2017.02.23

ブリティッシュ“ライク” 名探偵が愛した帽子

vol.4で探偵小説について執筆したことがある。そこでは主題として扱うことはなかったが、英国というキーワードから連想する探偵は、やはりシャーロック・ホームズをおいて他にないだろう。僕自身は彼の作品とはさほど縁がなく、むしろエルキュール・ポアロ、フィリップ・マーロウ、エラリー・クインのシリーズを贔屓にしている。しかしながら、先日鑑賞した映画「Mr.ホームズ 名探偵最後の事件」はなかなか面白かった。
この作品の主人公であるシャーロック・ホームズは、なんと93歳の高齢だ。現役を退くきっかけとなったある事件にフォーカスし、最後の謎解きに取りかかる。話の内容はもとより興味深かったのは、彼とは水魚の交わりであるはずのアイテム、ディアストーカーやパイプを身につけていないことだ。サー・イアン・マッケラン演じるホームズは、「ディアストーカーをかぶったこともないし、パイプよりも葉巻の方が好みだ」と発言するシーンもある。メディアに誇張された自身のイメージに不満を漏らす、現実的な彼の言葉である。

ここで主題である帽子について取り上げたい。ホームズが劇中で多くかぶっていたのが、シルクハットやボウラーハットである。シルクハットの形状について説明は不要かもしれないが、ボウラーハットについては少し補足をしておきたい。ボウラーハットは、シルクハットに次ぐ正装用の帽子である。日本語では山高帽、米国ではダービーと呼ばれる(ちなみに、先述したディアストーカーの別名は彼の気持ちをよそに“ホームズ”である)。シルクハットの略式であるため、クラウンの形こそ違えど、ブリムが上に巻き上がったところはよく似ている。下の写真のように、フォーマルなブラックに対し、スポーティーなグレーやブラウンのカラーリングもある。そんな点にも注目しながら鑑賞いただけたら、また違った楽しみが見出せるのではないだろうか。

ホームズパンフレット ホームズパンフレット
最後に、帽子屋でまれに背筋が凍りつくような所作を見かけるが、帽子を持つ際は両手でブリムを持とう。間違ってもクラウンを片手でわしづかみにしたりしないことである。形状が崩れてしまうという理由は明白だ。それは、靴を手に取る際に、片手で持ったり、トウを触るのがマナー違反であることに似ている。つまり、人間でいう顔に当たる部分をベタベタ触っては無礼だし、何よりもその所作が美しくないからだ。

Photo&Text by Shogo Hesaka

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部坂 尚吾

部坂 尚吾

1985年山口県宇部市生まれ、広島県東広島市育ち。松竹京都撮影所、テレビ朝日にて番組制作に携わった後、2011年よりスタイリストとして活動を始める。2015年江東衣裳を設立。映画、CM、雑誌、俳優・タレント・文化人のスタイリングを主に担い、各種媒体の企画、製作、ディレクション、執筆等も行っている。山下達郎と読売ジャイアンツの熱狂的なファン。
江東衣裳
http://www.koto-clothing.com

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