2016.12.01

230年もの歴史を誇る老舗ジュエリー・メーカー
「Deakin & Francis」ジェームス・ディーキン氏に聞く。

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バーミンガムの市街地であり、数々のジュエリー商が古くから歴史を刻み続ける英国随一の地区「ジュエリー・クウォーター」。中でも、230年前に創業したディーキン&フランシスは、最も歴史ある家族経営のジュエリー・ブランドとして、最高品質を誇るジュエリーを製造・販売している。
創業当初から踏襲するクラフトマンシップにこだわり続け、現在はカフリンクを中心にハンドメイドの製品を展開。それらのアイテムは、世界中のセレブリティや王室にも親しまれている。今回は、クリエイティブディレクターのジェームス・ディーキン氏と共にブランドの歴史を紐解きながら、ひとつひとつのジュエリーに込められる想いを伺った。

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ブランドの立ち上げから現在に至るまでの経緯を教えてください。

ディーキン&フランシス(Deakin & Francis)は、1786年に創業しました。創業して間もなく、チャールズ・ワシントン・シャーリー・ディーキンが加わり、フランシス家の最後の子孫であるCaptain Francisが第一次世界大戦で亡くなって以降、ディーキン家が運営をしています。私の父は10年前に引退をし、現在は私と弟のヘンリーで会社を経営しています。

スタッフの人数など、現在の組織体制について教えてください。

23名の社内チームに加え、他社とも緊密に提携しています。コンセプトの設定からデザイン、原料や原石の買い付け、製造、小売に至るまで、全てを自社でコントロールしています。

職人さんの中で、最も長い方は何年ほど勤務されていますか?

昨年3名の職人が引退しましたが、彼らの社歴を合わせると150年以上になりますね。本当に素晴らしいことだと思います。現在はスティーブが最も社歴の長いメンバーで、彼は16歳の頃から働いているので、“まだ”39年ですね(笑)。
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創設当初と変わらず同じ建物内で製造しているそうですが、その工場はどのくらいの広さなのでしょうか?発明家のジェームズ・ワットが居住していたという建物の歴史について教えてください。

現在、役員室とミュージアムとして使っている部屋は、James Wattsのリビングルームでした。また、ルナー・ソサエティ(ジェームズ・ワットやマシュー・ボールトンらが所属していた科学者たちの交流団体)もこの場所で満月の夜に集会を開いていたそうです。工場の敷地は駐車場を含めて1エーカー(約4046㎡)あり、戦時中には防空壕として使用されていました。現在はコンディションやノイズを改善するために電力を使っていますが、職人の道具を動かすオイル・エンジンも残っています。志を同じくする熟練職人たちに我々の側で働いてもらいたいという想いから、工場の裏側に「Deakin Village」という作業用の施設を作っています。
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同じ場所で製品を作り続けている理由について教えてください。

ディーキン&フランシスの石段を上った瞬間から、その歴史を感じてもらえると思います。私の祖先は7世代に渡って同じ石段を踏んできましたし、当社の全メンバーも同様です。ジュエリー・クォーターの中心に位置するこの土地は、創作、製造、そして販売をする上で最高の場所ですね。

ディーキン&フランシスのブランド・コンセプトを教えてください。

これ以上改良の余地がないほどの最高水準で製造していることが、ブランドの商品を特徴づけていると思います。近年、私たちが身を置くジュエリー業界は、残念なことに品質への配慮を忘れがちです。我々は保守的な教育を受けてきましたが、それが現代の人々に高く評価されているのは嬉しいことですね。

製品を作る際に最も大切にしていることとは何でしょうか?

「上質」「真面目」「誠実」であることです。私はあらゆる商品をデザインしながら、全ての生産監督も行なっています。父にはかつて「どんな時でも自分より安く商品を作る人たちが現れる。けれど、決して自分よりも上手く作らせてはいけない」と教えられたことがあります。この精神は素晴らしいと思いますし、私たちは最初から正しく製造を行なっているため、当社には修理部門がありません。これは誇るべきことですね。

ディーキン&フランシスならではの強みとは、どのようなものですか?

我々は独自のカフリンクを製造する、唯一のカフリンク・ブランドです。そしてこれが、私たちの類まれな歴史や同族経営、膨大な数のコレクション、多様でレベルの高いスキル、プレス加工やガラス質のエナメル加工といった専門技術へと結びついていることですね。

ひとつのジュエリーを作る際は、どのような工程で、どのくらいの時間を費やしていますか?

コンセプトとデザインがまとまり、クライアントと私が納得できた段階で、まずはパターンのために道具と原盤を作るところから始めます。特注の場合は、ディテールのレベルや必要な技術にもよりますが、最大で3ヶ月ほどかかることもありますね。例えば、ペアのカフリンクを作る際の作業工程には、プレス加工、切り抜き、やすり、磨き棒、穴あけ、溶接、磨き上げ、鋳造、艶出し、エナメル加工、焼き、バレル、トーチ、平打ち、はんだ付け、研摩仕上げ、セット、鍍金、酸洗い、光沢出し、そして品質証明などがあり、多くのデザインはこの全工程を経て作られています。
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一貫して職人の手作業にこだわり続ける理由は何でしょうか?

私たちの製品は、パーソナリティや人の感情によって定義づけられることが多く、大多数のモデルは彫りやはんだ付け、エナメル加工、艶出し、そして石をセットする工程まで手作業で行なっています。そのため、どのアイテムも非常に感触が良く、品質を保ち続ける人間の要素を感じさせるだけでなく、製品の完全性にも触れることができます。また、ディテールひとつひとつに気を配っているため、弊社の製品は決して大量生産されることはありません。

カフリンクにはクラシカルなデザインから動物や昆虫、スカルといった独創的なものまで幅広いモチーフが起用されていますが、デザインへのこだわりを聞かせてください。

まずは、ひとつのデザインにどれだけの水準でディテールを施すことができるか。そして、製作を始める初期の段階から正しく商品を作り、持っている能力を最大限に使うことですね。例えば「小さなフクロウがカフスの上で目を覚ます—。22のパーツから成る、古代エジプト人の技術を使って美しくエナメル加工を施した、楕円形の青いカフリンク」。私はこうした動きやユーモアのあるデザインを愛しているのですが、何よりも品質を全ての中心に考えています。
20161201_daf_2030 押すと目が光る仕掛けが施されているスカルのカフリンク
20161201_daf_IMG_2013 細部まで表現されたデザイン画

英国人にとって、「カフリンク」とはどのような存在ですか?

例えば、カフリンクをスタイルの仕上げに加えたり、カフリンクを付けて普段よりもワンランク上のスタイルを目指すなど、英国のカフリンクには伝統と表現の自由が存在します。三つぞろいのスーツやジーンズ姿で身なりを整える時に合わせたり、清潔な靴に合わせてもいいですね。カフリンクはどんなシチュエーションにも使えるのです!

では、自身にとっての「カフリンク」とはどのような存在ですか?

自己表現のため、そして楽しむために必要不可欠なものです。しかし、同時に真剣に取り組むべき存在でもありますね。また、他の人との違いを出すことができる、個性的かつ理想的な存在です。私が身につけているカフリンクを見た時の人々の反応や、彼らとの交流も楽しんでいます。
20161201_daf_2086ジェームス・ディーキン氏がインタビューの際に身に付けていたカフリンク

自身が考える「良質なジュエリー」について、見解を聞かせてください。

私にとって良質なジュエリーとは、単なる見た目だけではなく、重さ、バランス、プロポーション、なじみ方、機能、そして当然ですが、質と実用性、さらに色調や質感、仕上がりによって決まると思います。また、商品の使用目的が熟慮されているか、時間の経過と共にどのように磨耗していくのか、といった点も重要ですね。認識しづらい光沢など、細かいディテールを見る必要もあります。こうしたクオリティーが全て組み合わさって「良質なジュエリー」と言えるのではないでしょうか。
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最後に、今後の展望について教えてください。

来年にはロンドンのウエストエンドに初のショップをオープンするので、今からとても楽しみです。来月には弟の赤ちゃんが誕生するので、次の世代にも期待を寄せています。私たちの忠実な姿勢を認知してくれる人々が増えてきていますので、そうした素晴らしい方々へ商品を提供するために多忙な時期を迎えています。日本へも継続的に訪れてマーケットについて学び、自分の大好きなデザインにフォーカスしていきたいですね。
20161201_daf_IMG_2052 2016年から新たにスタートしたウィメンズのアクセサリーアイテム
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