London Yarns ローストターキーだけじゃない イギリスのクリスマスのごちそう | BRITISH MADE

London Yarns ローストターキーだけじゃない イギリスのクリスマスのごちそう

2014.12.19

クリスマス当日は、実はロンドンが1年中でいちばん静かになる日です。

イギリスのクリスマスというとロマンチックで華やかな様子を思い浮かべるかたもいらっしゃるかも知れませんが、クリスマス当日は、実はロンドンが1年中でいちばん静かになる日です。ほとんどの店が閉まっていて、家族の元や旅行に行ってしまう人が多いので、街はがらんとしています。
私も友人たちもクリスマスはロンドンを留守にするので、少し早いクリスマスパーティーを開きました。「イギリスのクリスマスは初めて」という人も参加するので、今回はできるだけ伝統的な料理を作ることにしました。  今回は典型的なクリスマス料理と、その歴史についても少しご紹介します。
 

12月のはじめごろになると、街のあちこちでクリスマスツリー用の木を売っているのを見かけます。

キリスト教が広まる前は、一年の中で一番昼間が短い日(冬至)である12月21日か22日に太陽の光を地上に呼び戻す目的で祭りがおこなわれ、12月25日頃にはその成果(実際には自然に日が長くなっただけなのですが)を祝う目的でごちそうを食べていたそうです。人々にわかりやすいよう、この習慣をそのままキリスト教の祝典として受け継ぎ、それが今でもごちそうを食べてお祝いする習慣として残っているということのようです。

ごちそうを食べる前に忘れてはならないのが「クリスマスクラッカー」。日本でおなじみの円錐形のものではなく、キャンディのような形をしています。お隣の人とそれぞれ端を持って輪になります。
「one two three!」で引っ張りあうと、「パンッ」と音がして、中から紙の王冠、なぞなぞの書いてある紙、小さなおまけなどが出てきます。みんながこの王冠をかぶったら食事の始まりです。
 

クリスマスクラッカーを引っ張っているところ。

イギリスのクリスマスの食卓と言えば、ローストターキー(七面鳥)を思い浮かべる人が多いかも知れませんが、実際には七面鳥だけではなくさまざまな種類のローストしたお肉が並びます。冬は飼料となる植物が少なく、餌の量が限られているので、家畜の数を減らすために年老いた家畜を食べたことに由来しているそうです。私はターキーよりチキンの方が好きなので、ローストチキンを作りました。

クリスマスパーティーのテーブル。今回のチキン、なかなか上手に焼けました。

お肉の他には、この時期旬のブリュッセルスプラウト(芽キャベツ。実は苦手な人が多いらしいです。)、ローストポテト、ローストパースニップ(イギリスでは日頃よく食べられている野菜。見た目は白い人参。淡白で少し苦みがある。)ナッツ、「サツマ」(日本で私たちが食べている冬みかんのこと。今は1年中売っていますが、かつては輸入品で、クリスマスにしか食べられない高級品扱いでした。)、デーツ(乾燥ナツメヤシ。干し柿に似た味がします。)などが並びます。

パースニップ。日本ではあまり見かけませんが、イギリスではとても良く食べられている野菜。ローストの他にマッシュにすることもあります。
クリスマスプディング。
ブランデーとお砂糖を混ぜたバター、「ブランデーバター」と一緒に食べると最高です。
食事の後のお楽しみはデザート。デザートにはクリスマスプディングと呼ばれるドライフルーツやスパイスがたくさん入ったどっしりと重いケーキを食べます。昔は肉や果物が入った贅沢なお粥のようなものだったらしいのですが、後に増粘剤が加えられて、今のような形になったそうです。チャールズディケンズの「クリスマスキャロル」にも登場し、ヴィクトリア女王が英国王室のデザートにも採用されるなど、イギリスのクリスマスには欠かせない存在となっています。 ケーキと言えば焼き菓子が多い中で、これは蒸して仕上げるのですが、元がお粥だったことに関係しているのかもしれませんね。

このクリスマスプディング、お正月のお雑煮のように各家庭で味やレシピが違うお料理のひとつですが、最近は有名シェフがプロデュースした市販のものも人気のようです。 寝かせるほどおいしいと言って、クリスマスが終わるとすぐに来年用のものを作る人もいます。初めて聞いたときはちょっとびっくりしましたが、お砂糖と洋酒がたくさん入っているので、保存が効くようです。作るときに、コインをひとつ入れます。コインが当たった人は、来年は幸運な年になるそうですよ。 他には、ミンスパイと呼ばれるスパイスで味付けしたフルーツの入ったお菓子やかつての高級品マジパン(アーモンド風味の砂糖でできたペースト)のついたケーキなどを食べます。

ミンスパイとデーツ。

最後に、食べ物ではありませんが、日本ではあまり知られていない、クリスマスの翌日26日についてご紹介します。この日は「ボクシングデー」という日です。教会がクリスマスまでに集めた寄付の箱を開ける日だからとか、クリスマス中に忙しく働いた召使いたちをねぎらって、雇い主が(箱に入った)プレゼントを渡す日だからなど言われは諸説あるようです。最近はデパートなどのセール初日としての方が良く知られているようですが…。
今ではクリスマスにしか食べられないものはほとんどありませんが、日ごろ忙しくて会えない友人や、遠くに住む家族と一緒にひとつのテーブルを囲む時間、みんなの笑顔とにぎやかな会話がいちばんのごちそうと言えるかもしれませんね。
私もクリスマスはカントリーサイドで夫の家族や友人たちと食卓を囲む予定です。
Wish you a merry Christmas、そして少し早いですが良いお年をお迎えください。


2014.12.22
Text&Photo by Amesbury Kae

plofile
アムスベリー 加恵

アムスベリー加恵

ロンドン留学中にヴィンテージウエアを販売する「Old Hat」ロンドン店でアルバイトをしたことをきっかけに、紳士服に興味を持ち始める。職人の技を身近に見る機会にも恵まれ、英国のクラフツマンシップにも刺激を受ける。カレッジを卒業後、いったん帰国。結婚を機に2012年10月に再渡英、現在ロンドン在住。
夫に作ったニットタイが好評で、夫の友人たちから注文が相次ぎ、2013年11月にオーダーメイドの手編みニットタイを販売する「Bee’s Knees Ties」を立ち上げる。

Bee’s Knees Ties
ロンドンを拠点に、オーダーメイドの手編みのニットタイを制作、販売しています。
色はもちろん、ステッチや結び目の大きさ、長さや太さなど、お客様のお好みをおうかがいお伺いしてから、1本1本、手で編みあげます。素材にもこだわり、大量生産の糸にはない魅力を持つ糸を探し求め、何度も試作を繰り返した後に、品質が良く、ユニークで、長く愛用していただける糸だけを採用しています。手編みならではの親しみやすい風合いが、スーツだけではなく、ニットウエアやツイードにもよく合い、日常の色々なシーンでお使いいただけます。
ロンドンではサヴィル・ロウのテーラー「L G Wilkinson」にてお取り扱いいただいております。
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