2017.12.23

My Favorite Journals イギリス伝統菓子店『Lazy Daisy Bakery』店主 中山真由美氏に訊く、こだわりの逸品

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東京・文京区湯島の小さな路地にはためくイギリス国旗が目印。ここにある「Lazy Daisy Bakery」は、店主の中山真由美さんがイギリスの家庭で伝統的に作られていたお菓子を作る、近頃話題の伝統菓子店だ。2016年にオープンしたばかりながら、遠方からはるばる訪れる人のほか、近所のおじさんが「なにか1つちょうだい」と気軽に訪れるような気取らない雰囲気が漂う。イギリス伝統菓子の魅力のほか、中山さんの仕事観、こだわりの道具や愛用品についてもお話を伺った。

自然の恵みに感謝して作る、季節と旬を感じる絶品イギリス伝統菓子。

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お店には常時15〜6種のケーキが並ぶ。もちろん、季節のフルーツの熟れ具合やスパイスに応じて、同じメニューでも月を経ると味が変わるメニューもあるとか。
左の白×ブラウンのケーキから時計回りに ブルーベリーとレモンのケーキ 480円、ヴィクトリアスポンジ 450円、ブラムリーのトフィーアップルケーキ 520円、ブラムリーのスパイシーアップルケーキ 520円、ドライフルーツのスパイシーケーキ 580円、ジンジャーブラウニーケーキ 480円。
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11月5日は、街中で花火が上がるイギリスの有名なお祭り「ガイ・フォークスの日」。その祭りの日のお菓子であるパーキン(500円)は、ジンジャーブレッドの仲間。食べると体がポカポカに。
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日本で一般的なりんごに比べると扁平で青いりんご「ブラムリー」を使った、ブラムリーが採れる時期まで限定のジャム。ブラムリーとジンジャー 1,080円

イギリスの店で感じた、お菓子と人へのたっぷりの愛情とこだわりを日本でも。

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「きちんとお客さんと話しながら、お菓子を選んでもらいたくて」と、スタッフは雇わず、中山さん自身が菓子を焼きながら丁寧に接客を行う様子が印象的。常連さんや初めての人にも等しく、イギリス伝統菓子の扉を開いてくれる。ケーキの味を尋ねると「このケーキは、ハマる人続出ですよ!」「これはスパイスが効いていて、こちらは同じ素材でもスパイスを使っていないケーキ。お好みで選んでみて」など、中山さんの愛情たっぷりの“キャッチコピー”が続々と。結局、買いたいケーキがどんどん増えてしまう…。

こだわりの仕事道具も、「メイド・イン・イングランド」がそこかしこに。

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「お菓子の勉強は、すべてのお菓子の基本と思ってフランス菓子を学びましたが、道具はイギリスのもの、その他のものが半々です。イギリスでホームステイしていた先のお母さんが使っていたスクイーザーが本当に使いやすくて、もう他のものは使えないな、と思うぐらい。これからもずっと使い続けるでしょうね」と中山さん。日本では珍しい、スティックタイプのウッドスクイーザー。他のイギリス製の製菓道具も木製で、永く愛用できそうなシンプルさと言うよりは“素朴”と言ってもいいぐらいのデザインの中にも、使い心地や便利さが洗練された実力派ばかり。
ほかにも、お店には、パイ型などのアンティークの製菓機材やブリキの小物など、お気に入りのものを長く大切にするという中山さんのパーソナリティが伺えるピースが数多く見られる。「イギリスの手しごとの品は、どれも実力派。本当に使ってみて、工夫の細やかさを感じるものばかりです。イギリスというと、ご飯が美味しくないというイメージを持つ方もいるかもしれませんが、実は最近では、若い世代も昔から伝わるレシピの価値を見直そうという動きがあって、どんどん進化しています。ぜひそんなイギリスの質実剛健さに触れてみてほしいですね」

履いてハマったChurch’sのシューズはずらり、7足ものコレクションに。

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Church’sはその履きやすさに感動して以来、サンダルなども含めて愛用中。「3年ほど前に初めてこの黒のダブルモンクストラップシューズを履いて、びっくりでした。革靴というのは、履き始めには固くて靴ずれするのは当たり前と思っていましたが、Church’sを初めて履いたときはそれが全くなくて。以来、どんどん増えて7足に。履き心地がこれまで履いた革靴よりも断然いい! どれもお気に入りなので、毎日同じものを履かないようにして7足とも大切に使い続けていくつもりです」と中山さん。

過去の仕事も、今のお店もイギリスに「呼ばれている」かのように、辿り着いた。

よく、お店をオープンして「夢を叶えたんですね」と言われることが多いのですが、実は何がなんでもお店を作る! ということではなくて、流れに乗って作ってしまった…というのが正直なところ(笑)。お店の場所選びも、元々はイギリスで出会ったお店のように、路地を曲がったところにある小さなサイズのところを…と探したときに、事務所貸しをしていたこの場所の大家さんに「実はこういうことをしたくて…」と話してみたんです。そうしたら、オーケーが出て…と、ここに至るまで、不思議なご縁で叶ってきた側面がありますね。

導かれるようにオープンまで行き着いた「Lazy Daisy Bakery」。それはただの偶然ではなく、自然体でありながら大切に思うことには真摯に向き合い、常にユーモアを大切にする中山さんの姿勢が、イギリスの伝統の良い部分と必然的にリンクしたのだろう。中山さんの愛情たっぷりなお菓子の話を伺いに、私もまた足繁く通ってしまいそうだ。

中山真由美さん
イギリス菓子店 店主
アンティークディーラーだった約10年間、買い付けでイギリス各地を巡るうちに、イギリスとイギリス菓子の魅力に引き込まれ、以来イギリスに魅せられ続けている。
自身の経営するお店では、伝統菓子から新しいお菓子まで季節の果物やスパイスなどを使った、幅広いジャンルのお菓子を製造&販売。
2016年11月に「Lazy Daisy Bakery」をオープン。
https://www.facebook.com/lazydaisybakery/


Photograph : Kenji Yamada
Text : Kaoru Tateishi


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