2016.09.15

English Garden Diary 今、イギリスで最も注目のガーデン「ハウザー&ワース・サマセット」

数えきれないほど多くの著名なガーデンが存在するイギリスで、このところ最も注目を集めているひとつを訪ねてきました。それは、イングランド南西部のサマセットにある「ハウザー&ワース・サマセット(Hauser & Wirth Somerset)」のガーデンです。
20160915_HW4 草と花のバランスが絶妙のデザイン
ハウザー&ワースはチューリッヒに本店、ロンドンやニューヨーク、ロサンゼルスに支店をもつ世界的に著名なギャラリー。そのギャラリーが、サマセットにあった18世紀の農場をコンテンポラリーアートの展示を中心とするアート施設へと改装、2014年にオープンしました。
20160915_HW16 ハウザー&ワース・サマセット
その全体のランドスケープ・デザインを手がけたのが、現代で最も影響力のあるガーデン・デザイナーのひとりと言われるピート・アウドルフ(Piet Oudolf)氏です。オランダ出身のピート氏はニューヨークの空中庭園「ハイライン」のプロジェクトで世界にその名が知れ渡りました。イギリス内でもイギリス王立園芸協会の「ウィズリー・ガーデン」や、2011年の「サーペンタインギャラリー・パビリオン」内のガーデンをはじめとして、多くのデザインが知られています。

「アウドルフ・フィールド(Oudolf Field)」。同年9月14日にギャラリーの建物の後にお目見えしたガーデンにつけられた名前です。「Garden」ではなく「Field」。そう、この庭は野趣にあふれ、「オーナメンタル・グラス」と呼ばれる細長いラインの草が印象的な、野原のような庭なのです。ギャラリーの売店で購入できる「Oudolf Field」のブックレットでは「多年草のメドウ」と表現されているように、ここでは「野の花」とよびたくなるような花たち、そして草たちが見事な野原を作り出しているのです。その数はなんと2万6000株。

20160915_hw8 華やかなバラ園などとはまったく異なる風景が平がるガーデンです
庭全体は17のセクションに分かれていて、その間の小道は直線ではなく、ゆるやかなカーブを描いています。そのため、道を曲がるたびに目の前に別の景色が広がり、そのつど、各植物のテクスチュアーと形、そして色にはっとさせられます。
20160915_HW12-copy 中央奥の白い建物はSmiljan Radicによる2014年のサーペタインギャラリー夏季限定パビリオンだったもの
ガーデンを訪ねたのは8月後半でしたが、イギリスの気候ゆえか日本では秋の花とされるワレモコウや秋明菊もすでに咲き揃っていました。そのせいか日本人の私にはどこか馴染みのある風景のように感じる部分があったのは、楽しい驚きでした。
20160915_HW6_r
ふわふわと揺れる草の穂の奥に濃いピンクの花がアクセントをつけているかと思えば、一方のセクションではクリーム色がかった白とモーヴ色のなんとも穏やかな組み合わせがあったり。また、花期が終わって枯れて茶色くなった花さえもしっかりとデザインの重要なパートを占めているというのもよくわかります。
20160915_HW7 20160915_HW18
「冬に来た時には、皆枯れてしまっていて、何もなかったのよ。今が一番いい時期かもしれないわ。」と地元に住んでいて度々この庭を見に来るという女性が教えてくれました。

確かに秋のアウドルフ・フィールドは素晴らしいはずです。それが証拠に(?)人気のガーデン雑誌『Gardens Illustrated』の9月号で、この庭の特集が組まれていました。プロはもとよりアマチュア園芸家にとっても、この庭はたくさんのインスピレーションを得ることのできる、現代のイギリスガーデンを代表するひとつなのです。前述の女性は冬には何もなかった、と言っていましたが、実はピート氏のデザインは、草花が枯れてしまった冬の風景さえも計算に入れて植物が選ばれています。だから、できることなら秋に限らず、四季折々に訪れて、その季節ごとの景色を味わってみたいものです。
20160915_HW11-copy 背景に見える丘や木々も計算してデザインがされています
なお、ハウザー&ワース・サマセットは庭だけでなく、ギャラリーの展示も興味深いものが多く、また地元の素材を使った料理が人気で遠方からも多くの人が訪れてくるレストラン「Roth Bar & Grill」もおすすめです。
20160915_HW2 ギャラリーに併設のレストランでは、キッチン・ガーデンで育てられた野菜が料理に使われています
(Piet Oudolf氏の名前について、日本では「オウドルフ」「ウードルフ」等の表記もあるようですが、本稿では「アウドルフ」が発音に近いと考え、そう表記しています。)

*ピート・アウドルフ氏 ウェブサイト:http://oudolf.com/
*ハウザー&ワース・サマセット ウェブサイト:http://www.hauserwirthsomerset.com
Text&Photo by Mami McGuinness

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マクギネス真美

マクギネス真美

イギリス在住の編集&ライター。9年半の雑誌編集を経て「ちょっと長めのホリデー」のつもりで渡英。たくさんのあたたかな人たちとの出会いにより滞在が長期化し、現在に至る。 2004年よりイギリスを拠点に書籍・雑誌・新聞・インターネット等にて企画、編集、取材、執筆、コーディネイト、撮影を手がける。テーマはライフスタイル、ガーデニング、料理、人物インタビューや旅ガイドなど。メディアを問わず、イギリスの素敵なひと、場所、ものごとをひとりでも多くの方に伝えたいと考えている。『英国ニュースダイジェスト』ではイギリスの食に関するコラム「英国の口福を探して」を連載中。2012年以降、文化放送、NHKラジオ、TOKYO FM等のラジオ番組に出演も。
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