2018.08.24

靴磨きのプロに聞く、シューシャイン 10の極意と素材・色別まとめ

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ここ数年、シューシャイン(靴磨き)専門店が国内で増えてるだけでなく、有名なシューシャイナー(靴磨き職人)は海外でトランクショーやワークショップを行なうほどの人気ぶりです。 さらに自分自身でシューシャインを行なう方も増え、密かなブームとなっています。 そして、続けていれば誰もが一度は突き当たるであろう壁が鏡面磨き。自身の顔が写り込むほど上品で美しい艶を革靴に生まれさせる上級者テクニックにまずは憧れるもの。 そこで今回はロンドンで行なわれた”World Shoe Shine Championship 2018”で見事優勝したシューシャインのスペシャリストであるJohn Chung氏にそのポイントを解説して頂きました。

■ 基本的なシューシャインの流れ

1. まずはワックスを用意

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「ワックスは、サフィールのミラーグロスとビーズワックスポリッシュの2種類使って進めます。ロウ分が高いミラーグロスはベースを作りに向いています。 反面、ビーズワックスポリッシュは柔らかく伸びが良い。そのため均一にワックスを延ばすことが出来ます。」

2. 指でワックスを塗る

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「ミラーグロスでベースを作り、次にビーズワックスポリッシュ。この順番で塗っていきます。 革の状態にもよりますが、カーフであれば平均5セットほど繰り返し塗ります。 一度に指につけるワックスの量はほんの少しという所もポイントです。(下記画像参照)」

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「ワックスを塗るときのポイントは指のサイドを使い、コバ部分まで均一にワックスを塗りこむことです。 そして均一にワックスを塗るポイントですが、まず円を描くように塗っていきます。次に横方向に真っすぐ、さらに斜めに真っすぐ…といった具合で様々な角度から塗ることで隙間無く均一に層を作っていきます。」

3. ホースブラシに水をつけてブラッシング

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「ホースブラシの先に少しだけ水をつけて先程ワックスを塗った部分をブラッシングします。 このブラッシングで塗りすぎた余分なワックスを取り除きつつ、革にワックスを浸透させていきます。」

20180824_stories6 水をつける際はハンドラップがあると便利。一般的にはアルコールや薬剤などの液体を入れておく容器だが、一度のタッチで適量の水が出るためシューシャインの道具としても用いられている。

4. ミラーグロスを均一に塗る

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「2と同じ工程を今度はミラーグロスのみで行ないます。 この工程でのワックスの量は2に対して少し多くなるのがポイントです。」

5. クロスにアルコールを染みこませワックスを伸ばす

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「ここからはクロスとアルコールを使います。 クロスは指に巻きやすい厚さで起毛感のある素材が磨きに向いています。 一般的には水のみを使うことが多いですが、アルコールを使うメリットは 鏡面がより滑らかになる点と、より早く仕上げることが出来る点です。 私は普段カッピング(伝統中国医学)に使われる96度と高い度数のアルコールを使っています。ただ、度数が高いとデメリットとしてワックスを溶かしやすいので、まずはもう少し低い度数のアルコールから使用すると良いでしょう。ちなみにアルコールは、日本なら例えば薬局等に売っているものでも大丈夫です。」

20180824_stories7 左がアルコール、右が水の入っているハンドラップ。ロウを溶かすので水が入っているハンドラップよりもシルバーの部分がきれいになっているのが分かる。
「アルコールが強く、コントロールが難しい場合は水で薄めて使用しても良いです。 クロスに染みこませるアルコールの量は非常に少ないです。これは感覚になってしまいますが、染みこませた後のクロスを肌に当て、その湿り具合で感覚を養う方もいます。 量が多いと感じた際は手のひらで叩いて少し水分を飛ばしてあげるのも良いでしょう。 また、アルコールでシューシャインする際、気をつけて欲しいポイントはアルコールで溶かしてしまったワックスがクロスについてしまうとクロスが固くなってしまう点です。 続けてシューシャインが出来なくなってしまうので注意して下さい。」

20180824_stories8 ハンドラップで水分を含ませた後、このように軽快に手早くタッチすることで水分感覚を調整している。

6. ミラーグロスをクロスで塗る

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「今度はクロスを指に巻いてワックスを塗っていきますが、指で塗る際と同様にワックスの取りすぎには気をつけましょう。 またクロスを指に巻く際は靴と接する面にシワを入れないこと、そして磨いている間にクロスが動かないようにしっかりと固定することが大事です。」

7. クロスに水を染み込ませワックスを伸ばす

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「最初はアルコールでワックスを伸ばしましたが、次は水でワックスを伸ばしていきます。水もアルコール同様ほんの少しの量を使います。 1点を重点的に磨くのではなく、全体を満遍なく磨くことを心がけます。磨く際は表面の細かい凹凸をフラットにしてあげるイメージで滑らかに指を動かすようにしましょう。」

8. 4~7の流れをビーズポリッシュワックスで行なう

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「ワックス→アルコール→ワックス→水、この流れを今度はビーズポリッシュワックスで行ないます。」

9. 4~8の流れを20~30回繰り返す

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「回数を繰り返していく中でのポイントは全体のワックスの量は減っていき、ビーズワックスポリッシュの比率が上がっていくという点です。」

10. 最後は水のみで仕上げる

20180824_stories13 左がビフォー、右がアフター。一目瞭然の仕上がりに。
「鏡面が出来上がったと感じたら最後の工程。水を少量クロスに染みこませ、力は入れずに素早く表面を滑らすようなイメージで縦方向に磨きます。これで鏡面磨きの完成です。」

ここまでの流れを基本編とし、ここからは色や素材毎の注意事項になります。

■ 茶色のカーフは色の濃さに注意する

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「基本的には黒のカーフと同じ流れになりますが、茶のカーフのポイントはまず、クリームを塗る段階でレザーカラーよりもワントーン濃い茶色をトゥに塗ることをオススメします。 ただし色は好みがありますのでニュートラルやライトブラウン、ブラックのクリーム等を使い自分の好みの仕上がりを探してみるのも良いでしょう。」

■ ポリッシュドバインダーはワックス量を注意する

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「ポリッシュドバインダーは表面を樹脂加工している為、革にクリームやワックスが浸透しにくく、表面に余分なクリームやワックスが残りがちです。 このことに注意してクリームやワックスを使用する際はカーフに比べて少量にしましょう。」

■ グレインレザーはバーニッシュ部分の色に合わせる

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「グレインレザーは一般的にバーニッシュ加工が施されているものが多く、レザーに色の濃淡があります。この場合は、色の濃い部分に合わせてクリームやワックスを選ぶことがポイントです。また、表面に凹凸があるのでゆっくりとマッサージをするイメージでレザーにクリームを浸透させるのもポイントです。」

今回で3回目となる靴磨きのプロに聞くシリーズはいかがでしたでしょうか。 1回目のTHE WAY THINGS GOの石見氏解説による「道具の選び方と使い方」、2回目のY’s Shoeshineの杉村氏解説による「工程別磨きのポイント」も是非合わせてお読み頂けますと幸いです。


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“靴磨き日本選手権大会2018”イベントレポート[前編]
“靴磨き日本選手権大会2018”イベントレポート[後編]


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John Chungさん

ヴィンテージレザーシューズをリペアする情熱から、シンガポール初の靴磨きと靴修理専門店として「Mason & Smith」を2013 年に設立。伝統的な技術を背景に、革靴のリペアやリカラー・修理・復元など、最初から最後まで一人の職人が細心の注意を払いながら、一貫したサービスをご提供。革靴が持つ魅力を最大限に引き出します。「World Shoe Shine Championship2018」で優勝。
www.masonandsmith.com

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