2016.01.22

ブリティッシュ“ライク” vol.5 品位溢れるアンソニー・ホプキンス

ローレンス・オリヴィエの舞台の代役として注目を浴び、31歳で映画に活躍の場を移して以来、欠かせない存在となっている名優アンソニー・ホプキンス。服装と精神を調和させる術を持ってして見るものを魅了する。

医者、給仕、マジシャン、コンサルタント、レーサー、数学者、CIA…どんな役でも違和感がなく、長年その職業に従事しているかのような人物を演じる傍ら、どの作品でも彼らしさは失わず、独自性を保っている。

アンソニー・ホプキンスは、“演技は引き算の感覚で余分なものを削ぎ落とし、すっきりとやるだけだ”と映画のメイキングでも口述している。これはスーツの世界でもよく引用される表現で、僕自身も念頭に置いている考え方である。その概念は演技だけに留まらず、彼の装いや立ち居振る舞いにも一致する。これまでに彼が出演した作品はほぼ見ているが、服装はいたってシンプルだ。それはスーツスタイルになるとより顕著になる。シングルブレステッドが主で、色は黒か濃紺が多い。Vゾーンはかなりスッキリしていて、ミ二マルの極みのような装いである。帽子を巧みに取り入れているのも特徴だ。

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先述した無駄を削ぎ落とした服装に加え、会話のテンポや速度もゆっくりして荘厳だ。会話に絶妙な間を持っていて、ジェスチャーや仕草も細かい。こういった部分を巧みに混ぜ合わせて完成させたのが、アンソニー・ホプキンスの代表作として名高い、映画「羊たちの沈黙」、「ハンニバル」のレクター博士ではないだろうか。

今回紹介したいのは、アンソニー・ホプキンス主演の「チャーリング・クロス街84番地」という作品だ。

この作品においても、彼の人柄を現した服装や発言が見受けられる。内容について言及は控えるが、ロンドンとニューヨークという距離がありながら、一度も会ったことのない女性を文章と想像力だけで惹きつけるというのは並々ならぬことだ。ひっそりと力添えするジョージ・フェントンの音楽も秀でている。

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ここまで紹介してきたアンソニー・ホプキンスは、非の打ち所がない人物を想像させるが、あえて弱みをあげるならば走り方だろうか。とりわけアクション映画「9デイズ」で見せたような全力疾走。もちろん年齢(現在78歳)を考えると致し方ないが、ドタバタ走る姿はとにかくラブリーだ。迫真に迫る場面でもついニヤけてしまうのでこちらも是非ご覧いただきたい。

Text&Photo by Shogo Hesaka

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部坂 尚吾

部坂 尚吾

1985年山口県宇部市生まれ、広島県東広島市育ち。松竹京都撮影所、テレビ朝日にて番組制作に携わった後、2011年よりスタイリストとして活動を始める。2015年江東衣裳を設立。映画、CM、雑誌、俳優・タレント・文化人のスタイリングを主に担い、各種媒体の企画、製作、ディレクション、執筆等も行っている。山下達郎と読売ジャイアンツの熱狂的なファン。
江東衣裳
http://www.koto-clothing.com

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