月一度の気まぐれな寄稿にお付き合いいただいている皆さまとBRITISH MADE に感謝したい。

Text & Photo by Shogo Hesaka

plofile
部坂 尚吾

部坂 尚吾

1985年山口県宇部市生まれ、広島県東広島市育ち。松竹京都撮影所、テレビ朝日にて番組制作に携わった後、2011年よりスタイリストとして活動を始める。2015年江東衣裳を設立。映画、CM、雑誌、俳優・タレント・文化人のスタイリングを主に担い、各種媒体の企画、製作、ディレクション、執筆等も行っている。山下達郎と読売ジャイアンツの熱狂的なファン。
江東衣裳
http://www.koto-clothing.com

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