小道散歩のススメ その6 失われゆく風景~ゴルボーン・ロード~ | BRITISH MADE

London Yarns 小道散歩のススメ その6 失われゆく風景~ゴルボーン・ロード~

2016.02.10

ロンドンで一番有名なマーケット、ポートベロー。行かれたことのある方も多いのではないでしょうか。
映画で有名になったノッティング・ヒル・ゲート駅から約1キロに渡って続くマーケットには、アンティーク、ビンテージ古着、手作り品、そして野菜やストリートフードなどの屋台が軒を連ねています。

人々で賑わう通りを歩いて行くと、やがて電車とWest Wayという道路の高架下に突き当たります。この高架下にもアンティークやビンテージのものを扱うお店がたくさん並んでいます。

今回、私がご紹介するのは、ポートベロー・マーケットではなく、このWest Wayからさらに北側にあるゴルボーン・ロードという小道です。

ポートベロー・マーケットの知名度に比べ、ほんの数百メートル先にあるこの小道はそれほど有名ではありません。でも、この短い通りはロンドンらしい個性あふれる道なのです。

今では想像もできませんが、その昔この辺りは農場で、19世紀中ごろのゴルボーン・ロードも農地を横切るあぜ道に過ぎませんでした。しかし、1870年に道幅が広げられ、それをきっかけに店などが建てられていったそうです。

「リトル・モロッコ」という別名を持つこの通りには、モロッコ料理店やモロッコ食料品店がいくつもありますが、モロッコだけではなく、ポルトガル人の集まっている場所でもあります。

20160210_1モロッコと言えばタジン鍋。最近モロッコ料理はイギリスでも人気があります。
20160210_2明るい色合いと手書きの模様が特長のモロッコ雑貨屋さん。
20160210_3ポルトガル・カフェ。「エッグ・タルト」という、パイ生地とカスタードクリームのお菓子と、「チキン・エスカロぺ」というチキンカツのサンドイッチがお勧め。
20160210_5カフェが経営するポルトガル食料品店。
20160210_67スペイン人も多く住んでいるようで、スペイン人のための学校やタパスバーなども近くにあります。

ここからは写真で少し小道散歩をお楽しみください。

<West Wayからゴルボーン・ロードに向かう道>

この道にもマーケットの露店が出ています。West Wayまでの店に比べ、整頓はされていませんが、お手頃な値段でお宝が見つかることも。

20160210_8学生のころよく利用していたビンテージの洋服屋さん。お手頃なお値段でかわいいものが見つかります。
20160210_9カシミヤのセーター、クリケット・ジャンパー、ハンチングなども売っています。しかも、安い!

<ゴルボーン・ロード>

20160210_12 20160210_13 20160210_15ゴルボーン・ロードのマーケットの様子。お宝探しの興奮がたまりません。
20160210_17 私がこのマーケットで見つけたもの。ストーン・ウェアという素朴な焼き物の壺(?)とおそらくエッグ・コージー(ゆで卵が冷めないようにするカバー)と思われるうさぎ。
20160210_18 20160210_19 20160210_21露店だけでなく、アンティーク店もあります。
20160210_22 威勢のいい声で呼び込みをしている八百屋さん。私もマンゴーを買いました。

私がこの道をみなさまに紹介した理由は、もうすぐこの風景が永遠に失われてしまうかも知れないからです。
この辺りの行政を行っているケンジントン・アンド・チェルシーという自治体がこの道の大規模工事を計画しています。
道幅を広げたり排水を改善したり、植樹をしたり…という内容のようですが、実際にここにマーケットや店を構える人たちやこの道を愛する人たちからは、工事の間営業ができないので生活が成り立たない、再開発後には家賃の高沸が予想され、小さな店は戻って来られない、個性が失われ、結局どこにでもあるような道になってしまうと反対の声も上がっているようです。

学生時代は私もこの近くに住んでいて、近所の友人たちとポルトガル・カフェに行ったり、種末にはお宝探しによく出かけたりしていました。私にとってもいくつもの思い出のある懐かしい場所のひとつです。この道の整頓されていない、雑多な感じがロンドンらしくて大好きで、新聞で再開発計画の記事を見たときは、とてもショックでした。

工事がこの春にも始まるようなことを噂に聞きました。今後、どうなってしまうのかは分かりませんが、もしかしたら威勢のいい八百屋さんの声はもうこの道では聞けなくなってしまうかも知れません。

ここが農道から今のように変わったように、時代とともに街が変わっていくのは仕方のないことなのかも知れません。しかし、どんな場所も店や建物ではなく、そこに根付いてきた人たちによって育てられていくものだと思います。結局、再開発されることになるにせよ、利益の追求ではなく、人々の思いを大切にして欲しいと心から願ってやみません。


Text&Photo by Amesbury Kae


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アムスベリー 加恵

アムスベリー加恵

ロンドン留学中にヴィンテージウエアを販売する「Old Hat」ロンドン店でアルバイトをしたことをきっかけに、紳士服に興味を持ち始める。職人の技を身近に見る機会にも恵まれ、英国のクラフツマンシップにも刺激を受ける。カレッジを卒業後、いったん帰国。結婚を機に2012年10月に再渡英、現在ロンドン在住。
夫に作ったニットタイが好評で、夫の友人たちから注文が相次ぎ、2013年11月にオーダーメイドの手編みニットタイを販売する「Bee’s Knees Ties」を立ち上げる。

Bee’s Knees Ties
ロンドンを拠点に、オーダーメイドの手編みのニットタイを制作、販売しています。
色はもちろん、ステッチや結び目の大きさ、長さや太さなど、お客様のお好みをおうかがいお伺いしてから、1本1本、手で編みあげます。素材にもこだわり、大量生産の糸にはない魅力を持つ糸を探し求め、何度も試作を繰り返した後に、品質が良く、ユニークで、長く愛用していただける糸だけを採用しています。手編みならではの親しみやすい風合いが、スーツだけではなく、ニットウエアやツイードにもよく合い、日常の色々なシーンでお使いいただけます。
ロンドンではサヴィル・ロウのテーラー「L G Wilkinson」にてお取り扱いいただいております。
facebook.com/bees.knees.ties

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