UKのファンクグルーヴに踊る | BRITISH MADE

BM RECORDS TOKYOへようこそ UKのファンクグルーヴに踊る

2016.02.11

唐突ですが、旧友というのはいいものですね。

先日、高校時代の同級生と久々に酒を酌み交わしました。彼とは学生時代、一緒にバンドをやり、仮面浪人生(笑)時代に、勉強など全くせずに毎日互いの好きなCDやカセットテープ(※何せiPhoneはおろか、MP3なんて夢のまた夢だった頃でしたから)を持ち寄っては、ファミレスで聴かせっこなんかしていた仲でした。

彼にはかつていろいろな音楽を教わりました。ギターが上手くて、 グレイトフル・デッドやZZトップといったアメリカのロックが好きだった彼は、いま注文制作や市販品の家具を作るいっぱしの職人です。そんな彼と部屋でまったりと飲んでいると、久々に彼が「これ知ってる?」と言って、このアーティストの曲を流し始めました。今回紹介する“スピードメーター(Speedometer)”です。

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ご存知の方も多いのでしょう。ですが、私、恥ずかしながらノーマークでした(照)。ファンクと言えばジェームズ・ブラウンやファンカデリックなど、アメリカのイメージが強いですが、彼らはUK産のファンクバンドです。

ところで、どうも日本ではファンクってマイノリティですよね。パッと思いだせる有名どころでは、先日、大傑作アルバム「THE LAST」をリリースしたスガ シカオや、久保田利伸、在日ファンク、堂本剛、浜崎貴司あたりでしょうか。私はこれまでにスガさんのオフィシャルライターを何度か担当させてもらっていることもあり、スライ&ザ・ファミリー・ストーンをはじめ、ファンクは流行に関わらず愛聴してきましたが、ロックやソウルといったワードに比べると、悲しいかな、いまだ市井レベルでは認識されていない感があって残念です。

閑話休題。このスピードメーター、幾つか存在するUK産ファンクバンドのなかでも、アメリカンファンクほどクドくなく、それでいて無論インコグニートやシャーデーといったアシッド・ジャズ系統のサウンドと比べると、バリバリのファンクっ気とムンムンのソウル臭がするという、いそうなものなのに意外と見当たらない“丁度よさ”が心地良いのです。スピードメーターという名前だけあってか、特にドライブの時にかけると気分がアガります。

日本盤のライナーノーツによると、彼らは99年にイギリス南東部のライブハウスで誕生したそうです。当初はミーターズやJB’sのカバーを演奏していた彼らは徐々にその頭角を現し、2004年にファーストアルバムをリリースします。これ、CDでも買えますが、iTunes Storeではファーストとセカンドの2枚がセットになった「THIS IS SPEEDOMETER Vol.1 & 2」が購入可能です。

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適度にライトで線が細く、それでいてガンガン踊れるというスタイリッシュなサウンド。インストナンバーあり、ボーカルをフィーチャーした歌モノありと、柔軟な演奏スタイルです。

Speedometer – Take a Chance
たとえば「ソウル・オーヴァードゥー」は、泣く子も黙るジェームス・ブラウン・バンドのディーヴァを務めたマーサ・ハイとの共作アルバムです。往年のソウルの名曲カバーに、スピードメーターの持ち曲のセルフカバーを織り交ぜた一枚なのですが、ここで聴けるボビー・ヘッブ1966年の名曲「サニー」がまた心地よいのです。

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私、この「サニー」が大好きで、ジェームズ・ブラウンからエラ・フィッツジェラルド、ウェス・モンゴメリーにダスティ・スプリングフィールド、東京スカパラダイスオーケストラや奥田民生にシーナ&ザ・ロケッツ、果ては勝新太郎の日本語カバーまで聴くのですが、じわじわと演奏を詰めながらピークへ持って行き、後半はJB’sのライブ盤アレンジを思い出させるこのスピードメーター版「サニー」、ソウル好きが滲み出ているオツな味わいです。こちら、ライブの模様を観ることができます。

Martha High and Speedometer – Sunny
現在までの最新アルバムは“スピードメーター&ジェイムス・ジュニア”名義で昨年リリースした「ノー・ターニング・バック」です。ジェイムス・ジュニアというシンガーを迎え、これまでのアルバムより幾分シブいグルーヴを奏でています。スーツ姿でファンクグルーヴ、うん、シャレているじゃないですか。

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Speedometer – No Turning Back (feat. James Junior)
ちなみにボーナストラックには、かのファレル・ウィリアムスの大ヒット曲「ハッピー」のインストカバーを収録しています。これもドライブでかけると心地の良いユルさがあります。
Speedometer – Happy [Freestyle Records]
彼らのファンクへのアプローチはオーソドックスと言えばそうかもしれません。ですが、この辺りはむしろイギリスっぽい襟の正方というか、ファンクというジャンルへの“生真面目なリスペクト”と評しても良いのかも。ノーザンソウルやレアグルーヴがお好きな向きや、初期の作品にはちょっと劇伴っぽい匂いもあるので、日本の井上尭之バンドや大野克夫バンド、ルパン三世でおなじみの大野雄二などが好きな方にも楽しんでもらえそうな気がします。

私自身、まだまだ聴き込みが足りませんが、もしも次作からの来日公演、なんて流れになったら「絶対一緒に観に行こう!」と旧友に誓った夜でした。古き仲を温めて知らなかったアーティストに出会う。これも変則的な温故知新かな?(←完全に用法を間違っています)。いやはや、持つべきものは友だちです、ハイ。

てなわけで、今回はUKのファンクバンド、スピードメーターを紹介しました。「じゃあこれも聴いてみたら?」というオススメのアーティストがいたら、ぜひとも私にリコメンしてください。それではまた!

(PS : Thanks to Ken Kawasaki.—— 研ちゃん、ありがとうね!——)

Text by Uchida Masaki




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内田 正樹

内田 正樹

エディター、ライター、ディレクター。雑誌SWITCH編集長を経てフリーランスに。音楽をはじめファッション、映画、演劇ほか様々な分野におけるインタビュー、オフィシャルライティングや、パンフレットや宣伝制作の編集/テキスト/コピーライティングなどに携わる。不定期でテレビ/ラジオ出演や、イベント/web番組のMCも務めている。近年の主な執筆媒体は音楽ナタリー、Yahoo!ニュース特集、共同通信社(文化欄)、SWITCH、サンデー毎日、encoreほか。編著書に『東京事変 チャンネルガイド』、『椎名林檎 音楽家のカルテ』がある。

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