2016.07.03

五輪を目前に知る英国発祥競技、馬術大会へ潜入レポート

20160630_horseshow_top
イギリスに息づく伝統文化とクラフトマンシップ。 その二つを体現するブランドとして挙げられるのが「LAVENHAM」だろう。前者は英国貴族のたしなみとして根付き、今も変わらず愛される“乗馬”のアイテムを作り続けているという点、そして後者は、そのアイテムのどれもが品質にこだわり、キルティング生地を作るところから、すべての製品の製造までを英国にある自社工場で行っている点。そうした生産背景に重きをおく、まさに純粋な“Made in England”製品なのだ。

そんなLAVENHAMだが、日本における乗馬や馬術の普及にも力を入れている。一例が去る5月27〜29日に行われた「CIC2 Tokyo 2016」へのスポンサード。今回は、その様子をレポートしたい。

ホースラグから歩み始めたLAVENHAMと馬術の切っても切れない関係

20160630_horseshow_01
LAVENHAMの代名詞と言えば、キルティングジャケット。軽く、乾きやすく、体温調整に優れた名品だが、もともとキルティングは馬のためのラグとして誕生している。

しかし、このキルティングジャケットは知っていても、「総合馬術」と聞いてピンと来る人はまれだろう。「総合」と名の付く通り、馬場馬術・クロスカントリー・障害馬術の3種目を通して、人馬の総合力を問うこの競技。なかでもフォーカスしたいのが、「クロスカントリー」だ。

LAVENHAMのマネージングディレクターであり、以前、このサイトのインタビューにも登場してくれたニッキー・サントマウロ氏も、かつてクロスカントリーの選手だったという縁がある、この種目。人馬一体となってあらゆる障害が待ち受けるコースを駆け抜け、いかに設定されたタイム通りに走れるかを競うレースである。

大会会場は“幻の五輪”を契機に生まれた、歴史深き馬事公苑

20160630_horseshow_02
大会が行われたのは東京・世田谷にある馬事公苑。日中戦争の勃発から中止を余儀なくされた“幻の五輪”こと、1940年に開催予定だった東京オリンピックに向け、選手育成を目的に開設された公園だ。

実は筆者も、馬術競技の観戦は初めて。馬事公苑を訪れるのも初めてだったが、“都会のオアシス”という言葉がしっくり来るほど広大な敷地に新緑が輝く。今回のクロスカントリー競技では全長3540mのコースに24の障害が設置されていると言うが、それも納得の広さだ。

しかしクロスカントリーでは競われるのは、その広大な敷地を駆け抜けるスピードだけではない。減点方式で採点され、障害の前で止まったり逃げたりするとその回数に応じて減点され、3度あった場合には失格(失権)となる。また障害に躊躇すれば自ずとタイムは遅くなってしまい、規定内タイムにフィニッシュできずさらに減点が加算される。

観戦スタイルも迫力も、あらゆる醍醐味が詰まったクロスカントリー

20160630_horseshow_03
さて、いざ観戦のためにコース付近に向かったところ、その観戦スタイルに驚かされる。例えば競馬の場合、観客は無論、客席について競技を見守るが、クロスカントリーにおいては、かなり間近で観戦することができる。オリンピックほど大規模な大会となると話は別のようだが、今回の大会では設置された障害から、ほんの1、2mの距離まで近づくことができた。

20160630_horseshow_04
人馬はまず、陸上トラックのように形の取られたグラウンドからスタートを切る。これもなかなかの近距離から観戦できるとあって、馬の艶やかな毛並みに見とれてしまう。しかし最も興奮するのが、至近で見る障害物飛躍の場面だろう。次第に近づく高らかなヒヅメの音、そして華麗に障害物を飛び越える様は、まさに迫力満点だ。

人馬はグラウンドを出たのち、馬事公苑に張り巡らされた走路を駆け抜けるが、観客もまた敷地内を移動するのが、クロスカントリーの観戦作法。コース距離が長いことから、一箇所にとどまっていては疾走する人馬の8割方を見逃してしまう。そのため、自分の見たい障害ポイントに先回りするのも一つの醍醐味なのだ。

20160630_horseshow_05
障害ポイントのなかでも特に必見なのが、池を駆け抜けるシーン。実はクロスカントリーは、3種目で形成される総合馬術のなかでも“花形”と称されるそうだが、豪快に水しぶきを上げる人馬の姿を目にすれば納得の一言だろう。一方、今回の大会ではコースや障害を馬が嫌がり、失格する人馬が少なくなかったのも事実。それもまた、クロスカントリーが奥深い競技であることの裏返しだ。

世界をまたに掛ける英国人国際審判、アンジェラ・タッカー氏に聞く

20160630_horseshow_06
とは言え、やはり日本人にはあまり馴染みのない馬術競技。そこで馬術の魅力を探るべく、馬術競技の国際審判資格を持ち、今大会でも審判を務めたアンジェラ・タッカー氏にお話を伺う機会を得た。これも敷地の差でしょうか。日本と違い、イギリスの郊外にはポニークラブがあることが珍しくありません。
これも敷地の差でしょうか。日本と違い、イギリスの郊外にはポニークラブがあることが珍しくありません。

——まずは今大会、とりわけクロスカントリーについての率直なご感想は?

昨年も大会の審判を務めましたが、昨日行われた馬場馬術に関しては非常に素晴らしく、選手皆さんのスタンダードそのものが上がっていると感じました。けれどクロスカントリーについては失格となる人馬もいて、やや経験不足を感じましたね。
イギリスに比べて日本は敷地が狭いので、規定の距離を出すためにもカーブが多く、難しいコースになりやすいのも事実です。けれど国ごとに生まれるコースの特色もまた、クロスカントリーの醍醐味なので。

——この馬事公苑でも狭いとは、イギリスの広大さに驚かされます。

もちろんイギリスでも郊外と都会で差はありますが、そもそもクロスカントリーという競技は、イギリスの広大な大地で行われていた狩りが発祥です。また、これも敷地の差でしょうか。日本と違い、イギリスの郊外にはポニークラブがあることが珍しくありません。

20160630_horseshow_07
——アンジェラさんが乗馬や馬術に出会われたきっかけもポニークラブ?

その通りです。とりわけ私は、牧場に生まれたことがラッキーでした。牧場に生まれたことから自然と動物に触れ合うことができ、さらにポニークラブで馬に親しみました。
その後、馬術の選手として少しずつレベルを上げ、国際大会にも出場させていただきましたが、今は国際審判のほか、若い馬や若い乗り手の育成も行っています。こんな風に世界を飛び回れるのも、馬に出会えたおかげね。

——世界と言えば、馬術はオリンピック競技でもあります。今年はリオ、4年後には東京で開催されますが、見るべきポイントを教えてください。

オリンピックではいくつかの馬術競技が行われますが、やはり今回の大会で行われた総合馬術に注目してください。総合馬術にある3種目のうち、とりわけクロスカントリーは見応えがありますが、運動の正確性を見る馬場馬術も、飛ぶ力を見る障害馬術も、すべてが重要となるのがこの競技。馬術の魅力や醍醐味を感じていただけるはずです。

20160630_MG_8500 この日開催されたCIC2の表彰式の様子。

リオ五輪に馳せる期待。そしてすでに動き出した東京五輪に向けて

20160630_horseshow_08
馬術の魅力を知るきっかけとしても、8月5日に開幕されるリオオリンピックが待ち遠しいが、何を隠そうアンジェラ氏は、総合馬術の日本代表に選ばれた北島選手のコーチだった経歴も持つ。

また、すでにご紹介した通り、今大会の会場となった馬事公苑も、オリンピックに縁ある地。“幻の五輪”を機に開設され、1964年の東京オリンピックでは実際に馬術競技の会場となったが、4年後に迎えるオリンピックに向け、来年1月から約2年に渡る大規模改修に入る予定だ。 となればリオオリンピックでの日本人選手の活躍に期待するのはもちろん、4年後、東京の地で行われる馬術競技にも思いを馳せたい。


Text by K.Oya / 大谷享子
Photo by K.Suzuki / 鈴木克典


おすすめ商品

RECOMMEND