クリエイティブなファインダイニング「Lyle Restaurant」 | BRITISH MADE

Food For Thought クリエイティブなファインダイニング「Lyle Restaurant」

2017.10.10

今回のレストランは、2014年オープン当時に訪れて強い余韻を私に残した『Lyle』。日本からの訪問客が、ロンドン市場をリサーチに興味あるインテリアの場所を訪れたいというリクエストで選ばれた会食に同席させて頂いた。
ミニマルな内装とシンプルなメニュー。聞いた事がない素材が並ぶサンプルメニュー。何回か訪れた事のあるこのレストランは、季節感の溢れる素材を第一にしながら、説明のあまりないシンプルに書かれたメニューと削ぎ落とされたインテリアに相反する手の込んだ味の層が深い料理を出すのが特徴だと思う。 あまり聞き馴染みのない食材や一風変わった食材の組み合わせで、一品一品に楽しい驚きと発見がある。30代後半のシェフであるジェームス・ロー氏は、 La Trompette, the River Café, the Fat Duckという一流レストランで活躍をし、 St John Bread & Wineでヘッドシェフに抜擢され、その後満を辞してオープンしたレストランがここである。『St John』に代表される今流行りのモダンブリティッシュダイニングの寵児である。
ロンドンの食熱は、よりあつくなる一方で若手シェフ同士のコラボレーション、ポップアップレストラン、シェフゲストシリーズ等も盛んで、新鮮さや驚きを貪欲に欲する顧客の趣向にあった試みが増えている。イーストロンドン界隈で5−6年前から話題になったポップアップレストランプロジェクト『The Young Turks』をやっていたのは、彼とIssac McHale(*現the Clove Clubの総料理長)であり、今振り返るとその流れの走り的な存在の中核を担っていた人物。
『Lyle』が不定期的に行うシェフのゲストプログラムは、お互い尊敬し気の合うシェフを招待し、アーティスト・イン・レジデンスばりのシェフ・イン・レジデンスを期間限定にふるまうプログラムで、『Lyle』ではそういった心意気のある面白い取り組みも行なっている。ファッションも食もよりボーダレスになっている証拠だし、消費者もチャレンジ精神旺盛で新鮮さを求めて貪欲に食を欲している証である。
20171010_outside_night レストランのサイン。レストラン名『Lyle』は、男子の名前によく使われる名称。元々はフランス語L’isle, 英語Island=島が由来の言葉らしい
20171010_inside_evning この時期のロンドンは、日が落ちるのが早いので、昼間の時の内装を。
20171010_inside_night 火曜日でもこの人気度!
20171010_menu 4品から構成されるサンプルメニュー£55(約8,000円/名)
まずメニューを見てみて解ると思うが、聞き慣れない素材の名前のオンパレード 。シンプルなメニュー構成だが、未知な期待感を持たせる。一品目が来るまで長く待たせては悪いとお通し的な単品で、その期待度を持続させてくれるのも実に嬉しい。
20171010_bread パン、バターとオリーブオイル
20171010_salad 乾燥させたキノコのパウダーとガーゼで数日間絞ったチーズから抽出されたヨーグルトを包んだほうれん草。心地よいヨーグルトの酸っぱさとピリッとした味が、結構病みつきになりそうだ。
20171010_corn 今が旬なトウモロコシの蜂蜜バター和え。蜂蜜を入れるだけで、こんなに違うのか?と正直驚く。家庭でも取り入れる事が出来そうな一品
20171010_menu1 Pumpkin, Whey & Cobnuts
パンプキンはデリカパンプキン。日本の南瓜のように甘い。イギリスの八百屋等で最近見かけるようになったコブナッツは、秋の到来を匂わせるヘイゼルナッツの一種。ウェイと呼ばれるもの(写真のソース的な物)は、どうやらチーズを作る上での副産物らしい。味が薄くなった牛乳みたいな味。印象深くて、本当に美味しかった一品。
20171010_fish Pollack, Cured Roe & Sea Aster
スケトウダラ、塩漬け魚卵と浦菊。シーアスター(浦菊)とはどうやらヨーロッパの塩湿地にはえる菊の一種らしい。つやがある葉が特徴でほうれん草より気持ち塩っけがあるけど、より歯ごたえがある野菜。
20171010_meat1 Saddleback Belly, Bloodcake & Carrots
イギリスの2種類の豚を交配した英国の良質な豚として知られるサドルバック。ジューシな肉質としつこくない脂身で知られている名品である。ブロッドケーキ(血塊のケーキ)、英国で有名なブラックブディングと同様で、おそらく個々の好みで分かれる一品。個人的には、この組み合わせは非常に嬉しい一品だ。
20171010_plam Plum Kernel Cream & Haganta Plums
梅の種から抽出されたオイルとハガンタという名称の新種の桃を合わせたデザート。リッチなクリームは若干アーモンドに似た匂いがする。梅の種から抽出されるオイルは、デザートやサラダドレッシングに使われる材料らしい。
ここに来て思うことは、本当に世の中は本当に広いなと感じさせる。シェフのジェームスは『ポップアップ等を通して常に他の同年代のシェフが何をやってるか?という事を知るのは、良い刺激になるよ。自分が今やっていることを常に冷静に客観的に見つめ直すことができるからね』と言う。 キッチンからホールまで彼の信念を汲み取るように料理の一品一品をウェイターが誇りを持って親切に説明をしてくれる。うわべだけでないサブスタンス=実質で勝負をしているレストラン。是非ロンドンに来ることがあれば、是非覗いてみて下さい。

Lyle Restaurant

住所:Tea Building, 56 Shoreditch High Street London, E1 6JJ, UK
TEL:+44 (0)20 30115911
https://www.lyleslondon.com/
最寄り駅:地下鉄OLD STREET 駅から徒歩10分程/Shoreditch High Street駅から2分
Text&Photo by Tatsuo Hino

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日野 達雄

日野達雄

英国在住歴19年のメディア/ファッションコンサルタント。
英スタイル雑誌の出身で英/日の雑誌にも寄稿をするライターでありながら、音楽、ファッション、フード、写真と様々なジャンルでのコンサルティング業務に携わる。

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