肩肘張らない“英国的コートスタイル”を楽しむ方法 | BRITISH MADE

肩肘張らない“英国的コートスタイル”を楽しむ方法

2015.11.08

華やかさよりもスタンダードが今の気分

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あんなに暑かった日が続いたくせに、気がつけばもう秋本番。夕方などは何か羽織るものがマストな日も多くなってきた。そこでコートの出番となるわけだが、今季はなかでも英国的な外套を羽織りたい気分。何シーズンか前に、あるセレクトショップの原稿で、コートのことを外套と書いたら先方のプレスから「なんか古臭い?」と指摘されたことがあった。確かにイタリア物のカラフルなそれはそうかも知れないが、英国風の質実剛健なコートは外套と呼んでも差し支えないような気がする。外套。なにか頼もしく冬の寒さからきちんと守ってくれそうな印象がある。お洒落感度の高い人はチェスターフィールドなどを華やかに着こなすかも知れない。スーツジャケット風のラペルを持つそれはVゾーンを工夫する余地があり、重くなりがちな秋冬の装いを軽妙に見せることができる一着だ。しかし今季はそんなラテン系の着こなしよりも、グッと地に足のついた安心できる英国的外套スタイルを今一度見つめ直したい。

ステンカラーこそ日本のコート史における不朽の定番

発行:講談社 絵本アイビーボーイ図鑑掲載。

発行:講談社 絵本アイビーボーイ図鑑掲載。

安心できる外套。それはもうお分かりの通り(?)ステンカラーコートのこと。バルカラーと呼ぶ人もいるそのコートは、日本人にも馴染みの深い一着だ。あるスーツブランドの展示会で、珍しくステンカラーを前面に打ちだしていることがあり、尋ねたことがあった。プレスの人いわく「昨今は雑誌などでチェスターフィールドの露出が多く、うちもそれに乗っかろうと先シーズンは幾つかチェスターを展開したんです。しかしこれが余りうけず……。サラリーマンのお客さんにはステンの方が安心感があるとのことで、今季は久々にステンカラーを打ちだしました」とのこと。これはトレンドを云々する者にとって非常に感慨深い出来事だと思った次第。

そんなステンカラーコートだが、その呼び名はフランス語のスーティアン・コル(中世ヨーロッパのウエアに見られたヒダ襟を支える台襟)から由来したとの説がある。また、形的には1800年代半ば頃からスコットランド・インバーネス近郊の、バルマカーンにて着られていた重衣料がその源流と記す本もある。歴史は古いがこのバルマカーン型が一気に普及した背景には、ミッドセンチュリーの時代、アメリカ東部を拠点としたアイビーリーガーの存在が大きかった。本邦において馴染みが深いというのも、現代日本男子のお洒落原点と言われる1960年代以降、アイビールックを皮切りにステンカラーコートがしっかり外套の定番として受け入れられてきたからだと考えられる。


シンプルかつ味わい深い雰囲気作りが重要

JOSEPH CHEANEYのCAIRNGORM 2RとAVON C。

JOSEPH CHEANEYのAVON CCAIRNGORM 2R

昨今では生地のバリエーションも増え、女性的な美観を備えたモデルも見掛けるが、やはり定番となるのは厚手コットンのギャバジン素材。なかでもベージュ系はトレンドでもあることから非常におすすめとなる一着だ。かく言う自分も綿ギャバのベージュステンカラーを所有している。スタンダードな比翼式であるが、カジュアルに着るならボタンは打ち抜き式でもいいかな、とたまに思うこともある。それはさておき、こいつの良いところは何と言っても気の置けない野暮ったい雰囲気にある。コートを羽織ると長身の僕はどうしてもかっちり感というか圧迫感あるルックスになってしまう。チェスターしかりトレンチしかり。しかしステンカラーはなんともとぼけた味わいがあり、非常にノンシャランなところが魅力だと思っている。自分としてはユーモラスかつスタイリッシュでちょっとミステリアスな「ムッシュ・ユロ」を目指しコーディネイトしているつもりだが、恐らく多くの人は風采の上がらない「コロンボ」じゃんと思っていることだろう……。(誤解もまた服装体験における楽しみのひとつ)

さて、着こなし方はどうすべきか。基本的にはどう着てもサマになるのがステンカラーの良いところで、多くの人が安心感を抱いているのもまさにそういう部分と思われる。しかしトレンド商売をしている身としては、いくつか提案したい装い方がある。ひとつはアランセーターなどとの組みあわせスタイル。オフホワイトの縄編みを効かせたローゲージのクルーネックにネルのグレーウールパンツ、良く磨いた黒革のウイングチップを合わせてみるのはどうだろう。その場合のコートは定番のベージュもアリだが、爽やかな印象のネイビーも見逃せない。今風のスタンダードでありながら、深い味わいを備えたルックスに仕上がるはずだ。すっきりスタンダードに仕上げる今季風と同時に、ラギッドな脇役を挟み込むレイヤードスタイルも、この秋冬期は注目が集まっている。

例えばジージャンやビンテージ系のハンティングベストなど。その他、粗いツイードのジレをカマしてもメリハリある装いになること確実だ。ボトムスは先ほどのグレーパンツでも良いし、ジーンズやチノでも上手くいくに違いない。もっとシティボーイを気取りたい人には、スウェットパンツ&白スニーカーとの合わせもおすすめしておきたい。



Text by T.Hasegawa / 長谷川 剛

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