食べれば虜になるイギリスのビスケット | BRITISH MADE

バス、ときどき地下鉄~英国ヴィンテージな旅へ 食べれば虜になるイギリスのビスケット

2017.12.15

イギリスのスーパーでビスケットを買う。

おそらくイギリスに何度か行くと、お菓子好き、甘いもの好きな方はスーパーのビスケット売り場を見てしまう方は少なくないのではないでしょうか。「イギリス/お土産」で検索してもビスケットは必ず出てきます。

日本にはない商品がわんさかとあり圧倒されるのですが、どれもこれも食べてみたいと思わせる魅力にいつもノックアウト。スーパーですからもちろんお財布に優しく、甘いもの好きな私たちも、渡英最後になると、スーパーでごっそりと買い物をします。ビスケットをはじめ、チョコレート、シリアル、紅茶、ジャム、調味料等々。知り合いへのおすそ分けも含めるとあっという間に段ボール1箱になります。少し買いすぎでしょうか・・・

中でもビスケットやチョコレート、紅茶のコーナーは本当に種類が多く、見ているだけでも幸せになります。そんな中、今回はビスケットのお話をしたいと思います。
20171215_gift 箱いっぱいに詰めてきたお土産

ビスケットとの出会い

実はビスケットに興味を持ち食べ始めたのは、ここ2、3年の話です。たまたま妻が一人で買い付けに行った際のお土産で買ってきたことがきっかけでした。その頃、自分自身が甘いもの好きと自覚し、アンテナが立っていたのでしょう。初めて意識してイギリスのビスケットを興味津々に味わいました。

まずひと袋がずしっと重いのです。この重さに感動です。袋は大概プラスチックパッケージで、持つとビスケットの形が感触で分かります。開けるとすぐに商品が見えて余計な包装がありません。過剰包装でないのはいいのですが、航空便で送ると外側のビスケットは割れていることが多く、まず間違いなく最初に割れたものから食べることになります。それもご愛嬌。

取り出した1枚は厚くしっかりした重さで、見た目はミディアムブラウン。日本のものよりやや濃い色をしている印象です。そして口に入れると・・・固い!かなりの歯ごたえにビックリします。そして文句なく美味しい!

私にとってイギリスビスケットとの出会いは、スーパーで手に取ってから口に入れるまで、驚きの連続だったのです。

ビスケットの基本、オーツ・ジンジャー・ダイジェスティブ

多くの種類のビスケットを見ているとふと気が付くことがあります。どんなスーパーに行っても、必ずある「オーツ」「ジンジャー」「ダイジェスティブ」。そして私たちが好んで買ってくるのもこの3種類。どうもこれがイギリスのベーシックなビスケットのようです。
日本でも、成城石井さんがこれら3種類をイギリスから輸入し並べて販売しているので、イギリスの代表格と言ってもいいのではないでしょうか。

■ オーツ

20171215_oats テスコ・オーツビスケット、当店イベント「イギリス便Ⅱ」での様子
オートミール(オーツ麦・えん麦)を使った種類で、とても食べ応えがあります。口に入れるとほのかな甘みがちょうど良いのです。オートミールの食感はそれまで経験したことのない素材のゴロゴロ感がとても新鮮。

■ ジンジャー

20171215_biscuit_ginger セインズベリ―のジンジャービスケット
正に生姜入りビスケット。食べると容赦ない生姜の辛い味に驚きます!小さいお子さまにはもしかしたらキツいのでは?但し、この風味は時間が経つにつれ少なくなるので、日本に持ち帰ったらできるだけ早めに味わうのがコツです。

■ ダイジェスティブ

20171215_biscuit_mac マクビティのダイジェスティブビスケット、航空便で送ると端は欠けていることもしばしば
全粒粉の小麦を材料に使ったビスケットの総称です。オーツやジンジャーに比べるとやや柔らかく感じられ食べやすさがあります。日本ではマクビティのダイジェスティブビスケットが有名ですね。3種類の中ではいちばん馴染みのある味だと思います。

どれも美味しく1枚だけで食べ応えがあります。特にオーツとジンジャーは日本では似たような味わいのビスケットがなかなかありません。ぜひ一度食べていただきたい味です。オーツは飲み物と合わせておなかがふくれるので、忙しいときの朝食にピッタリです。ジンジャー、ダイジェスティブは午後のおやつにもってこいです。

日本のビスケットよりカロリー高め

個人的には日本のビスケットといえば森永のマリービスケットを思い出します。改めて久しぶりに食べてみたのですが、明らかにイギリスのビスケットとは違います。特に、前述のオーツ・ジンジャー・ダイジェスティブとは別物です。いや、しかし何か似ている味があったような・・・ 思い出したのが、イギリスの「リッチティー」というビスケット。これは基本の3種類よりは軽く、かつ洗練された味です。そしてこちらもイギリスでは人気の高いビスケットです。

もちろんマリーに限らず日本には他にもビスケットはあるのですが、イギリスのそれと比べると総じて“軽い感じ”がします。サクッと食べてしまえる感覚。一つの指標としてはカロリーの違いです。ちなみにビスケット1枚あたりのカロリーと重さを挙げてみると、

モリソンズ オーツ 71kcal(15g)
セインズベリ― ジンジャー 45kcal(10g)
マクビティ ダイジェスティブ 71kcal(14.7g)
マクビティ リッチティー 38kcal(8.3g)

森永 マリー 24kcal(5.4g)
森永 チョイス 44kcal(8.7g)
森永 ムーンライト 43kcal(8.1g)

リッチティーはカロリー低めですが、一例としてこの数値からもイギリスのビスケットは食べ応えがあることにうなずけます。いずれも結構カロリーが高いので、美味しくても食べ過ぎはキケンです!
20171215_biscuit_morinaga 左:1923年誕生の森永のマリービスケット 右:マリーと似ているマクビティのリッチティー

ビスケットとクッキー

ビスケットというともう一つ思い出すのがクッキー。イギリスではどちらもビスケットと呼び、アメリカではクッキーと呼びます。ちなみに日本で二つの呼び方にはどのような違いがあるのでしょうか。「全国ビスケット協会」によると、「ビスケットの中で糖分・脂肪分の合計が40%以上のものはクッキーと呼んでもよい」と定義されています。

また、そのビスケットの起源を探ってみると、現在の原型となるものがヨーロッパで本格的に生産されるようになったのは16世紀。しかし起源となるものは紀元前からある食べ物だとか。とても歴史は古いです。

「ダンキング」という、イギリス通な楽しみ

20171215_biscuit_danking ビスケットを紅茶に浸す「ダンキング」
ビスケットを食べる時にベストな飲み物はもちろんミルクティー。そして、このゴールデンコンビがより美味しさを発揮するのが「ダンキング」です。
ダンキングとは、ビスケットをミルクティーにダンクする=浸して食べること。なんとなくためらわれるこの食べ方は、一度やってみたら病みつきになります。

まず最初にビスケットをそのまま食べて味わってください。その後、ミルクティーにつけて食べるのです。すると・・・
味が変わるんです!オーツはその柔らかな甘みが引き立ってきますし、ジンジャーは生姜の香りと味の輪郭がはっきりしてきます。ダイジェスティブは口に入れると崩れてミルクティーと混じり合い、その優しい味に感動です。どれもミルクティーのホットでマイルドな味わいがなせる技ではないでしょうか。そしてイギリスのビスケットはしっかりしていて、ミルクティーに浸しても崩れません。ダンキングでイギリスの固いビスケットの素晴らしさに気づくのです!

セインズベリーのプラスチックパッケージにはどんな種類のビスケットにも、ミルクティーに浸すイラストが載っています。これを見た時にイギリス人にとって、ダンキングが日常なんだと実感し、「さすが庶民派セインズベリー!」と夫婦して笑ってしまいました。
20171215_biscuit_sainsbury どれもダンキングしているパッケージ画像に注目です。

ハマる人続出!

先月、「イギリス便Ⅱ」というギャラリーイベントを開催したのですが、来場されたお客様へのおもてなしとして、ビスケットと紅茶を楽しんでいただき、このダンキングもご紹介しました。これが好評で、皆さん口々に「これ、味が変わるんですね!」とかなりの方が気づかれます。

実はこの企画、昨年の秋にも実施していました。昨年来られたお客様で、「ダンキングの味が忘れられなくて、また今年も楽しみに来ました!」という方や、ビスケットをまとめ買いされる方が何人もいらっしゃったことには、本当に驚きました。私たちの想像以上に、このダンキング体験はインパクトがあるようです。

どの国のビスケットでも、果敢にダンキングしてみませんか?ちなみに日本のマリービスケットでやってみたところ、ミルクティーに浸して持ち上げるとみるみるうちに崩れてきてしまいます。ダンキングにはやや不向きかもしれません。できるなら一度、ビスケットも紅茶もイギリスのもので味わっていただきたいです!
20171215_biscuit_all 全部ダンキングしてみたい魅惑的なイギリスのビスケット、見てるだけで楽しくなります。
得てしてイギリスの伝統菓子は茶色く地味に映ります。そして食べても素朴な味わい。フランス菓子のようなカラフルさや装飾的な華やかなものとは少し違います。でもそれこそがイギリスの家庭の味。

日本でもよく「茶色いおかず」「茶色いお弁当」という言い方をしませんか?茶色は醤油の色、おふくろの味。イギリスの伝統菓子に、なんとなく通じるものを感じます。イギリス人の日常に欠かせないビスケットは、日本でいうところのおせんべい…?
少しこじつけでしょうか。

とにかく口に入れれば虜になること間違いなしのお菓子が、イギリスのビスケットなのです。

Text&Photo by Toshihiko Tomizawa


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富澤利彦

富澤利彦

靴・服好きが高じ30代に初めて渡英。以来、会社員時代はずっとブリティッシュスタイル。ファッションから広告・雑貨にも興味は広がり、2016年から妻が始めた「Antiques Harmonics」に本格的に参加。新旧の英国モノを毎日楽しむ日々を過ごしています。

Antiques Harmonics
(アンティークス・ハーモニクス)

いつものファッションを“背伸びしないで新鮮に変える”Men’s/Ladies’アクセサリーをはじめ、企業ノベルテイ、ステーショナリー、レアな鉄道・Royal Mailグッズまで幅広くセレクト。「イギリスらしい/デザイン性がある/くすっと笑える」そんなココロを豊かに満たしてくれるアイテムたちを探し当てては、マーケットや蚤の市、イベントで販売しています。皆さまとお会いできることを楽しみにしております。
http://aharmonics.exblog.jp/

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