若きクリエイティブ・ディレクターが語る。 Drake’sのアジア第1号店が目指す価値観とは | BRITISH MADE

若きクリエイティブ・ディレクターが語る。 Drake’sのアジア第1号店が目指す価値観とは

2017.04.17

Drake’s クリエイティブ・ディレクター マイケル・ヒル インタビュー

ginzasix
2017年4月20日、東京・銀座に、これからの銀座のランドマークのひとつとなる大型ショッピング施設、GINZA SIXが完成した。日本中が注目し、世界からの観光客も訪れるであろうこのテナントの中には、BRITISH MADEのショップもオープン。今回はそのショップ・イン・ショップとして、英国のネクタイやシャツを中心とした紳士服・アクセサリーブランド、ドレイクスのアジア初となるショップも完成。この店舗のコンセプト、内装デザインに至るまでのほとんどを手がけたのは、ドレイクスのクリエイティブ・ディレクター、マイケル・ヒル氏。父親、そして曽祖父からメンズファッションのDNAを受け継いだという現在39歳の若き才能は、東京・銀座の新たなステージで何を成し遂げようとしているのか。
マイケル・ヒル
— 最初にマイケルさんの生い立ちからお聞きしてもいいですか?

自分の父親がネクタイ・メーカーだったこともあり、子供の頃は毎週土曜日になると、たくさんのシルク生地を積んだ父の運転するクルマに乗って、一緒に工場に行っていました。今から思えば、今の仕事に通じるものと近い環境で育ちましたね。父、チャールズ・ヒルもネクタイを作っていたのですが、曽祖父であるレズリー・ブラウンもシャツ・メーカーであったりと、私の血筋の多くがメンズファッションに携わっているという家系なのです。

— 子供の頃から、そのようなシルク生地がネクタイになるものだということは分かっていましたか?

工場で作る工程まで見ていたので、もちろん分かっていました。当時から私は色の出方とか、生地の触り心地、デザインに興味がありましたよ(笑)。

— お生まれ自体がメンズファッションに囲まれた生活環境だったと思うのですが、自身もそういう道に進むだろうということは、なんとなく予想はしていましたか。

私の国では13、4歳になると、みんな将来のことを少しずつ考え始めるのですが、正直自分はアカデミックなタイプではないので、当時から銀行員になったりすることにはあまり興味もありませんでした。ただ、ずっと父の仕事の話を聞いていて、自然に現在のような仕事に興味を持つようになっていたようですね。
ネクタイ
—ドレイクスは1977年に創業したブランドで、今年でちょうど40周年です。2010年に前経営者のマイケル・ドレイク氏からブランドを引き継ぐに際し、マイケルさんはブランドとして何をキープし、何を変えようと考えたのでしょうか。

マイケル・ドレイクさんは、ご本人の人間的なお付き合いもあったと思いますが、世界中に数々の素晴らしい卸のお客様を持っていました。私がブランドを引き継いだ時に考えたのは、まずはその素晴らしい関係性を維持すること、守ることでした。そのベースがあるからこそ、ドレイクスは前に進んで行けると思ったのです。ただ同時に、我々のようなブランドは、「守り続けるだけ」ではこの先は難しいとも思いました。もちろんドレイクスを買っていただけるお客様自身が、“継続性”といったものをとても大切にする方々が多いので、デザインや素材などの部分で残すべきものはキープしています。その一方で私がやりたかったのは、トータルな見え方としての新しいドレイクスです。流行的なファッションだけではなく、スタイルを重んじつつ、クラシックだけどフレッシュ、そしてモダンな要素を取り入れながら、ブランドを継続していこうと思いました。
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—いまお話にも出ましたが、“ファッション”と“スタイル”は、似ているようで少し意味が異なりますよね。ドレイクスとしてはどちらを重視していますか?

ドレイクスはどちらかと言えば“地に足の着いた”ブランドです。ドレイクスのネクタイは、例えば本日買っていただいても、20年だって使えるものだと思いますし、そういう意味でも“スタイル”の方が我々にとっては近い感覚ですね。その中で、“ファッション”もしっかり意識はしている、という感じでしょうか。

— ドレイクスとはどんなブランドだとマイケルさんはお考えですか? 他のネクタイのブランドとは何が違うのでしょうか。

今の時代は、ネクタイは毎日つけなくてはならないものというよりも、自分を表現するものになっていると思います。そしてドレイクスは今やネクタイだけのブランドではありません。シャツをはじめとして、ジャケットやスカーフなど、他のアイテムも手がけるトータルなブランドになっています。ですので、ネクタイだけにとどまらない、そこから派生する全体感(全身)を意識しています。私自身、ネクタイをすることは週に3日程度で、外していることも多いのですが、それでも(タイを外した時でも)ドレイクスとしてのスタイルや見え方になるように意識しています。
ネクタイ
— ちなみにイギリスの人にとって、ネクタイというのはどのような存在なのでしょうか。

イギリスでも昔はやはりユニフォームのひとつでした。しかし今はそういう存在ではなくなってはいますね。もちろんネクタイは取引先とか、会う方に対する尊重やリスペクトをするひとつの手段だと思います。でも一方では、素材やデザインを純粋に楽しむものになってきています。実は10年前と比較しても、ドレイクスは生産量が増えているので、そういった意味でもネクタイを楽しむ人が増えていることを実感しますね。

— ちなみに今、ドレイクスは世界何カ国で展開されているのでしょうか?

約30カ国、200社くらいとの取引だと思います。もっとも需要が高いのは英国で、その次がアメリカ、日本、イタリアと続きます。
銀座店内 オープンを間近に控えたドレイクスのショップ・イン・ショップ
— 今回アジア初のショップがGINZA SIXに出来上がったわけですが、この場所であった理由や特別な想いはありますか?

これまでも日本のマーケットでドレイクスは展開してきたのですが、私が感じるのは、日本のお客様というのは、商品に対する知識も非常に深いだけではなく、生産背景などに対する尊重も世界中のどの国にも増して強いということです。そういう方々にドレイクスが評価されているのは、ブランドとしても意味は大きいと思います。その日本、そして銀座の街にアジア第1号店を出せたのは、ある種自然の流れではありますが、日本のパートナーとのグッド・リレーションシップがあったことは大きいと思います。
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— このショップのディレクションはどのようにされたのでしょうか。

今回のショップの内装や什器は、私の希望で、すべてイギリスのものを使いました。ブランドのカラーはネイビーなのですが、今回はそこにこだわらないカラー(グリーン)を取り入れています。先日ロンドンのお店もリニューアルしましたし、ニューヨークのショップも今度オープンするのですが、それぞれ店内の色合いは、その土地土地で変えています。ベースの考え方やコンセプトは同じなのですが。
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— 今回のショップで一番こだわった部分はどこでしょうか。

そういう点で言えば、“プロダクト”ですね。もちろん商品にもこだわっているのですが、そのプロダクトをいかにディスプレイし、プレゼンテーションできる場にするかは一番こだわりました。
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— 今回のショップの内装を見ても、マイケルさんがディレクションもしたブランドのビジュアルブックなどを拝見しても、とても新しい感性でネクタイに対して取り組んでいることが感じられました。

ありがとうございます。たとえばネクタイのデザインする時も、常に過去のアーカイブを振り返りながらやってはいるのですが、振り返っているだけでなく、同時に新しいものもクリエイトしようとしています。過去も大事ですが、未来も大切にしなければなりません。過去と未来、その両方が大事なのです。なぜなら我々は現代に生きているわけですからね。
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— マイケルさんが考える、ドレイクスのユーザーとはどのような方なのでしょうか。スタイルというよりも、精神性の部分でお聞きしたいのですが。

お客様自身が、クラフトマンシップやプロダクトに対する尊重の念を持っていただけるのは大変嬉しいことです。その一方で、「ファッションやネクタイとはこうあるべきだ」とがんじがらめに考えるのではなく、もっとイノベーティブな考えを持っている人こそ、ドレイクスらしい方ではないかと思います。そういう点では、我々のプロダクトに対して、オープンに、リラックスして接していただければと思います。なぜならドレイクスは、“JUST CLOTHES(ただの服)”なのですから。

— すごくいいスタンスですね。最後に日本のドレイクスのファンにメッセージをお願いします。

このような素晴らしいロケーションにお店ができたことはとても光栄です。お客様には気構えて来ていただくというよりは、半年に1度でも良いので、ふらりと立ち寄っていただけるような存在でありたいと思います。我々がどんなことを考えながらデザインをし、工場でモノ作りをしているのかを、少しでも感じていただければ嬉しいです。

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Photo by Yasuyuki Takaki / 高木康行
Text by Yukihisa Takei / 武井幸久(HIGHVISION)

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