ジェフ・ベック新作記念。懐かしの“三大ギタリスト”とは? | BRITISH MADE

BM RECORDS TOKYOへようこそ ジェフ・ベック新作記念。懐かしの“三大ギタリスト”とは?

2016.07.14

ギターもファッションも三者三様

ジェフ・ベックが6年ぶりとなるオリジナルアルバム『ラウド・ヘイラー』を7/15にリリースします。このブログのアップ日の関係でまだ全曲きっちり聴き込めていないのだけれど、これ、なかなかの力作です。現在72歳のベックですが、アイディアもヘヴィなリフも出力も現役バリバリどころかキレキレです。というか、ちょっと怖いくらい(笑)。
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エレクトロ、ソウル、ファンク、ブルース、ロックなど様々なジャンルのファクターを感じさせるこのアルバム、一番のトピックは全11曲中9曲を歌うロージー・ボーンズという女性ヴォーカルと、カーメン・ヴァンデンヴァーグという女性ギタリストを招いている点です。
2000年代に入ってから女性ヴォーカル路線を続けているベックですが、今回はボーンズ(BONES)という、オルタナっ気のあるメタリックなサウンドを奏でるバンドを組んでいる女性コンビをセットでスカウトしています。それほど彼女たちのサウンドが気に入ったということなのでしょう。
そしてパッと見ですが、まあ、そもそもまずベックそのものがとても72歳には見えないのですが、ボーンズとヴァンデンヴァーグはベックよりはるかに若いようです。鋭敏なアンテナ、果敢なチャレンジ、オン・マイ・マイウェイなフットワーク。いやはや脱帽です。
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ベックのヴォーカルものというと、まず思い出すのはロッド・スチュワートとのタッグです。アルバム『トゥルース』(68年)、『ベック・オラ』(69年)は、名盤が数多いジェフ・ベック(・グループ)の初期の作品群です。
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でもこのグループ、メンバー事情は仲間割れや脱退(出戻り)などわちゃわちゃしていたようで、結局『ベック・オラ』の後にロッドとロン・ウッド(※現ローリング・ストーンズのウッディです。この当時はベースでした)は脱退。彼らが核となって生まれたのがフェイセスというバンドでした。この映像は近年の二人の共演です。
このブログで何度か書いてきましたが、60年代、ビートルズ以降に頭角を現したバンドやギタリストたちは、その多くがアメリカのブルースに感化された若者で、それをイギリス人としてイギリス流にどう咀嚼して自分のものにするかという実験と挑戦を繰り返していました。
そのなかから突出した才能を開花させたのが、ビートルズとは異なるフォームでブルースとロックンロールを追求したストーンズであり、ブルースとトラディショナルなフォークを追求してラウド&ヘヴィな様式美を確立したレッド・ツェッペリンといったバンドであり、ジェフ・ベックやエリック・クラプトンといった腕が自慢のギタリストたちでした。

日本のとある世代の音楽ファンには馴染み深い形容詞だと思いますが、かつてエリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ツェッペリンのジミー・ペイジを日本では“三大ギタリスト”と呼んでいました。
ウィキペディアによると、これは当時の日本の洋楽誌(というかシンコー・ミュージック)がそう括ったことで広がったようですね。この三人は同世代(1944-45年生まれ)で、当時それぞれ日本での人気が高く、なおかつザ・ヤードバーズという同じブルース・バンドの出身だったこともあって比較しやすかったようですね。
そうそう、ヤードバーズといえば、アントニオーニの映画「欲望」(1966年)にちらっとゲスト出演していました。ベック師匠、ギターぶっ壊す勢いでアンプにキレてます(笑)。
しかし思えばこの頃の日本人ってこういう括りでスターを盛り上げる流れを作るの、何だか好きでしたよね。ほら、三人娘とかBIG3とか御三家とか。

では、ここで三大ギタリストのファッションについてざっくりと触れてみます。

エリック・クラプトンについてはこのブログの第14回で書いているのでそちらを参照いただきたいのですが、60’s、サイケデリック、カントリーテイストを経て80〜90年代はジョルジオ・アルマーニのスーツがトレードマークでした。
90年代後半から2000年代は藤原ヒロシ氏と親交を持ち、裏原宿経由でスニーカーやアメカジを取り入れ、Gショックやナイキ、レッド・ウイングなどを身につけるなど、近年はだいぶカジュアルですね。
そしてツェッペリンのジミー・ペイジ。ペイジを象徴するファッションとくれば、まずは何と言ってもこのツェッペリン時代のドラゴンスーツでしょう。
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あとはナチのキャップを被ったこれとか。これ、クールっちゃクールなんですが、よく考えたら結構キワキワなファッションですね。
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ともあれ、私は基本ストーンズが好きなストーンズ原理主義者(笑)ですが、全盛期のツェッペリンとザ・フーのカッコよさには抗えません。もう、何もかもが尋常ではないのですよ。
最近はかの名曲「天国への階段(Stairway to Heaven)」に、何故かいまごろになって盗作の疑いが持ち上がり、ヴォーカルのロバート・プラントと出廷(結果は勝訴)するなんて騒ぎもありました。最近は白髪をまとめて縛って、レザージャケットやジャケット&パンツのセットアップというファッションのようです。
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昨年は44年ぶりの広島の原爆ドームや平和記念公園を訪問したペイジ、クラプトンやベックと違って、2000年代はブラック・クロウズとの共演やツェッペリンのリマスター監修があったぐらいで、目立ったオリジナル作品のリリースがありません。低い評価で語られがちなポール・ロジャーズとのバンド、ザ・ファームやソロ作「アウトライダー」(1988年)も個人的には結構好きだったので、ぜひとも新作を聴いてみたいものです。
そしてジェフ・ベック。この御方は三人のなかでも“孤高”という表現がよく用いられる通り、ギター・スタイルもファッションも趣味も、徹頭徹尾自己流を貫いています。
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まずベックで知られる代表的なスタイルがノー・スリーブ。これ、由来は知らないのですが(どなたかご存じでしたらぜひご教示を)ギターを弾くための機能性を重視した挙句、板について気に入っちゃったんでしょうか。別に彼はこれだけではなくて袖ありのシャツもたくさん着ているんですが、やっぱりこのノースリーブがインパクトとしては絶大なんですよねえ。 いまだ精悍な顔立ちとスタイルも素晴らしい。二の腕が引き締まっていないと、とてもじゃないがノースリーブなんて着られません。
彼のギター奏法はフレーズの発想がまずラジカルなのですが、おまけにピックを使わず、9割方をフィンガーピッキング、つまり指で爪弾いています。これによって彼独自のタッチが生まれるのです。そういえば、昔(ロッキング・オンだったかな)彼のギターの音色を“超合金”と形容していたテキストを読んだ覚えがあります。言い得て妙だなあと膝を打ったものです。
ちなみにベック師匠、大のカーマニアとしても知られており、クラシックカーからスポーツカー、ホットロッドといった改造車までマニア垂涎のコレクションを所有しているとか。ちなみにこんなアルバムジャケットもあったぐらい。師匠、ギターをジャッキアップしちゃっています(笑)。
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というわけで、今回はベックを入り口に、懐かしの“三大ギタリスト”縛りでお届けしました。 渋カジアメカジいぶし銀のクラプトン、ラフだけど必要最小限キレイ目なペイジ、変わらずシャープで若々しいベック、といったところでしょうか。
いずれにせよ三人ともいまだ元気に現役です。数多の名盤を生み出した彼らのレガシー・サウンド、興味が沸いたらぜひともチェックしてください。もちろん、ベックの新作もオススメです。ではまた!

Text by Uchida Masaki


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内田 正樹

内田 正樹

エディター、ライター、ディレクター。雑誌SWITCH編集長を経てフリーランスに。音楽をはじめファッション、映画、演劇ほか様々な分野におけるインタビュー、オフィシャルライティングや、パンフレットや宣伝制作の編集/テキスト/コピーライティングなどに携わる。不定期でテレビ/ラジオ出演や、イベント/web番組のMCも務めている。近年の主な執筆媒体は音楽ナタリー、Yahoo!ニュース特集、共同通信社(文化欄)、SWITCH、サンデー毎日、encoreほか。編著書に『東京事変 チャンネルガイド』、『椎名林檎 音楽家のカルテ』がある。

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