2014.09.10

Little Tales of British Life ダンディと紳士と貴族

チャーチルと言えば、以前述べたダンディズムを語るには欠かせない人材です。

チャーチルの終の住み処となったチャートウェル。現在はナショナル・トラストの管理下にあり、誰でも見学可能

イングランド南部に棲んでいたので、頻繁に行っていた景勝地が元首相ウィンストン・チャーチルの終の棲家となったお屋敷チャートウェルです。チャーチルと言えば、以前述べたダンディズムを語るには欠かせない人材です。

現在のチャートウェルは、自然保護運動団体のナショナル・トラスト協会によって、その景観と自然を保護されています。広大な敷地を持つマナーハウス(貴族や荘園領主のお屋敷)が相続税対策のために寄付されたり、買い受けられたりして保存と経営をトラストに任せているのですね。

そして、この屋敷の中には、チャーチルの人と成りと言うか、その魅力でもあるダンディズムの痕跡がしっかり残されています。

身なりには無頓着と言われたチャーチルですが、身支度を自動的に調えてくれる執事を抱えた貴族階級の身分ですから、懐中時計、スナッフ(嗅ぎタバコ)、カフスなど身分相応のファッションや携行品は適所に扱っていたようです。非喫煙者の皆様には無縁かもしれませんが、ロンドンのSt. James`s Street界隈にはお抱えの葉巻屋もありましたし、タバコに関わる携行品は、喫煙問題が挙げられる最近までこのマナーハウスに陳列されていました。 書斎には、ヘビースモーカーだったチャーチルの残したヤニの跡まで認めることが可能です。

イングランド南部、サリー州の軍用空港で戦闘機に試乗するチャーチル。チャーチルの孫、サンズ夫人から撮影と公開の許可済みの画像

チャーチルの机の上に置かれた文房具には第一次大戦直後から使われていたものもありました。例えば、ペンの胴軸には、今では所有も売買も許されない象牙細工のものまで残されています。

英国の歴史上の人物で、チャーチルほど近く感じられる政治家はそうたくさんはいないと思います。彼の遺品の数々から、彼の残した言葉の数々から、彼の棲んだチャートウェルから、皆さま独自のダンディズムを導き出せたら、ちょっと面白いかもしれませんね。

チャーチルは、その行動様式や語り口が独特でも愛嬌のあるところ、つまり人を惹きつける力のある人物であること自体が彼のダンディズムの枠組みになっています。チャーチルの身に付けるモノには、チャーチルのダンディズムが宿るのですね。


チャーチルと一緒のクレメンツ夫人はスペンサー家の出身。故ダイアナ元王妃の血縁。画像の撮影場所はSevenoaksという街

彼は生まれこそ貴族ですし、常識的なレベルでは紳士と言えますが、完璧な紳士ではなかったと思います。お金持ちになっても貴族として仲間に入れて貰えない人々は紳士然と振る舞うことに誇りと美学とを持ち、上流社会に馴染もうと大枚を叩いて、紳士倶楽部に入会する努力をしていましたが、チャーチル自身はノーベル文学賞を受賞するほど、むしろ奔放な言論者だったので、紳士とは言い難いものがありました。

我々が貴族になることは難しいですが、(規範を重んじる)紳士たることは可能です。そして、紳士のアイテムを身に付けることも可能です。さて、ではチャーチルやボー・ブランメルのような(ユーモアに長けた)ダンディズムはどうやって磨きましょうか? 個々の生き方そのものが反映される振る舞いこそ、今日のダンディズムの真髄なのではないか、と常々思うところではあります。

?チャートウェル(チャーチルの終の棲家)
?J.J.Fox(チャーチルのタバコ屋)


2014.09.10
Text&Photo by M.Kinoshita

plofile
マック 木下

マック木下

ロンドンを拠点にするライター。96年に在英企業の課長職を辞し、子育てのために「主夫」に転身し、イクメン生活に突入。英人妻の仕事を優先して世界各国に転住しながら明るいオタク系執筆生活。趣味は創作料理とスポーツ(プレイと観戦)。ややマニアックな歴史家でもあり「駐日英国大使館の歴史」と「ロンドン の歴史散歩」などが得意分野。主な寄稿先は「英国政府観光庁刊ブログBritain Park(筆名はブリ吉)」など英国の産品や文化の紹介誌。

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