2017.12.18

The Road to Harris: A Tweed Pilgrimage | ツイードの聖地、ハリス島巡礼の旅

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今回は、作家兼ライターのDavid Cogginsがスコットランドのハリス島を訪れ、世界最高級のツイードが生まれる風景をお届けします。

ツイードほど我々の想像力を掻き立てる素材はありません。機能的で耐久性があり、エレガントかつ特徴的なこの生地は、大学教授からハンター、そしてお洒落な男性まで、あらゆる人々から愛されるほどに多用途です。そして、この素材との繋がりを感じさせる唯一の存在はウイスキーなのです。ツイードもウイスキーも「スコットランド」という同じ国を起源としているため、繋がりを感じるのは当然かもしれません。両者には年を重ねるごとに成熟するという共通点があり、その比較を続けるために、私は自分では着用しきれないほど多くのツイードジャケットと、飲み尽くせないほど多くのスコッチウイスキーを所有しています。それでもなお「より多くを手にしたい」と思う欲求が止めどなく沸き起こってくるのです。

私は昨年『Condé Nast Traveler』の記事を執筆するために、ハリス島を訪れました。フライトを終えた私と友人は、車とフェリーを乗り継いでルイス島に到着し、さらにそこから車でハリス島へ向かいました。印象深く広大で、月のような風景が続くこの土地は、「1日の中に四季がある」ことで有名です。例えば朝に霰(あられ)が降った場合、その10分後には必ずと言っていいほど明るい太陽の光が現れるため、霰は喜びを伴うものなのです。
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ハリスツイードは、厳密に指定された工程を経て生産されています。この地方に3社あるメーカーのうち1社は、イギリスやスコットランドから羊毛を仕入れます。羊毛は糸に紡がれ、ツイードの模様を記した説明書と共に機織り職人の家まで運ばれます。機織り職人(通常は男性)は、自宅に隣接した小さなガレージほどの大きさの建物で織り機を所有しています。外の風景が眺められる1つの窓と、部屋の片隅に1台のラジオが置いてあるような空間で、彼らは大半の時間を過ごしています。

数十年前に製造された織り機に糸をつなげるために、およそ1600回!絡ませてようやく準備完了です。機織り機は足で動かすため、織っている間は職人さんが自転車に乗っているかの様に見えます。ほとんどの作業場には暖房が付いていないため、彼らはペダルを踏むことで体を温めます。私たちがお会いした機織り職人たちはみな顔見知りなので、お茶をしたり機織り機の修理で手助けが必要な時に互いの作業場を訪れます。
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およそ1週間(40時間〜50時間)に及ぶ厳正な作業を経て、50ヤード(45.72m)の生地が一反出来上がります。その後メーカーが作業場の近くにトラックを手配して織物を引き取りますが、出来上がるまでにはまだ長い工程が待っています。それぞれのメーカーで織物を承認した後にツイードを一反ずつ洗い、柔らかくします。その後ライトテーブルの上で生地を伸ばしながら、欠陥がないかを検査します。こうした作業は地元の女性たちによって行われますが、彼女たちのかがり縫いや補修は非常に精密です。承認された後には、「ハリスツイード」のラベルが付けられ、世界中に流通していきます。

一貫してハリス島の住人たちによって行われる工程とは別に、ツイードには驚くほどこの土地に根付いた風合いがあります。焦げ茶色やヘザーグリーン、薄い小麦色といったツイードの色彩が、土地の風景そのものを表しているからです。ツイードという生地はもともと、周りの環境に溶け込んで狩りをしていたこの土地の人々によって生み出されたものですから、辺り一帯の風景がそのまま生地の色彩に反映されています。ツイードは迷彩柄ができる以前に生まれたものなのです。

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この特別な工程を経ていないツイードは「ハリスツイード」として見なされませんが、独立した職人さんたちによって生み出される非の打ち所がないほど素晴らしいツイードも数多く存在します。私たちは車で泥道を走り、ある1人の男性を訪れました。彼は長年メーカーの職人として働いていたのですが、現在は独立して個人的に販売しています。彼は緑色と茶色の千鳥格子の生地をざっと広げ、肉屋がステーキを量り分けるかのように、巨大なハサミで大胆に裁断していました。

メーカーでツイードの生地見本を綴った古い本を見せてもらったことも、この旅のハイライトでした。無限に存在する種類豊富な模様と、依然として鮮明な色を見ることができ、膨大な本の中にその全ての名称が事細かに記されているのです。そうしたツイードは、防弾仕様のようなジャケットに使用されていました。当時のものとしては素晴らしい出来栄えのジャケットで、私もコレクションとして大切に所有しています。しかし、今日のツイードジャケットはより私好みで、当時のジャケットよりも少しだけライトな仕上がりになっているため、屋内でも屋外でも活躍しています。オックスフォード・シャツとコーデュロイ・パンツ、そしてニットのネクタイを合わせれば、いつどこで1杯のウイスキーを注がれても準備万端です。

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執筆:David Coggins
『Esquire』『Financial Times』『Condé Nast Traveler』ライター
http://www.davidrcoggins.com/


書籍『Men and Style』(Abrams刊)の著者であり、Drake’sが新たに発行する雑誌『Common Thread』の編集者でもある。旅やテーラリング、ウイスキー、フライフィッシングに関する記事を、『Esquire』や『Financial Times』『Condé Nast Traveler』ほか多くの出版物に寄稿している。ニューヨーク在住。

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