2017.11.30

ブリティッシュ“ライク” ヨーロッパ満喫日記 湖水地方篇

前回の vol.26 に引き続き、イギリス縦断の旅の続篇である。スコットランドに到着して3日目の朝、ようやく慣れ始めたエディンバラを後にし、次の目的地湖水地方へと出発した。移動手段は、たっての願いで自ら運転する車輌である。しかしながら、車が発進するまでに懸念することは多々あった。その筆頭は運転免許証だ。事前に国内運転免許証の登録があれば、国際運転免許証は不要と聞いていたためその通りにやってきた。本当に問題ないのか訝しんでいたが、その不安はあっけなく解消された。ただし、心配な方は国際運転免許証を持参することを強くお勧めする。次回からは自身もそのつもりだ。そして、450マイル(約700キロ)の英国縦断の旅がスタートした。

この小さな旅の相棒になってくれるのは英国車Vauxhall(厳密に言えば英国車ではないが)のMOKKA X。車名は珈琲豆に由来するらしく、珈琲が好きな自身には嬉しい小話だ。イギリスでは、基本的にマニュアル車の割合が大多数で、レンタカーにおいてもオートマチックというのは事前の予約がない限り稀らしい。そうは言っても元来オートマチックというシステムが嫌いな自身にとって、マニュアル車というのはあべこべにありがたかった。

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エディンバラを背にして走ること数十分。早くも視界が緑で覆われ、あっという間に旅行番組やガイドブックで目にする、絵画のようなハイランドの風景が目に入り込んできた。そして、右にも左にも羊の群れ。どこもかしこもほぼ放し飼いになっていて、ひたすら緑を食む愛くるしい姿にほのぼのとしたものだった。車内に流れるDonovanの名曲“Catch the wind”はこれ以上にないBGMだった。日本とはまるで勝手が違うラウンドアバウトにも憂慮していたが、出られなければ出られるまで周回していれば問題ない(大変に滑稽だが)ことがわかると妙に安心して走行できたものである。
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さて、走ること2時間、休憩のためにスコットランドとイングランドの国境付近にある小さな町カーライルに訪れた。しとしとと雨が降っては止みを繰り返したため、雨宿りを兼ねてこの町でランチを取っていた。祖国を離れても、やはり雨男の効力は絶大だった。束の間の休息で、あることに気づいた。それは誰も傘をささないのだ。英国関連の書籍を読んでいると、よく英国人は傘をささないと記されていたり、はたまたそれは嘘だと書いてある記事をよく目にする。しかし、現地に訪れて実際に見た事情は圧倒的多数で前者である。本当に誰も傘をさしていない、というより傘すら手にしていない。それどころかかなりの雨にもかかわらずサンドウイッチやパンなんかを食べながらニコニコして歩いている。あゝ、なんという素敵な景色だろう…
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さらにこの町でもう一つ独特のシステムを学んだ。それは駐車システム“Disc”だ。駐車場に記載されたこの標識、よく意味がわからないので道行く壮年に尋ねたところ、そのシステムを丁寧に教えてくれた。簡潔に言うと自己申告制の駐車方式である。何時に駐車したかがわかるよう車にメモなりを残しておいて1時間以内に車をどかせば駐禁を切られないらしいのだ。駐禁監視員が目を光らせているのは何も日本だけではないようだ。再び湖水地方へ歩を進める。
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そんな甲斐あって無事にカーライルを後にし、この日の目的地である湖水地方にひっそりと佇む宿Holbeck Ghyllに到着した。湖水地方の中心地ウィンダミアとアンブルサイドのちょうど狭間に位置するこの地は、森と湖と牧地に覆われていてとかく閑静だ。ピーターラビットの作者であるビアトリス・ポターや、英国を代表する文学者ワーズワースがこの地に魅了されて執筆活動に精を出したというのもなるほどよくわかる。
Holbeck Ghyll
https://www.holbeckghyll.com

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少し離れることになるが、Keswickという町に行けばCastlerigg Stone Circleいうストーンヘンジに似た小さな環状列石を見ることができる。有名なストーンヘンジの方は多数の行列ができると聞いているが、こちらの方は閑古鳥が鳴いている。3,000〜4,000年も前に並べられたと言われている48個の石。この独特な空間を独り占めできるのは贅沢な体験である。
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4日目、宿泊先での豪華な朝食を経て、車での最終目的地ロンドンへ出発する。スコットランドもしかり、イギリスにおける朝食のボリュームの凄さ、質の高さといったら他国の追随を許さないのではないだろうか。朝からスターター、メイン、デザートとフルコースとなっており、選択できるメニューの量も豊富である。加えて、ただ量が多いだけの烏合の衆ではなく、それぞれの味わいにも長けているのも魅力的だ。そして、朝食の際にどのホテルでも必ず聞かれる「パンは白か茶色か?」という質問。これも日本はおろか、他国で質問された覚えがない。この茶色の正体は、全粒粉のパンだそうである。ビタミンB1 や鉄分の含有量が多く、独特の風味を持っているのが特長だ。提供してくれる場所によって酸味の違いが如実にわかり、珈琲や紅茶との相性も良いため馬鹿の一つ覚えのようにこれをいただいていた。
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このあと一行はいよいよロンドンに入って行く訳だが、今回もまた思った以上に頁を取ってしまった。次回のロンドン篇をもってこのシリーズのまとめとしたい。

Photo&Text by Shogo Hesaka

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部坂 尚吾

部坂 尚吾

1985年山口県宇部市生まれ、広島県東広島市育ち。松竹京都撮影所、テレビ朝日にて番組制作に携わった後、2011年よりスタイリストとして活動を始める。2015年江東衣裳を設立。映画、CM、雑誌、俳優・タレント・文化人のスタイリングを主に担い、各種媒体の企画、製作、ディレクション、執筆等も行っている。山下達郎と読売ジャイアンツの熱狂的なファン。
江東衣裳
http://www.koto-clothing.com

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