オトナの芸術的好奇心を刺激する、ロンドンのバービカン・センター | BRITISH MADE

英国クリエイティブの窓  オトナの芸術的好奇心を刺激する、ロンドンのバービカン・センター

2018.03.27

建物と空の境界線がなくなる。剥き出しのコンクリートがロンドンの曇天に調和して、威容を放っているのだ。その界隈を歩くと、孤独の未来都市に迷い込んだかのような錯覚に陥る。バービカン。金融街・シティの目と鼻の先にあるロンドン中心部の一地域で、住居群「バービカン・エステート」はブルータリズム建築の傑作とも評されている。ブルータリズムとは、そもそも「粗野な、冷酷な」といった意味を持つ形容詞「brutal」から取られた建築デザインのことだが、文字通り、どこかしらに生活感と物語(歴史)の排除を感じさせ、いわゆる観光ガイドブックに掲載されているようなロンドンのイメージからかけ離れた印象を与える。
20180327_estate1 無骨な印象を与えるコンクリート
20180327_bbbb_003 ユニークなデザインも目をひく
僕は、ときどき、そんなバービカンを訪れる。というのも、ここにはヨーロッパ最大級の文化複合施設とされる「バービカン・センター」があるからだ。ロンドン有数のコンサートホールに映画館、劇場、アートギャラリーなどが敷地内に同居している。なんというか、ここに来るだけで文化的欲求の全てが満たされる市民会館といったところだろうか。このセンターは1982年に完成しているのだけれど、当時は「女王から国民への贈り物」と言われたらしい。事実、その表現もあながち間違ってないな、と感じるのは、WiFiが無料で使えたり、フリーアドレスのワークデスクが置かれていたり、カフェが併設されていたりするから。ゆったり座れるソファもいくつかあって、休日なんか、ぼんやり本を読んだり、原稿を書いたりするのにピッタリだ。
20180327_barbican バービカン・センターの入口
僕はこの冬から、日曜日にはよくここに出かけるようになったのだけれど、ある時、朝から夜まで一歩もバービカンの敷地外に出ることなく半日過ごしたことがある。なかなかできることではないけれど、あれは至福の時間だったーー。
20180327_bbbb_002 のんびりとここで読書
まず朝の9時30分に家を出て、10時にはセンターに着く。そこで誰もいないワークスペースに陣取ってのんびり仕事をする。12時ぐらいになって集中力が切れ始めると、併設された小さなカフェでサンドイッチとハンドメイドのレモネードを買って小腹を満たす。2時になれば映画館に移動して、珍しい外国作品を鑑賞。5時過ぎに最近新しくなったアート・ショップを冷やかした後は、ソファに腰掛けてしばし読書の時間だ。その後、6時半頃からキャンティーン(食堂)に行ってピザと野菜の盛り合わせのセットメニューを注文(これが意外に安くて美味しい!)。サッと食事をすませたら、7時半から地下のコンサートホールで、ロンドン・シンフォニー・オーケストラを堪能する、といった具合。
20180327_canteen シャレた食堂。コンサート前には人いきれ
こんな風に書くと、気取って鼻持ちならない感じに思われるかもしれないが、実はそれなりに財布に優しい「ヒマつぶし」だったりする。何と言っても、これら全てを40ポンド以内(約6000円)で済ますことができるのだから。リラックスした空間で、映画に超一流のコンサートに、食事2回で、この金額ですからね、ほんと。涙が出ちゃう。

そういったわけで、二度目、三度目のロンドン観光にバービカンはとってもおすすめ。珍しい建築デザインからクラシック音楽鑑賞まで、あなたの芸術的好奇心を刺激すること間違いなしのおすすめスポットです。

Text&Photo by Ishino Yuichi

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カルチャーと憩いの場『BARBICAN KITCHEN』




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Ishino Yuichi

Yuichi Ishino

イギリスをはじめ、欧州と東京を拠点にするデジタルプロダクション/エージェンシー「TAMLO」代表。企業に向け、ウェブメディアの戦略コンサルティング、SNS施策、デジタル広告の運用、コンテンツの制作などを日英を含めた多言語でサポートする。好きな英国ドラマは『フォルティ・タワーズ』。ウィスキーはラフロイグ。

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