2016.07.28

ブリティッシュ“ライク” 恍惚たるデヴィッド・ニーヴン

最近とある撮影でディナージャケットを使用する機会に恵まれた。残念ながら結婚式やパーティー等でしか見る機会がなく、ましてや着用するとなると、よりいっそうその機会が乏しい。そこで、今回はそのディナージャケットをテーマに取り上げてみたい。

そもそも”ディナージャケット”といわれてピンとこない方が多いかもしれないが、広義でいうタキシードである。その呼称や由来について文字数を割くのはもったいないので、書籍などで確認していただきたい。個人的な嗜好だが、ショールカラーのタキシードよりも、ピークドラペルのディナージャケットの方が好きなので、あえてディナージャケットと呼んでいるに過ぎない。そして、このディナージャケットですぐに連想できた人物が、英国人俳優デヴィッド・ ニーヴンだったのである。

デヴィッド・ニーヴンは、ロンドン生まれ(スコットランド生まれと記された資料もある)の英国人で、瀟洒な髭とオールバック姿がトレンドマークの俳優だ。話し方や立ち居振る舞いに知性と品格を感じさせ、その魅力を活かした役所が実に多い役者である。米国にフレッド・アステアがいるならば、英国にはこのデヴィッド・ニーヴンがいるといっても過言ではない(実際には誰もそんなことをいっていないので、戯言だと思っていただきたい)。

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そんなデヴィッド・ニーヴンの恍惚たる姿が確かめられる作品あるので、いくつかここで紹介したい。まずは、100 億円以上の巨額の予算を投入して製作された大作「八十日間世界一周」だ。この作品は、1872 年ヴィクトリア朝のロンドンが舞台となっており、彼は規律を重んじる気高き英国人フォッグ氏を演じている。数多の優れたワードローブを披露してくれるが、なかでも総柄のガウンをまとった彼の初登場のシーンは圧巻である。加えて、ロンドン、スエズ、ボンベイ、カルカッタ、香港、サンフランシスコ、ニューヨークと世界の都市をまたにかけ、場面に応じたドレスコードを披露してくれているのも魅力的だ。日本の横濱もロケ地となっており、ユーモアと皮肉を交えて描かれているので、親近感も持てる作品である。

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次に紹介するのは、名作「ピンクの豹」だ。デヴィッド・ニーヴンは、チャールズ・リットン卿と、怪盗ファントムの表裏の顔を持つ役を演じている。この作品でも実に多くのドレスコードを披露しており、特になかなか見ることができないファンシータキシード姿を完全に着こなす姿には目を奪われる。忘れてはならないのが、この作品の衣裳はイヴ・サンローランが手がけており、デヴィッド・ニーヴンだけでなく、ピーター・セラーズ、クラウディア・カルディナーレ、キャプシーヌ等の豪華な面々の個性を引き出す魅力的な役割を果たしている。

“ブラックタイ”などあまり聞き慣れないワードを耳にすると、つい肩に力が入ってしまい、惰性でドレスコードを選んでしまうのは実にもったいない。一口にドレスコードといってもさまざまな種類やシチュエーションがある。知識を蓄え、それらの違いに目を凝らし、実際に経験してみることは案外楽しいものである。


Text & Photo by Shogo Hesaka

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部坂 尚吾

部坂 尚吾

1985年山口県宇部市生まれ、広島県東広島市育ち。松竹京都撮影所、テレビ朝日にて番組制作に携わった後、2011年よりスタイリストとして活動を始める。2015年江東衣裳を設立。映画、CM、雑誌、俳優・タレント・文化人のスタイリングを主に担い、各種媒体の企画、製作、ディレクション、執筆等も行っている。山下達郎と読売ジャイアンツの熱狂的なファン。
江東衣裳
http://www.koto-clothing.com

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