芝刈りはイギリスのガーデニング必須項目? | BRITISH MADE

English Garden Diary 芝刈りはイギリスのガーデニング必須項目?

2022.04.21

「ブォーン、ブォーン。」
イースターの前後になると、天気の良い週末の朝には、あちこちのご近所さんから、こんな音が聞こえてきます。

これは、芝刈り機で芝生を刈っているときの音。この音を聞くと、長かった冬が終わり、ようやく本格的な春がやってきたと感じられる、私にとってはうれしい騒音です。

イギリスに来たことのある方は、この国では公園や広場、個人宅の庭の芝生が冬でも青々としているのをご存知なのではないでしょうか?

私が最初にロンドンでホームステイをした家にも、バックガーデンと呼ばれる、家の裏側に細長く広がる庭には芝生が敷かれていました。冬になっても枯れないので、ランドレディー(大家さん)に
「イギリスの芝生は冬でも枯れないの?」と聞くと
「日本の芝生は枯れてしまうの?」とかえって聞き返されたのを覚えています。

日本でも北海道にはあるそうですが、イギリスの芝は「西洋芝」と呼ばれるものです。いくつかあるなかで、「ベント·グラス」「ライ·グラス」「ブルー·グラス」という種類が一般的です。

夏でも日本のような高温になるわけではなく、湿気も少ないイギリスの気候。また、よほどのことがなければ、晴天が続くということはなく、時折降る雨のおかげで、水やりをしなくても芝生に水分が十分補給されるため、この国では一年を通じて美しい緑のカーペットを見ることができるというわけです(といっても、近年は温暖化のせいもあってか、夏に雨が少ないときには、芝生が枯れかけているという状態が起こるようになっていますが)。

芝刈り機の登場は19世紀

イギリスの一般的な芝刈り機芝刈り機には様々な種類があるが、一般的なのがこのタイプ。最近は充電式コードレスも人気。
さて、この美しい芝生を維持するには、日頃のメンテナンスが必須となります。それが、件の「ブォーン、ブォーン。」という音が鳴り響く理由というわけです。この特徴的な音響を放つ芝刈り機。ガーデンに芝生のある家には、必ず常備されています。私がイギリスに初めて来たのは5月だったのですが、下宿しだして最初の日曜日に、大家さんが庭の隅にあるシェドと呼ばれる小さな物置小屋から芝刈り機を出して、それをまるで掃除機のようにあやつり、芝生を刈っている姿を見ました。私にとってはイギリス人が芝を刈る姿を初めて見た経験です。

イギリスで最初の芝刈り機が発明されたのは、1830年、グロスターシャー州のエンジニア、エドウィン・ビアード・バディングさんによってでした。錬鉄製で幅19cm、円筒の周りに刃を何枚も並べたリール式の芝刈り機は、重くてけっして使いやすいものというわけではなかったようですが、鎌を使ってすべて人力によって刈るのに比べたら、画期的な発明だったことは想像に難くありません。

19世紀後半には芝刈り機はとてもポピュラーになり、女性でも使える重量だと強調するために、芝刈り機メーカーは広告にこぞって女性モデルを採用したといいます。

イギリスの人々の芝へのこだわりとは

牛や羊の放牧も、芝刈りのひとつの方法。
芝刈りについて、イギリスの人々は相当のこだわりを持っています。

まず、冬の間はさておき、春から秋にかけては、こまめに芝刈りをして庭を整えておくことは必須です。「芝生がちょっと長くなってきたなと思うと、なんとなく隣家の目がきになってしまう。」とは、これまで何人もの人たちから聞きました。一軒の家から芝刈りの音が聞こえてくると、そのあとご近所からそれに続けとばかりに芝刈りの音が聞こえるのは、もしかしたら芝生メンテナンスについて、密かにご近所からのプレッシャーを感じている人が多いのかもしれません(!)。

また、「芝生はストライプ模様に刈る」というのは、イギリスにおける芝刈りにおいては基本中の基本。ふだんほとんどガーデニングをしない夫ですら、この教えを守っているほどです(必ずしも思い通りに綺麗にはいかないことも多いですが)。

忘れてはいけないのが、芝生エリアの縁の部分を綺麗に刈りそろえること。これは、以前、イギリスの有名ガーデンで働いていた日本人ガーデナーの方に教わったのですが、イギリスの園芸学校では、エッジ・シアーズという、専用のハサミを使って、芝生のエッジを美しく刈り整える、という授業があるそうです。

ほかにも、義父母から受け継いだ教えには、「冬が終わって、久しぶりに芝を刈る時には、一気に短く刈り込んではいけない。」というものもありました。これは、冬の寒さが芝生にストレスを与えるので、いきなり短かすぎるほどに刈り込むことは避けなければならないのだそうです。というのも、草の葉を長く残すことで、芝生の緑は光合成を行い、健康な状態を保つことができるからです。また、長い間刈り取らずにいた芝は、突然短く刈り取られることを嫌がり、その後の生育状態にも影響するのだとか。

芝刈り機でカーレース

エッジがきれいに刈り揃えられた芝生。
このようなイギリスの人々の、芝刈りそして芝刈り機への愛着(執着?)は、芝刈り機でのカーレース大会を開催するほどとなっています。

1973年にウェスト・サセックスのパブで、お金のかからないモータースポーツを生み出したいと考えていたアイルランド人のジム・ギャビンとその友人たちとで考え出されたのが、誰もが一家に一台もっている芝刈り機でのカーレース。莫大な経費がかかる現代のモータースポーツに異議を唱える彼らが生み出した芝刈り機レースは、「スポンサーをつけない、商業主義をとらない、賞金を出さない」という方針に基づき運営されて、利益は慈善団体や慈善事業に寄付されているというのがイギリスらしいところです。

その理念に惹かれるのか、あるいは芝刈り機レースがあまりにも魅力的だからか、このレースには多くの有名プロドライバーなども参加しています。

今年も5月から10月にかけて、イギリス各地でレースが行われる予定なので、興味のある方は、以下のウェブサイトで確認の上、でかけてみてください。

*The British Lawn Mower Racing Association https://www.blmra.co.uk/calendar/public

英国芝刈り機レース協会(The British Lawn Mower Racing Association)の成り立ちについては、こちらの動画をどうぞ。



Photo&Text by Mami McGuinness


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マクギネス真美

マクギネス真美

英国在住20年のライフコーチ、ライター。オンラインのコーチングセッションで、人生の転換期にある方が「本当に生きたい人生」を生きることを日本語でサポート。イギリスの暮らし、文化、食べ物などについて書籍、雑誌、ウェブマガジン等への寄稿、ラジオ番組への出演多数。
音声メディアVoicy「英国からの手紙『本当の自分で生きる ~ 明日はもっとやさしく、あたたかく』」にてイギリス情報発信中。

ロンドンで発行の情報誌『ニュースダイジェスト』にてコラム「英国の愛しきギャップを求めて」を連載中。

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