2016.11.24

ブリティッシュ“ライク” vol.15  ウディ・アレンの並行世界

先日、ウディ・アレンが監督した「マッチポイント」という映画を観た。ロンドンを舞台にした、上流階級の人間たちの色恋沙汰にフォーカスした作品である。元プロテニス選手である主人公は、引退後にテニススクールのコーチとして職を得て、そこで出会った御曹司との縁をきっかけに彼の妹と結婚。義父の会社で要職に就き、晴れてアッパークラスの仲間入りを果たすという内容である。題名が物語の本筋を見事に描いており、鑑賞後に納得させられる作品である。

クラシック音楽や映画を嗜み、オペラはボックス席で鑑賞。週末やバカンスには、オフショアやカントリーで狩猟を楽しむ有閑な上流階級の生活様式が描写されている。一方、貴族的な趣味嗜好とは対照的に、彼らの服装はいたってノーマルだ。オンオフ問わず全体的にスーツ、ないしはジャケットにトラウザーズスタイルが多く、狩猟の際に揃ってタッターソールのシャツを着用していたことが特長らしい特長だ。そういえば、劇中にてユニークなタイの使い方が登場するシーンがある。それは結び方や素材と言った類の内容ではない。野暮なため、文章で書くのも恥ずかしいが、タイにはこんな使い方もあるのかと注目して見て欲しい。そして、そのときが来れば、部坂が言いたかったのはこのことかと、ほくそ笑んでいただけるに違いない。

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「それでも恋するバルセロナ」、「恋のロンドン狂想曲」、「ミッドナイト・イン・パリ」、「ローマでアモーレ」などの都市を題材に扱った作品には、ウディ・アレンというフィルターによって濾過された個性的な味が出ている。それは、国や町などのロケ地の選択、さらにはそこに集まる人間、パーソナリティの形成にまでも鋭く現れていて、見事に彼の世界観を助長している。あたかも現実のようで非現実な世界であり、彼の目にとまらなかったものは意図的に排除されているように感じてならない。同様な傾向は、vol.1でも紹介した小津安二郎やアキ・カウリスマキなどの作品にも多々見受けられる。実際、「ミッドナイト・イン・パリ」の世界に魅せられた僕は、ウディ・アレンの世界を肌で感じるため、ロケ地巡りに数日間せいを出したほどだ。これについては山ほど書きたいところであるが、残念ながら“BRITISH MADE”から逸れてしまうので、また別の機会で披露したい。
さて、この記事が配信されている頃には“BRITISH COLLECTORS MARKET”も無事に終了しているはずである。機会を見つけてこの催事の様子にも触れればと思っている。

Photo&Text by Shogo Hesaka

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部坂 尚吾

部坂 尚吾

1985年山口県宇部市生まれ、広島県東広島市育ち。松竹京都撮影所、テレビ朝日にて番組制作に携わった後、2011年よりスタイリストとして活動を始める。2015年江東衣裳を設立。映画、CM、雑誌、俳優・タレント・文化人のスタイリングを主に担い、各種媒体の企画、製作、ディレクション、執筆等も行っている。山下達郎と読売ジャイアンツの熱狂的なファン。
江東衣裳
http://www.koto-clothing.com

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