2016.02.03

今年のホリデーはどこに行く?

毎年2月になると英国で食べたくなるのはモンクフィッシュ(monk fish)です。「お坊さんの魚」ですから、何のことだか判りにくいですね。アングラー・フィッシュとかエンジェル・シャークとも言います。命名の理由は、修道士の服装や天使の翼に似ているからという説がありますが、当方にはピンと来ません。

20160203_main1この姿から天使(Angel Shark)や牧師さん(Monk Fish)を想像し、ネーミングした英国人のセンスは今でも不可解です。醜いものにも愛着を示す心の余裕でしょうか。
20160203_main2大きなアンコウから取れる白身部分は、これが一匹から採られる半分の量。他の多くの部分を捨ててしまうそうです。日本のアンコウ鍋屋さんが聞いたら激怒しそうです。

ともあれ、日本語ではアンコウのこと。英人は魚の白身部分しか食べずに、胆(アンキモ)の部分などを捨ててしまうのです。店先でさばくのを見ていて、ああ、もったいない(What a waste! it should not be.)と言うと、魚屋さんがアンキモをタダでくれたことがあります。やり取りを見ていた他のお客さんに「うぇぇぇ、気味悪い」と言われたので、You`ll never know unless you try. It is much better taste than foie gras. (試さないで何も判らんでしょ。つまり、僕はこの美味さを知っているんだ。フォアグラより旨いんだぜ)と微笑みながらJapanese Gourmetを決め込みました。英国で和食を食べたければ、自分で作るかロンドンで高額な和食レストランに行くしかないので、在英邦人にとって、魚料理は必須テクノロジーなのです。笑

20160203_main3借り物画像ですが、アンコウの白身は塩コショウでグリルするのが最も美味と言われています。アンコウの肉自体がけっこう高めですが、試す価値はあるかもしれません。

さて、話替わって、今回の話題はやや時期遅れかもしれません。なぜなら、英国人はクリスマス休暇の間に一年間の予定を立てるからです。まず、来年の抱負(new year`s resolution)を考え、且つ自分自身に誓うのです。その影響かどうか、1月のスポーツジムには年間契約の申込み者が殺到します。

そして、1月2日から通い始めるので、年明けのジムはやや重たそうな人たちでいっぱいになり、マシンはフル稼働です。クリスマス時期に食べ過ぎたロースト、飲み過ぎたワインやビールをどうにか代謝しようと真っ赤な顔をして、身体に無理強いしています。結果、筋肉を傷めたり、血液や血圧の問題が発覚して、整体マッサージや医者に通い始めては安静を命じられ、ジムへの脚が遠のきます。

20160203_main4スポーツジムには、適度な人数が居てくれると「さあ、やろう」というモチベーションにも、励みにもなります。「2月に太目のヒトが居なくなるのは、1月中に効果が出たからです」と言うジムのインストラクターに、「じゃあ、人が減ったのは皆縮んで見えなくなったのかもね」と切り返すと、渋い顔をしながら笑っていました。当方の英国式ジョークも洗練されて来たでしょうか。

さらに、中旬あたり(週一だと3回目。つまり、3日坊主)から、ジムでトレーニングする人たちの数は減り続け、2月にはクリスマス前の常連さんたちの顔だけが残り、マシンの取り合いになることも無くなります。つまり、2月は無理な抱負を設定しようとした自分自身を見つめ直す時期でもあるということでしょうか。(笑)  この現象は日本でも同じですかね。

日本と異なるのは、クリスマス時期に一年の旅行スケジュールを考えること。最近の日本の皆さまの中にも考える時期は年末年始かもしれませんが、英国ではかなり昔からの家族の習慣になっています。当方の場合30年前に英国に親戚が出来たころから、クリスマスの家族の話題は「来年の抱負」と「来年の旅行の話」です。

20160203_main5英国の景勝地巡りも旅行計画のひとつですね。英国人の旅行先は海外も多いですが、皆様には英国の景勝地をお見せしたいと思います。ここはロンドンのTeddington Lock近辺です。干潮河川なので時間帯によってはこの滝は消え、景色がまったく変わります。旅行テーマの一つとして、ロック(運河の閘門)巡りも面白いかと。

英国人の旅行の機会は、イースター休暇(2016年は3月27日~4月2日)、5月のバンクホリデー、そして7,8月になります。90年代のことですが、ロンドンの日系企業に勤めていた頃、日本から1年間の予定で来ていた20代後半の研修生が「英国人の上司が明日から長期休暇を取っちゃうんですよ」と困り顔で話し掛けてきたのを聞いて、当方は心の中でほくそ笑みながら答えました。「悪い。俺もイギリス化しちゃってるんだ。明後日から2週間の休暇なんだ。それにね、英国やヨーロッパでは2週間の休みは普通で、長期休暇とは言わないんだよ」すると、研修生は驚愕の表情を見せて、「羨まし過ぎる~」と半ば泣き崩れていました。

20160203_main6こちらも英国政府観光庁からの借り物の画像です。場所はスノードニア。当方も行ったことがあるのですが、適当な画像が残っていませんでした。昨年末、ガーディアン紙では2016年に行くべき世界の観光地20選のうち6箇所を英国から選んでいました。スノードニアはそのひとつ。日本も含まれていましたが、紹介の仕方がJAPANと書かれていて、内容は北海道新幹線でした。

しかし、英国には日本のような国民の休日は少ないうえに、当方はお客様が遊びに行く時期にこそ忙しくなる産業に従事しておりましたので、一年間を振り返ってみると、日本に居る時以上に長く、且つ絶え間なく働かざるを得ないこともありました。つまり、英国では有給休暇を与えられていても、自分の責任で消化しなければ、休み損ねてしまうこともあるのです。翌年に繰り越せる有給休暇にも制限がありますから、休暇について年の初めに家族や親類と語り合うことは英国では一大事なのですね。

ただ、思い出してみると、英人の同僚たちの殆どが、どういう言葉の技を使ったのかは人様々でしたが、有給休暇以上の日数を旅行や私用に費やしていました。自分の時間を作る技と言うか、彼等の知恵と言うか、狡さと言うか、仕事は単に人生の一部であり、人生を楽しむことを最優先するための工夫であったのだろうと思います。日英文化で育った当方の子らにも、皆が休む時はしっかり休んで、家族と一緒に人生を楽しむようにとアドバイスしたら、「お父さんは変わらないね。僕らに勉強しろと言ったこともないし、いつも僕らと遊んでいたよ」と言われてしまいました。日本人としては単なる怠け者にしか聞こえませんが…。


Text&Photo by M.Kinoshita

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マック 木下

マック木下

ロンドンを拠点にするライター。96年に在英企業の課長職を辞し、子育てのために「主夫」に転身し、イクメン生活に突入。英人妻の仕事を優先して世界各国に転住しながら明るいオタク系執筆生活。趣味は創作料理とスポーツ(プレイと観戦)。ややマニアックな歴史家でもあり「駐日英国大使館の歴史」と「ロンドン の歴史散歩」などが得意分野。主な寄稿先は「英国政府観光庁刊ブログBritain Park(筆名はブリ吉)」など英国の産品や文化の紹介誌。

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