イギリスの冬に鮮やかな彩りをもたらすフォースト・ルバーブ | BRITISH MADE

English Garden Diary イギリスの冬に鮮やかな彩りをもたらすフォースト・ルバーブ

2018.02.15

立春をすぎたとはいえ、まだ「春到来」とはいえないイギリス。日は少しずつ長くなってはきましたが、それでもじめじめ雨が降ったり、曇りの日などは、朝から暗~いグレイの空に覆われます。

そんな季節に、鮮やかなピンク色で、テーブルを明るくしてくれる食べ物が「フォースト・ルバーブ(Forced rhubarb)」です。

ルバーブという植物、最近では日本でも長野県などで栽培農家が増えてきているようですが、それでもまだ、どちらかというと珍しい食べ物かもしれませんね。
20180215_rhubarb1- マーケットでもひときわ目をひく鮮やかな色
20180215_rhubarb2-2---1 フォースト・ルバーブは露地栽培のものよりも酸味が柔らかい
イギリスでは、手間をかけずとも育ってくれる便利な野菜として、これを庭の隅っこに植えている家庭がたくさんあります。

「野菜」といいましたが、実際にはデザートやお菓子に使用したり、ジャムにしたりと、果物のような扱いをされています。蕗に似たひらひらとした大きな葉っぱと、茎(葉柄)が赤みを帯びているのが特徴です。
20180215_rhubarb3 アウトドアで育つルバーブは葉が大きく、茎も太め
イギリスでは、16世紀に薬用として利用されたのが始まりです。この薬用植物を食用とするようになったのは、イギリスで食べられていた、酸味のあるソレル(Sorrel)という植物に味が似ているからではないかと言われています。

生でかじってみると確かに酸味がとても強いのがわかります。英語では「sharp」「tart」などと表現される酸っぱさですが、それに砂糖などで甘みを加えると、大変おいしいデザートやジャムに変身するのだから不思議です。
20180215_rhubarb5 イチゴとメレンゲ、生クリームを混ぜて作るイギリスの人気デザート「イートン・メス」風にルバーブを使って
ルバーブは春から夏にかけてが旬ですが、実は、今の寒い時期には、先に挙げたピンク色のフォースト・ルバーブと呼ばれる種類のものが出回ります。これは、露地植えではなく、真っ暗な部屋の中で促成栽培されたもの。そのため、茎がほっそりとした鮮やかなピンク色になるのです。

フォースト・ルバーブの発祥は19世紀前半。ロンドンにある薬用植物園、チェルシー・フィジックガーデンで、偶然に育ったものでした。それが1870年代に入り、ヨークシャー地方で栽培が行われるようになりました。

現在では、ヨークシャー州のリーズ、ウェイクフィールド、ブラッドフォードという三つの年に囲まれた三角地帯で生産されたものが「ヨークシャー・フォースト・ルバーブ」として特産品となっています。

イギリスでは、自分の庭でこのフォースト・ルバーブを育てる人もいて、そのための「フォーサー」と呼ばれる巨大な植木鉢を逆さにしたような専用の道具まで売られています。あるいは、それがなくても、大きなゴミ箱やバケツをかぶせているツワモノ(?)もいます。
20180215_rhubarb6---1 我が家のルバーブもようやく芽がでてきた
マーケットやスーパーでこのフォースト・ルバーブを見かけると、ついつい手にしてしまうのは、この明るい色が、「春近し」と思わせてくれるせいかもしれません。あ、もちろん、見た目がきれいなだけでなく、ジャムにしたり、タルトにしたり、どんな食べ方でもおいしいことはいうまでもありませんが。
20180215_rhubarb4 ルバーブは煮崩れしやすいので、色と形を綺麗に見せるには、オーブンでローストするのがおすすめ。オレンジの皮、絞り汁、ハチミツを上からかけると味も香りも抜群
rhubarbjam - 1 フォースト・ルバーブで作るジャムはルビーのような美しさ。ルバーブ・ジャムはスコーンにもよく合う
ルバーブの産地であるウェイクフィールドでは、毎年ルバーブをメインとしたフード・フェスティバルが行われます。今年は2月23〜25日に開催予定。予約をすれば、真っ暗な栽培小屋の中で育っているフォースト・ルバーブの様子を見ることができます。ロウソクの灯に照らされ、ピンクの茎が一面に広がる光景はとても幻想的なものに違いありません。

*Wakefield’s Festival of Food, Drink and Rhubarbウェブサイト

Photo&Text by Mami McGuinness

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マクギネス真美

マクギネス真美

英国在住20年のライフコーチ、ライター。オンラインのコーチングセッションで、人生の転換期にある方が「本当に生きたい人生」を生きることを日本語でサポート。イギリスの暮らし、文化、食べ物などについて書籍、雑誌、ウェブマガジン等への寄稿、ラジオ番組への出演多数。
音声メディアVoicy「英国からの手紙『本当の自分で生きる ~ 明日はもっとやさしく、あたたかく』」にてイギリス情報発信中。

ロンドンで発行の情報誌『ニュースダイジェスト』にてコラム「英国の愛しきギャップを求めて」を連載中。

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