2016.10.27

ブリティッシュ“ライク” vol.14 木綿のハンカチーフ

待ちに待った秋がやって来た。読書の秋でもあるので、積ん読になっていた英国の詩人キーツに挑戦してみたが、まったく理解ができず頓挫してしまった。こういった物を美しいと思える感性が残念ながら備わっていないようである。対して、チェコの作家・ジャーナリストである、カレル・チャベックの紀行「イギリスだより」には感銘を受けた。1924年の文書だが、当時の英国や英国人の様子を主観的に鋭く表現している。以下は、「クラブ」というタイトルのエッセイから抜粋したものである。

“ヨーロッパ大陸の人たちは、語ることに最大の重要性をおくが、イギリス人は、沈黙をもって尊しとする。この沈黙は、孤独な状態ではなく、ピタゴラス派の哲学者の沈黙でも、神の前での沈黙でも、死の沈黙でも、瞑想にふけるための沈黙でもない。それは特別な、社交的な洗練された状態で、紳士の中の紳士の状態なのである”

もはや何も付け足すことのできない機微に触れた文章だ。飯島周氏の翻訳も素晴らしい。

ときに、男性がハンカチを使う姿を頻繁に目にするようになった。トイレで手洗いが終わった後にさっとハンカチで手を拭う姿は大変心地良い。また、トラウザーズのポケットから少しハンカチを覗かせる、遊び心に富んだ御仁なども見られる。僕自身、特に気を遣っているアイテムをあえて並べ立てるならば、スカーフ、ソックス、ブレイシーズ、そして、ハンカチをあげる。

例えば、外食の際に膝の上にかけるだけで服を汚れからカバーしてくれる。バンダナサイズのものは、女性のスタイリングの際にフェイスカバーとして用いている(もちろんポケットからではなく、それ専用に別途用意しているので女性の方どうかご安心を)。さらに掘り下げると、基本的に自分にだけしか柄や模様がわからないというのもたまらない。オーダーに精通された方などは、シャツの共布でハンカチも作り一人ほくそ笑む訳だ。このような理由からハンカチを携帯していないと不安になる。落ち着かないのだ。しかしながら、またよく忘れる。ゆえに買う。忘れる。買う。このサイクルでハンカチが増えていく次第である。

ハンカチを持つまではいいのだが、アイロンをかけ忘れると一体何日同じものを使っているのだろうと他者が不安に駆られるので、人前で広げるとき、人に差し出すときには要注意である。

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写真は師から送られて来たポーツマスの景色だ。ドラマチックな雰囲気が好みで掲載させていただいた。数ヶ月におきに渡英しているのがうらやましい限りである。

Photo by 澤田 雄二
Text by Shogo Hesaka

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部坂 尚吾

部坂 尚吾

1985年山口県宇部市生まれ、広島県東広島市育ち。松竹京都撮影所、テレビ朝日にて番組制作に携わった後、2011年よりスタイリストとして活動を始める。2015年江東衣裳を設立。映画、CM、雑誌、俳優・タレント・文化人のスタイリングを主に担い、各種媒体の企画、製作、ディレクション、執筆等も行っている。山下達郎と読売ジャイアンツの熱狂的なファン。
江東衣裳
http://www.koto-clothing.com

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