2016.02.28

胸元を彩るアクセサリーとしてのネクタイに魅せられて

ネクタイ着用

一本加えるだけで装いがピリッと引き締まる

皆さん、ネクタイはお好きですか? 僕は大好きです。しかしナゼ好きか? ということを深く突っ込んで考えたことは意外にもない。そこで今回は一人のネクタイフリークとして、その魅力をいま一度整理しつつ、一人でも多くのタイファンを作るべくマニアとしての責を果していきたいと思う。

まずタイの良さは“カッチリ感”にある。これは皆さんご存知のとおり、長年スーツとセットで活動を続けてきた彼等の努力の賜物だ。ハレのシーンや真面目に仕事をするときのスタイルとして、タイはマストアイテムという認識が世に広く浸透している。
僕自身としてはハレの日は元より真面目に働くことも極マレで、品行方正なサラリーマン諸兄にまぎれて“今、僕はいつもより真面目なツモリです”のアピールとしてタイを利用することが多い。加えて僕自身は大人風の品格をキープしつつ、程よく個性をしのばせられるところに、タイの大きな魅力があるように感じている。
ビジネスや控えめさが求められるシーンにおいて、ちょっと洒落感を出してやろうとクロムハーツのウォレットチェーンなどを腰に垂らす…というのは非常にリスキーな選択だ。しかしビンテージのタイにて胸元の違いを演出しようとするのは、大人の節度あるお洒落の範ちゅうと言えるはず。きらびやかなジャカードではなくちょっと版ズレしたような小紋プリントタイなどは、特にその代表格である……。

着こなしに味わいを添えるビンテージ・タイ

そう、僕はビンテージ・タイのファン。
感覚としては骨董品を選ぶような目線に近いが、古いタイには現代モノにはない味わいを備えつつ、きっちり現行品以上の“機能”を有しているところに特色がある。この辺の感覚にはひょっとしたら個人差があるかもしれない。しかし装い全てをトレンディな現行品にて賄ってしまうとスッキリ感こそあるものの、妙にエッジのないルックスになりがちだ(たとえるなら、歴史に対するリスペクト皆無のエエとこのボンボン風スタイル)。
基本の装いは現行品メインでももちろん構わない。しかし一点ビンテージの小物を取り入れることで、着こなし全体に奥行きや説得力が備わるように感じるのである。なかでも英国的な匂いのするビンテージ・タイは、クラシックの原点でもあることから、ハズし過ぎにならないのがポイントだ。見慣れているようでちょっと違う……。そんな匙加減こそ最大の魅力と言えるだろう。(文章にするとカンタンな表現になってしまうが、ココが本当に要点!)
参考までに以下に自前のタイを数点ピックアップしその魅力を伝えたいと思う。

華やかにして落ち着きも兼備する、英国的タイの楽しみ方

ネクタイ3本右から、1.ドット柄、2.レップタイ、3.小紋柄。
1.ドット柄とはいわゆる水玉のこと。中くらいの柄(だいたい5〜10ミリ程度)を「ポルカドット」と呼び、それ以上のものを「コインドット」、以下のものを「ピンドット」と呼ぶ。非常にシンプルなデザインだが、ファッションとして広まったのは意外にも1890年代の英国。英国チェックの代表でもあるタータンという言葉の流布が1500年代ということを考慮すると、ドットは比較的若い(?)柄なのだ。伝統的かつミニマルなデザインながら、写真のような大きさの柄になると昨今的な意味でのドレススタイルでは少々勇気がいる。カジュアルなスタイルのハズしとして使うとポップな感じで胸元が和らげることができる。

2.いわゆるレップタイ。近ごろのトラッドブームの流れで、いろいろなレジメンタルタイがリリースされているが、こういう生地感・色柄のものは見掛けにくい気がする。一般的には紺や赤や緑などを用いた柄をよく目にするが、写真のものは黒ベース。細幅と相まって醸し出るモダンな雰囲気が非常に今っぽい。ちなみにレジメンタル(レジメント)とは英国陸軍の連隊旗縞のことを意味し、極めて英国的な柄のひとつとされている。

3.レジメンなどのストライプ柄がミリタリー背景ということもあり、スポーティな印象を放つのに対し、極めてシックな雰囲気を感じさせるのが小紋柄タイの特徴。なかでもプリントものは鄙びた印象を兼ね備え、民芸品のごとき味わいを持つ。この一本はタグにある「ALL WOOL CHALLIS」からも分かるとおり毛100%。シルクプリント地よりも一層野趣あふれるタッチがポイント。

ネクタイ3本右から、4.馬柄、5. ペイズリー柄、6.タータンチェック。
4.馬柄を英国的と断じるのは語弊があるだろう。しかしイクストリアン(スポーツ乗馬)の趣味は非常に英国的だ。昨今のシンプルスタイルはある意味ストイック。多少のユーモアを込めたいとき、こんな柄タイをしのばせて崩しを演出するのもひとつの手。とはいえこれをスーツスタイルに使うほど筆者は猛者ではない。クルーネックセーターなど、もはや結び目しか露出しない着こなしのときなどに、こんな柄タイを挿し込み「オレ流スポーツミックス」を実践中。

5.バンダナを思わせるユルいペイズリー柄のシルクプリントタイ。ネイビージャケットにシャンブレーシャツ。そしてグレーパンツの合わせのときなどに使用。胸元が緊張せずホンワカするのが魅力だ。ペイズリーとは元々スコットランドの地名で、インド・カシミール地方原産の勾玉模様生地が19世紀英国を中心に流行し、その地において多く生産されたことからペイズリーの名が付いた。(非常に味わい深い柄で個人的にも大いに好みだが、いかんせん女性ウケはナゼか最悪。聴けば「グロい」とか「ジジ臭い」などなど……(哀)。世の女性はもう少し見識を広げていただきたい)

6.英国といえばやはりタータンチェック。この一本はそのなかでもフレッチャー・オブ・デュナンと呼ばれるもの(フレッチャーはゲール語でArrow makerの意)。ステンカラーコート+カーディガン+ジーンズなどのモッサリというか素っ気無くなりそうな着こなしのときは、こんな赤がピリッと効いた濃い味のウールタイを投入するとバランスがとれる。

英国大御所が手掛けるタイは、まさに進化するビンテージ

とまあ、見てきたとおり僕はカジュアルからドレススタイルまで、何かにつけてタイのお世話になっている。大雑把に総括するとジャケットやスーツは定番モノをチョイス。そして合わせるタイでもって自分なりの趣味嗜好を表現するというスタイルだ。つまりネックアクセサリーとして非常に効果的だと考えているわけだ。だからこそタイだけはセレクトにこだわり続け、結果ビンテージに行き着いたという部分もある。しかしそうだといって、ネクタイはビンテージが至高、と言うつもりは皆無だ。
無地モノなどはむしろ現行品から選び出すことが多い。しかもここ数年はビンテージエッセンスがトレンドの時期。英国的なスピリッツを持つブランドでは、伝統的なビンテージ柄をベースにさらに洒脱にアップデートさせたタイを多数リリースしているのだ。わざわざアテのないビンテージショップ巡りをすることなく、簡単に趣味の良いタイが手に入る絶好のタイミングでもあることを覚えておきたい。

なかでも英国的な背景とモダンな洒落感を備えたブランドとして、押さえておきたいのがドレイクスだ。我が国では日本生産のものも多いに人気を博しているが、英国趣味を貫くならぜひ本場イギリス製を手にとってもらいたい。
今のタイミングで狙うならクラブタイ風の二色レジメンやブラックウォッチ柄も良いだろう。特にドレイクスらしさを満喫したい人にはグレナディン素材のタイをプッシュしたい。“からみ織り”のシルクタイは、無地にして複雑な織りが醸す味わい深い素材感を備えているのがポイントだ。
来春のジャケットのトレンドもフレスコ調や凸凹感ある素材使いのものが注目を集めている。無地のグレナディン・タイは、個性的な味わいを持ちつつも無地ゆえに、柄シャツと合わせやすいところも長所。ドレスからカジュアルスタイルまで幅広く使い回せること確実の逸品だ。

グレナディンタイドレイクスのグレナディンタイ

Text by T.Hasegawa / 長谷川 剛

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