LondonからのDay(s) Trip 番外編 心と体のお洗濯 ハイランド地方 | BRITISH MADE

London Yarns LondonからのDay(s) Trip 番外編 心と体のお洗濯 ハイランド地方

2015.06.30

イギリスに住み始めてから毎年ここに来ていて、今回が3度目になりますが、何度来てもため息が出るような美しい自然に飽きることがありません。

スコットランドのハイランド地方にあるKinloch Hournへの10日間の旅から戻ってきました。
ロンドンからはエジンバラを経由して夜行列車で12時間、そこからさらに車で1時間半かけてたどり着いた先には、高い山々、湖、森とまるでファンタジー映画の中に迷い込んだかのような景色が広がっています。
 
 
360度、どこを見ても自然がいっぱいです。

Loch(ロックと発音します。)とは、スコットランドの言葉で「湖」のことで、Loch hournは「ホーン湖」となりますが、海とつながっているため海水で、湖というより入り江のような感じです。

ホーン湖。この先にスカイ島があります。
ボートに乗って、ピクニックに行く途中、お昼寝中のアザラシさんに遭遇。

イギリスに住み始めてから毎年ここに来ていて、今回が3度目になりますが、何度来てもため息が出るような美しい自然に飽きることがありません。

何から始めようか迷うほど、ご紹介したいことが山ほどあるのですが、滞在先の家について少しお話します。

この家の歴史は、1890年に銀行家でアマチュアの植物研究家であったRobert Birkbeck氏が自らタスマニアなどへ航海に出かけ、集めてきたユーカリの木を植えるために購入したことにはじまります。ここに吹く偏西風がユーカリに適していると考えたようです。それにしても、なんともスケールの大きな話ですね。

ユーカリの木。ヨーロッパ最大のユーカリの木もここに生えているとか。

家族の別荘だったものに増改築を重ね、現在はストーカーロッジ(秋に狩りに来る人たちが借りられる家)になっていて、部屋の壁には狩りの写真や絵、鹿の角などがたくさん飾られています。

家の外観。小さく見えますが寝室が10個、お風呂が3つあり、15人くらいが泊まれます。
窓からの景色もまるで絵のようです。
ダイニングルーム。壁には鹿の角がたくさん飾られています。

この素晴らしい自然ですが、英国にはこれを守っている職業があるのをご存知でしょうか?ゲームキーパー(またはストーカーとも呼ばれます)、リバーキーパーという人たちです。

リバーキーパーは、つまり水の汚染状況、魚の生存数や産卵状況、などをチェックし、魚が住みやすい状況になるよう川やその周りの整備をしたり、外来魚の駆除をしたりと川とそこに住む生き物の見張りをしている人たちです。

一方、ゲームキーパーは山や森を守る人たちです。狩りに同行し、狩猟に参加する人たちを誘導したり、動物の数の増減や彼らのエサとなる植物の生育状況などをチェックしたり、山や森を整備したりするのが彼らの仕事です。

白いのがゲームキーパーさんの家。ロッジの隣に住んでいて、常にこの土地の自然と滞在する人の安全に目を配っています。

イギリスに来た当初、狩りはただのスポーツだと思っていて、なんと残酷なと思っていたのですが、実はそうではないことをゲームキーパーの方たちによって知りました。狼などの天敵がいなくなった現在では、狩猟によって数を調整しなければ繁殖過多になり、やがて種が滅びてしまうため、天敵に変わって狩りをおこなう必要があるのです。
何でもむやみやたらに撃つのではなく、例えば鹿なら角の発達が異常なもの、繁殖には適さない高齢のものなどを撃ちます。つまり、狩猟は優秀な種の保存目的でもあり、この部分でもゲームキーパーは重要な役目を担っています。

野生のシカの群れ。換毛期なので、あまり美しいとは言えませんが…。
撃った鹿を山から運び出すための馬も飼われています。

この10日間の間で私がいちばん時間を費やしたのがフライフィッシングです。フライとは昆虫や幼虫を模した疑似餌のことで、鳥の羽や動物の毛などを使って作られています。釣りをする場所や季節に合わせて、本当に数えきれないほどの種類があります。

フライ。小さな中に色々な工夫が詰まっています。

川に行ったらまず周囲を観察し、どんな虫が今繁殖しているのか、魚は水中の幼虫を食べているのか、それとも水表の羽虫を食べているのかなどを観察し、フライを選びます。時に釣った魚の胃の中を調べて、何を食べているか見ることもあります。いわば魚との頭脳戦ですね。見事戦略があたり、小さくても魚が釣れた時は本当に興奮します。

今回私が釣った中で一番大きなブラウントラウト。きれいな模様です。

そんな釣りを楽しむ私たちにも自然を守る役割が課せられています。1日の終わりには釣った魚の数、気が付いたことなどをリバーキーパーに報告する日誌を書かなければいけません。

釣りの記録を書く日誌。釣った人、場所、魚の大きさと数、使ったフライなどを書きこみます。リバーキーパーへの報告だけでなく、他の釣り人の参考にも使われます。

心も体も深呼吸してなんだか日々の垢を落としたようなすがすがしい気持ちで帰路につきました。また来年も行けますように…。



2015.7.1
Text&Photo by Amesbury Kae


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アムスベリー 加恵

アムスベリー加恵

ロンドン留学中にヴィンテージウエアを販売する「Old Hat」ロンドン店でアルバイトをしたことをきっかけに、紳士服に興味を持ち始める。職人の技を身近に見る機会にも恵まれ、英国のクラフツマンシップにも刺激を受ける。カレッジを卒業後、いったん帰国。結婚を機に2012年10月に再渡英、現在ロンドン在住。
夫に作ったニットタイが好評で、夫の友人たちから注文が相次ぎ、2013年11月にオーダーメイドの手編みニットタイを販売する「Bee’s Knees Ties」を立ち上げる。

Bee’s Knees Ties
ロンドンを拠点に、オーダーメイドの手編みのニットタイを制作、販売しています。
色はもちろん、ステッチや結び目の大きさ、長さや太さなど、お客様のお好みをおうかがいお伺いしてから、1本1本、手で編みあげます。素材にもこだわり、大量生産の糸にはない魅力を持つ糸を探し求め、何度も試作を繰り返した後に、品質が良く、ユニークで、長く愛用していただける糸だけを採用しています。手編みならではの親しみやすい風合いが、スーツだけではなく、ニットウエアやツイードにもよく合い、日常の色々なシーンでお使いいただけます。
ロンドンではサヴィル・ロウのテーラー「L G Wilkinson」にてお取り扱いいただいております。
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