2017.05.25

ブリティッシュ“ライク” 跳梁跋扈のギャングスター

スーツはグレイのモヘアで最高級のイタリア製の完璧な仕立て、シャツは白、ルビーのカフスボタン、薄くて美しい時計は純金製、イタリア製の手縫いの靴、シルクの靴下…上品でスキのないダンディぶり、これこそ本物の男だ、俺は うっとりした。

これは、イギリス映画「ギャングスター・ナンバーワン」の主人公である、“若きギャングスター”(作品の中で明確な名前はないためこう呼称されている)の台詞だ。舞台は1968年のロンドン、“メイフェアの惨殺者”として君臨するギャング、フレディ・メイズに招かれ、彼の配下となった若きギャングスター。フレディの持つ、富、名声、立ち居振る舞いに憧れを抱くが、次第にそれは妬みや嫉みに変わり、しまいには憎しみに変化していく様子が生々しく描かれている。フレディを陥れ、念願の王座を手にしたギャングスターは、栄華を極めていくのだが、彼の幻影に悩まされていく。

実際、フレディの佇まいと、ギャングスターのそれは大きく異なっている。冒頭で述べた、うっとりするようなエレガントさは残念ながらギャングスターからは醸されていない。フレディの仕草や動きは悠然としていて気品に満ち溢れているのに対して、ギャングスターはせっかちで優雅さは感じられない。冒頭のシーンにて、ジャケットのボタンを丁寧に外し、ゆっくりとソファーへ着席するフレディの姿はその際たる例だ。

最終的に、フレディと同じくイタリア製の高級スーツに身を包み、手縫いの革靴を履き、彼以上の富を築きながらも、まったく対極の印象を与えてしまうギャングスターの様子から学ぶべきことは多い。つまりは、人間の品性や素行というのは服だけではごまかせないものである。この作品は、過度な暴力描写が多々あるゆえにそちらに目を奪われがちだ。しかし、野心や欲に取り憑かれ、精神が粗野なまま年を重ねていくギャングスターの背中に、僕自身の将来を重ね冷や汗をかく内容だった…

20170525_hesaka_02 The Chelsea Drugstore in west London
老年のギャングスターを演じているのはマルコム・マクダウェル。スタンリー・キューブリックの名作「時計じかけのオレンジ」でアレックスを怪演しているイギリス人俳優である。恐れ多いが、僕はこの映画がとにかく苦手だ。学生時分に鑑賞したがまったくもって受け付けなかった。それが災いしてか、スタンリー・キューブリックの作品は今に至るまでほとんど敬遠している。油を売ってしまったが、「ギャングスター・ナンバーワン」においても、猟奇的な演技で魅せるマルコム・マクダウェルの存在感は抜群だ。本作以外にも、リンゼイ・アンダーソンやケン・ローチなど、英国を代表する巨匠の作品に出演しているので、興味を持っていただけたら是非ともご覧いただきたい。
20170525_hesaka_01 Malcolm McDowell as Alex DeLarge in Stanley Kubrick’s 1971 film A Clockwork Orange.

Text by Shogo Hesaka

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部坂 尚吾

部坂 尚吾

1985年山口県宇部市生まれ、広島県東広島市育ち。松竹京都撮影所、テレビ朝日にて番組制作に携わった後、2011年よりスタイリストとして活動を始める。2015年江東衣裳を設立。映画、CM、雑誌、俳優・タレント・文化人のスタイリングを主に担い、各種媒体の企画、製作、ディレクション、執筆等も行っている。山下達郎と読売ジャイアンツの熱狂的なファン。
江東衣裳
http://www.koto-clothing.com

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