Rapha TOKYOの三井裕樹さんに話を聞いたら 「英国ブランドの本質」が見えてきました | BRITISH MADE

My Favourite Journals Rapha TOKYOの三井裕樹さんに話を聞いたら 「英国ブランドの本質」が見えてきました

2018.02.28

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1878年、サイクリング同好者による世界で初めてのサイクリングクラブがイギリスで誕生しました。古くは後輪に対して極端に大きい前輪をペダルで回していた自転車ですが、1879年にはチェーンを付けて後輪を回す仕組みがイギリスにおいて発明され、「ビシクレット」と命名されました。これが「バイシクル(=自転車)」の語源。さらには、1885年に前輪と後輪の大きさが同じ自転車を発明したのもイギリスです。自転車文化の母国といってもいいイギリスでは現在、自転車と自転車レースをこよなく愛するサイモン・モットラムが立ち上げたブランド、Rapha(ラファ)が大人気であるとのこと。確かに、競技志向が全開の人から健康のために乗り始めた人まで、今、世界の各地で自転車が大きな注目を集めています。そのムーブメントを日本で牽引しているのが、Rapha TOKYO(ラファ東京)。スタッフの三井裕樹さんにいろいろとお話をうかがいました。
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ーまずは、Rapha(ラファ)というブランドについて聞かせてください。

「Raphaは、2004年にイギリスのロンドンでスタートしたサイクリングアパレルブランドです。ブランドが始まるきっかけになったのは、『Kings of Pain』というタイトルで1ヶ月間に渡って開催された展示会。英国人のトム・シンプソンなど、サイクリングの黄金時代(1960〜70年代)を駆け抜けた6人のヒーローがつかんだ栄光とそこに至るまでの苦悩に焦点を当てたものです。その展示会で募った出資金を元にしてRaphaが立ち上げられました。ロンドンでは2000年代に入ってから市が自転車用地図を配布したり、自転車用レーンを敷設したり、通勤用自転車を購入すると減税の対象になったりするなど、大気汚染や気候変動への対策のひとつとして自転車の普及が推し進められました。そういった流れもあって、古くからのサイクリングファンと新しいファンが渾然一体となって現代の自転車文化を醸成しているところです。
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ーロンドンでは市長選挙の際に「誰が最も自転車に対して積極的か?」ということで市長候補たちの自転車政策を比較する記事がメディアに掲載されたりするそうですね。とても興味深いです。それでは、Rapha TOKYO(ラファ東京)がどういうものかについて教えてください。

「Rapha TOKYOは、世界中に展開しているRapha Club House(ラファクラブハウス)と呼んでいるハブ(拠点)のひとつです。イギリスにはロンドン市内に3つと郊外に1つ、日本では東京と大阪にあって、2018年2月現在、世界には全部で22のハブが存在しています。
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千駄ヶ谷にあるRapha TOKYOは地下がサイクルウエアのストア、1階がカフェという作り。カフェではコーヒーを飲み、食事をすることができて(取材時には「ローストビーフサンドイッチ」や「牛バラと野菜のカレー」といったメニューがありました)、店内のモニターで海外のロードレースを放映したり、写真展やワークショップなどの各種イベントも開催しています」
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ー三井さんが自転車にのめり込むようになった経緯とRaphaとの出会いは、どのような感じだったのでしょうか。

「以前の職場で異動があり、電車でひと駅の距離を自転車で通勤するようになったことがきっかけでした。最初は、街乗り用のクロスバイクから。そこで自転車に乗る楽しさに気づいてからは、アルミのロードバイク、カーボンバイクへと乗り換えていくのが早かったように思いますね(笑)。レースにエントリーする楽しさにも目覚めました。そうした中で、シンプルでカッコイイと思えるウエアを探していて行き着いたのがRaphaでした。そこからは、ずっとRaphaを着るようになってRapha TOKYOがオープンした半年後には自分がスタッフの一員になっていましたね」
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ーRaphaには、RCC(ラファサイクリングクラブ)というものがあると聞きましたが、これは?

「Rapha TOKYOにおいて、自分はRCC CHAPTER COORDINATOR(ラファサイクリングクラブ チャプター コーディネーター)というポジションに就いています。Raphaは『RIDE WITH US』というテーマを掲げていて、世界各国の都市と同様にRapha TOKYOにおいてもRCC(ラファサイクリングクラブ)が組織されています。自分はクラブのとりまとめ役といった感じです。現在、東京のメンバーは460人ほど。本拠地であるロンドンのメンバーは、1500人。世界全体では、2万人にもなります。東京でも週2回はいろいろなライド企画を立てて走ったりしていますが、やはり市内だけで3つもハブがあってメンバーが1500人もいるロンドンの盛り上がりはすごいみたいですね。ツール・ド・フランスに代表されるように欧州は自転車レースで熱くなる土地柄ですが、ロンドンでは市民のライフスタイルに自転車が浸透しているのだと思います。東京でもそうなれるように頑張っていきたいと思います。メンバーは常時募集中です!」
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ー他にもRaphaならではの特色がありましたら、教えてください。

「Raphaの店舗やインターネットでウエアを購入していただいたお客様には、リペア(修理)サービスを提供しています。乗車中に転倒してしまったりでウエアが破れることもあるのですが、その際に無償で修理するというものです。レースに出たり、これからの季節でいうとお花見ライドを楽しんだりで、ウエアにはいろいろな汗と思い出が染み込んでいくと思います。そういった大切なウエアを永く着ていただきたいというのがRaphaの考え方です。リペアが済んだウエアは、レスキューマークの入った特製バッグに入れてお戻ししています。また、クラシックス・ギャランティーというサービスもあります。Raphaではメリノウールを使用したクラシックシリーズという名称のウエアも展開していますが、こちらは購入から30日間使っていただいて納得がいかなかったら返金可能です。いいものを納得したうえで、やはり永く着ていただきたいと考えています」
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ーRaphaのウエアを拝見していたら気になるものがあったのですが、これは?

「Raphaでは、これをインサイドストーリーと呼んでいます。表からは見えないところに『自転車レースの選手や歴史』などについての様々なトリビアが記されたタグを配しています(※すべてのウエアに配しているわけではありません)。ただ単にウエアをモノとして消費するのではなく、ウエアの背景にあるストーリーも含めて着用していただきたいという思いからです。これまでのインサイドストーリーをまとめた本も販売しています。すでに『INSIDE STORIES Ⅰ』は売り切れてしまいまして、現在は『INSIDE STORIES Ⅱ』が販売中です」

Raphaを取材して「大切なものを永く使う、いいものを永く使う」というあたりは、さすが英国発祥のブランドらしい考え方だと感銘を受けました。日本人の私たちにとっても、素直に共感できるスタンスだと思います。また、「モノの背景にある文化を理解する、文脈を大事にしながらモノとつきあう」ことも大事なのだと改めて教わりました。

Rapha TOKYO
TEL:03-6434-5571
住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷3-1-6
営業時間:11:00〜20:30(土・日・祝〜19:30)
*店内でレースを放送時は終了まで営業時間を延長
Photo by Katsunori Suzuki / 鈴木克典
Text by Kiyoto Kuniryo / 國領磨人


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