2016.04.20

Little Tales of British Life “What is your culture?” 英人ビジネスマンのイライラ

英国の冬の料理は食物繊維が足りないなあ、と思いますが、その食物繊維を補うのはなんと、食後のデザートなのですね。特にクランブルは作り方次第で大量のシリアルやオーツを使うので、ちゃんと噛まないで食べるとお腹が張るほどです。さらに、そのクランブルの中身ですが、春先から出回る人気食材がルバーブです。茎の部分を食べるので、一見日本の蕗(ふき)のように見えますが、熟してくるとピンクや赤に染まって来るので、畑で見るだけで食欲が湧く人も多いようです。

20160420_main1春の始まる頃、今年最後の収穫となるのは冬作物のターニップとパースニップなどの根菜類。一方、春の作物は茎ブロコッリー、リーキ(ネギ)、そして赤い茎は蕗(ふき)ではなく、ルバーブです。

20160420_main2相変わらず、撮影技術がお粗末で申し訳ありません。おまけに煮込んだルバーブが原型をとどめていないベリーのケーキです。クランチ―なシリアルも含まれているので、食後のデザートは少々お腹に応えます。

30年以上前の話ですが、最初の駐在で日本に住み始めたばかりの、当方と知り合う前の拙妻(英人)は、八百屋で蕗(ふき)を見掛けて、ルバーブ・クランブルに挑戦しました。しかし、いつまで煮込んでも柔らかくならず、酸味も出ず、妙なニオイが台所に充満する緑の色の植物が、やがてルバーブではないと気付き、相当落胆したとのことです。蕗もルバーブも多年草ですし、ハウス栽培も早くから出回るのですが、盛りとなるのは同じ春先なのですね。ちょうど今時分だと思います。

20160420_main3Allotmentと呼ばれる貸し菜園。英国で、この緑の光景が見られるのも間もなく。ルバーブは赤い茎を恥ずかしそうに魅せています。

この時期、旬の食材というわけではありませんが、当方は春からの新しいプロジェクトに外注コンサルとして駆り出される機会が増えます。たぶん、年内予算が決まるとすぐに実行に移す企業のお客さんが多いからでしょう。

コンサルの仕事の関係で、異業種間でも相互に利益関係があると、複数の企業のビジネスマンと一緒に会議に参加することがあります。日系企業と海外の企業が参加する場合、会議の冒頭で交わされる筆頭のフレーズとしてWhat is your culture? と聞かれることがあります。

直訳すると「あなたの文化は何ですか?」ですが、その実、「文化」では意味が汲み取りきれないわけです。言葉の塊(かたまり)として見た場合、cultureと文化とではその形が異質であると言えます。

「耕す」を意味するcultivateが語源ですが、culture自体は栽培や養殖を意味します。土(土壌、土地)や肥料や天候や時期(季節)は材料であり、動植物を育成するにはカルチャーを要するわけです。知識として首尾よく育てば「成果」になり、失敗すればなんらかの「結果」として終わってしまいます。しかし、どんな結果でもその事実から何かを学び取れば、結果は新たな知識となり、次のチャンスで「知識から運用に至る行為」、つまり教養として残るわけです。少々乱暴な定義ですが、当方に言わせると、教養とは「知識を運用すること」になります。教養を英訳するとまさにCultureになるわけで、学校教育を終えても学ぶ人を英国では、知識人(インテリ)ではなくて、知識を運用する教養人(a man of culture)として尊敬されるのです。

20160420_main4遠目には絶景ですが、ビジネスマンにとっては戦場のシティ。当方が商社マンだった頃に高層ビルはありませんでしたが、当時はシティの中に入るだけで気が引き締まりました。

英国でビジネスをする場合、最も大事なことのひとつは「コンセプトの共有」と言われています。目標とコンセプト(なぜそれ(目的)をするか)がしっかりしていて、スタッフ全員がそれらを正確に理解していたら、ビジネスは上手く行きます。指揮系統を担当する者は全員が共有するコンセプトの理解度と仕事の進捗状況を確認しながら、目標や目的を達成するため、象られたコンセプトの範囲内で、それぞれのスタッフにそれぞれのミッション(使命)やタスク(課題)を自由に遂行して貰うことで、結果的に目標や目的に達せられるということです。

20160420_main5普段はシティで働く企業戦士たち。この日は内輪の結婚式でしたが、同じテーブルで向かい合った当方と彼らとで交わした話題は、彼らの働く日系企業の社内カルチャー。“ Why Japanese People…?” と、普段は日本人の同僚に聞けないようなことを、彼らが幼い頃から知る当方にズバズバとダイレクトな質問をしていました。当方の回答に彼らは充分に満足してくれたようです。

もちろん、実際はここで言うほど簡単なことではありません。しかし、このコンセプトさえしっかりしていれば、英国人は見事に働いてくれることは当方も相当経験していますので、ひとつのプロジェクトが複数の企業に利益関係が跨っていても、各社が目標とコンセプトをしっかり共有できていれば、事はかなりスムーズに運ぶのが英国式ということです。

ただ、日系企業の場合は、このコンセプトの共有が上手く行っていないために、責任範囲も不明瞭となり、判断基準もはっきりしなくなるので、苛立つ英国人が「what is your culture?」とミーティングの途中で議論を始めることがあります。この英国人の想いを受け容れられないと、「責任を取るトップと、コンセプトの存在しない企業では働けない」と言って辞めてしまった英国人も何人か思い出します。

20160420_main6The Shardの出現によって、12の小路が消滅しました。そこには当方の行きつけのDIYショップもあったので、少々残念でした。シティのど真ん中にDIYがあるのは、オカシイですかね?でも、シティのチープサイドにはまだ数軒残っています。ロンドンのビジネスマンたちは、「帰宅したら棚の修理をしよう」など、父親や夫として家族には別の顔を見せる準備を普段から心掛けているのですね。

それでも、日本企業は独特の経営手法で成長を遂げて来た実績がありますから、なかなか英国式との理解の差が埋まらなかったという経緯もあります。ここで言いたいのはどちらかの良し悪しということではなくて、日本のビジネスマインドを知っていても、英国のビジネスマインドを知らないと、同じ土俵に立てないので、話も深まらないということです。

以前、コモンセンスのを綴りましたが、今回はコモンセンスの上を行くアカデミックなレベルであるカルチャーの話でした。英国人を理解する上でのご参考になれば幸いです。


Text&Photo by M.Kinoshita

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マック 木下

マック木下

ロンドンを拠点にするライター。96年に在英企業の課長職を辞し、子育てのために「主夫」に転身し、イクメン生活に突入。英人妻の仕事を優先して世界各国に転住しながら明るいオタク系執筆生活。趣味は創作料理とスポーツ(プレイと観戦)。ややマニアックな歴史家でもあり「駐日英国大使館の歴史」と「ロンドン の歴史散歩」などが得意分野。主な寄稿先は「英国政府観光庁刊ブログBritain Park(筆名はブリ吉)」など英国の産品や文化の紹介誌。

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