2018.05.24

ブリティッシュ“ライク” 英米の叡智により製作された映画「ビューティフル・デイ」

グラスゴー出身のリン・ラムジー監督の最新作「ビューティフル・デイ」が6/1より封切りする。
『ビューティフル・デイ』本予告篇
主人公ジョーは、行方不明になった人物を捜索し、連れ戻すことを生業としている。必要であれば殺人も厭わない冷徹な人物に見えるが、自身が少年期に経験した虐待のトラウマ、海兵隊時代や潜入捜査での体験に苛まれながらも高齢の母親を介護しながら生活している。いつものように新たな案件を依頼されたジョーは、目的である少女ニーナを探し出す。問題なく任務を遂行したように思えたが、直後に何者かに襲撃され彼女は連れ去られてしまう。明らかに普段とは違う展開に戸惑いを隠せないジョーだったが、再びニーナを奪還すべく行動に移す。
リン・ラムジー監督の長編作品はすべて鑑賞しているが、過去の作品では主として女性側の視点に立った物語が多い。えてして、本作では、ジョーという中年男性にスポットを当てている点が、これまでの作品とは異なり新鮮だ。だが、リン・ラムジー特有の、傷ついた人物の苦悩する姿を描く様はここでも遺憾なく発揮されている。

主演を務めたのはホアキン・フェニックス。カンヌ国際映画祭では、本作にて男優賞を受賞している(リン・ラムジーは脚本賞を受賞)。市販の小型ハンマーを片手にぶん回す姿がとにかくタフで印象的だ。しかしながら、不安定な心情が如実に行動に表れていて危なっかしい。いわゆるハードボイルドとは一線を画した人物像に引き込まれていくのである。
さらに、ニーナ役を演じた若干15歳のエカテリーナ・サムソノフ。じつは、劇中での登場時間はさほど多くない。にもかかわらず、大人と子供の両面を覗かせるような佇まいが美しい。ホアキン・フェニックスの好演に呼応するかのような芝居がとにかく輝かしいのだ。
加えて、本編の音楽を担当するのは”レディオヘッド”のジョニー・グリーンウッドだ。リン・ラムジーとは「少年は残酷な弓を射る」に引き続きタッグを組んでいる。このシーンにこの音楽をあてるのかという、ある種裏切られる感覚が鮮明な印象として残っている。

本作は、イギリス映画とクレジットされているが、物語の舞台はアメリカのシンシナティから始まっていく。スタッフやキャストを確認しても、英米出身者の名前が多くクレジットされており、両国の叡智が融合し、製作された佳作である。何より本編を見終わったあとは、このタイトルに納得し清々しい気持ちになった。


「ビューティフル・デイ」
6月1日(金)新宿バルト9ほか全国ロードショー
配給:クロックワークス
beautifulday-movie.com

©Why Not Productions, Channel Four Television Corporation, and The British Film Institute 2017. All Rights Reserved.
©Alison Cohen Rosa / Why Not Productions ©Why Not Productions, Channel Four Television Corporation, and The British Film Institute 2017. All Rights Reserved.
Text by Shogo Hesaka

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部坂 尚吾

部坂 尚吾

1985年山口県宇部市生まれ、広島県東広島市育ち。松竹京都撮影所、テレビ朝日にて番組制作に携わった後、2011年よりスタイリストとして活動を始める。2015年江東衣裳を設立。映画、CM、雑誌、俳優・タレント・文化人のスタイリングを主に担い、各種媒体の企画、製作、ディレクション、執筆等も行っている。山下達郎と読売ジャイアンツの熱狂的なファン。
江東衣裳
http://www.koto-clothing.com

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