2016.11.17

THE AUTHENTIC UK vol.2 英国靴。 その「アンダーステートメント」な佇まい。

編集の仕事をしていてよかったと思う瞬間があります。企画立案、取材、撮影、原稿執筆といった雑誌をつくっていく行程のなかで、いちばん好きなものは何かと問われると、私は迷わず「ファクトリー取材」と答えます。世界のあちらこちらにモノ作りの現場を訪ねて職人の仕事ぶりを伝えることは、自分自身のライフワークといってもいいでしょう。

英国靴をつくり続けるノーザンプトンは、私がメンズファッション誌のキャリアをスタートさせた頃から、ぜひ取材してみたい聖地の一つでした。夢叶ってファクトリーを初めて訪ねたときのことを、今も鮮明に記憶しています。ソールを一足一足仕上げていく、職人のキビキビとした仕事ぶり。そして、シェルフにずらりと並べられてリペアを待つ、世界中の持ち主から送られてきた靴。作り手だけではなく、履き手の一人ひとりにも「モノ語り」があることを目の当たりにして、胸が熱くなる思いがしました。

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ウイングチップ、ストレートチップ、プレーントゥ。ビジネススーツには、こうした紐靴を合わせる。そして、英国靴を選ぶべし。これは、アエラスタイルマガジンが読者に伝え続けているスーツを着こなすときのルール。グッドイヤーウェルト製法の英国靴であれば、履きつぶすことなく、ソールを交換しながら長く愛用できるからです。革が足になじんできた靴は、それを履く男性にとっては相棒のような存在に思えてくるはず。

何度目かのロンドン。老舗専門店が並ぶジャーミンストリートにある、シューズストアを訪ねました。商品を手にしたスタッフが口にしたひと言が、今も耳を離れません。「アンダーステートメント」。控えめな上品さを表現するときに、英国人が好んで使うこの言葉を聞き、身が引き締まる思いがしました。さらには、「本当のクオリティを持つモノは、見せびらかす必要がない」と教えてくれたのです。

メンズファッションの礎を生み出した、英国の誇り。先達たちの偉大なるレガシーに尊敬の念をいだきつつ、いつもアンダーステートメントの心掛けを失わずにいたいと思います。


Text by AERA STYLE MAGAZINE 編集長 山本晃弘
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山本 晃弘さん

やまもと・てるひろ「 メンズクラブ」や「GQ JAPAN」などを経て、2008年に季刊誌「アエラスタイルマガジ
ン」を創刊。服飾小物の目利きとしても知られている。朝日新聞デジタルに「男の服飾モノ語り」を連載中。

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