ロックを学ぶ?回顧展あれこれ | BRITISH MADE

BM RECORDS TOKYOへようこそ ロックを学ぶ?回顧展あれこれ

2016.04.14

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先日、報じられたニュースで驚いたのは、ザ・セックス・ピストルズの話題でした。パンク・ロックの仕掛人として知られる、故・マルコム・マクラーレンとヴィヴィアン・ウエストウッドの間に生まれた息子のジョセフ・コーは、パンク誕生40周年を祝うイベント「パンク・ロンドン」の開催への抗議として、今年11月26日(ザ・セックス・ピストルズの“Anarchy in The UK”リリース40周年の日)に、総額500万ポンド(約8億円)相当のパンクに関するコレクションを燃やすという計画を発表したのです。

Sex Pistols – God Save The Queen
まあ、かつてニューヨークパンクの余波が海を渡ってイギリスに届き、「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」を演奏して王室に唾を吐いてみせたのがロンドン・パンクでありピストルズの出自なわけなので、おかみ公認で対観光客対策と取られても仕方のない形でのパンクイベント開催は、たしかに当事者からすれば悪いジョークなのかもしれません。
でも、8億円って……。もう10年以上前だったか、日本でセディショナリーズ(マルコムとヴィヴィアンが手掛けたショップ)のヴィンテージアイテムの展示を日本で観たことがあるのですが、ガラスケースに入って展示されていたTシャツの前に警備員が常駐していて驚いたものです。その心意気や良し、ですが、庶民な私はどうしても「8億円…」とため息が(笑)。
なんか別の形で現金化したり有効活用できないものかとも思いますが、はてさて本当に11月のロンドンで塵と化すのか、気になるところです。

思えばロック誕生から60年が過ぎました。ロックは還暦を超えたのです。1955年、全米チャート初登場第1位を記録したのが、ビル・ヘイリーと彼のコメッツの「ロック・アラウンド・ザ・クロック」でした。このナンバーがロックンロール最初のヒットソングと定義されていて、そこからカウントしての還暦超えということになっています。先日このコラムでも取り上げたデヴィッド・ボウイの訃報しかり、ロックの勃興から隆盛期を支えたベテランの逝去がちらほらと見られるようになってきました。こればかりは順番なので仕方がないとはいえ、やはりちょっと寂しいものです。

まあだからこそアーティストとその周辺のムーブメントを回顧しようという動きが散見されるのも頷けるっちゃあ頷けます。先日キューバで歴史的な公演を成功させたザ・ローリング・ストーンズの回顧展「THE ROLLING STONES EXHIBITIONISM」も4月6日から始まったばかりです。

The Rolling Stones EXHIBITIONISM: An Unexpected Turn Of Events
この展示は9月までロンドンのサッチ・ギャラリーで開催され、その後、4年をかけて世界11都市を巡回予定だと言われています。音楽、楽器、衣装、日記、ジャケットやポスターなどのデザインワークに映像など、およそ500以上にも渡るバンドのアイテムを9つのテーマに分けているという展示だそうです。

https://www.youtube.com/watch?v=M-7C8aH6DPQ&feature=youtu.be

デビュー前夜の貧乏時代に、初代リーダーのブライアン・ジョーンズを含めたメンバー全員がシェアしていたアパートを再現したコーナーもあるとか。なんとかして会期中に現地を訪れて観たいと思っているのですが、果たして叶うのでしょうか。

昨年、私はひょんな機会があって、やはりロンドンで行われたザ・ジャムの大回顧展を観ることができました。ボウイの展示(こちらはまだ映画を通したヴァーチャル体験ですが)の時も驚いたのですが、ジャムもまあ直筆のメモやらスケッチやらがわんさかとあるわあるわ。よくもまあこれだけ残っていたというか、ちゃんと保存(※ちなみにポール・ウェラーに関するアイテムはご両親や同展示のキュレーターを務めた妹のニッキーが保存していたそうですが)しておいたものだなあと、正直言って彼らの物持ちの良さに一番驚かされました(笑)。
(※写真はポールのサイン練習帳!(笑))

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はてさてストーンズのアーカイヴ、どのくらい充実しているのでしょうか。まあ、もっともファッション的にはミックの歴代の衣装って(90年代から今日はまあともかくとして)およそモード云々とはかけ離れたものばかりなので、ボウイのダブルジャケットやジャムのモッズスーツのように、時代性が反映されたクロージングはそこまでないかもしれませんが、ともかく楽しみです。

そして展示でもうひとつ驚いたトピックがあります。こちら、アメリカネタですが、米オハイオ州にある「ロックの殿堂」(The Rock and Roll Hall of Fameのことですね)の日本版となる博物館「ロックの殿堂ジャパンミュージアム」が4月29日、金沢市にオープンするのだそうです。イギリス勢からは過去ビートルズ、ストーンズ、ザ・フー、ピストルズ、エリック・クラプトンやボウイなどが殿堂入りしていますが、そうしたミュージシャンの楽器やステージ衣装、写真などを本家から調達して展示をする予定とのこと。北陸新幹線の開通以降、21世紀美術館をはじめ活気づいている金沢の新たな目玉となるのでしょうか?

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最後に、以前もお伝えした前述のデヴィッド・ボウイの大回顧展「DAVID BOWIE is」の東京開催がついに発表されました!2017年1月8日(ボウイの誕生日)からと、ちょっと先ですが、あの展示が東京で観られるというのはいまから楽しみです。会場となる寺田倉庫、ちょうど先日アニエスb.のファッションショーに招かれて訪れたばかりでした。アクセスにすごく恵まれた場所とは言い難いですが、展示スペースとしてのアレンジは期待が持てるハコだと思います。
(※下記は先日発表されたばかりの「I Can’t Give Everything Away」のリリックビデオです)

ロックンロール、パンク、モッズ、スウィンギン・ロンドン、ヒッピー、マンチェスター、クラブシーン……様々なアーティストでありムーブメントの当事者や語り部が元気なうちに、そしてそうした面々を原体験したファンがお金を払える大人になっている今、さらに言えば、これからますます世代交代を目の当たりにしていくと思われるこの時期、こうした回顧展などのイベントは(アーカイヴの貯蔵量と質にもよるのでしょうけれど)もっと増えていくのかもしれません。さて、あなたはどんなアーティスト/ムーブメントの展示をご覧になりたいでしょうか?

「DAVID BOWIE is」
会期:2017年1月8日(日)~ 4月9日(日)
会場:寺田倉庫G1ビル(東京都品川区東品川二丁目6番10号)
主催:DAVID BOWIE is 日本展実行委員会
企画:ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)
公式サイト:www.DAVIDBOWIEis.jp

Text by Uchida Masaki


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内田 正樹

内田 正樹

エディター、ライター、ディレクター。雑誌SWITCH編集長を経てフリーランスに。音楽をはじめファッション、映画、演劇ほか様々な分野におけるインタビュー、オフィシャルライティングや、パンフレットや宣伝制作の編集/テキスト/コピーライティングなどに携わる。不定期でテレビ/ラジオ出演や、イベント/web番組のMCも務めている。近年の主な執筆媒体は音楽ナタリー、Yahoo!ニュース特集、共同通信社(文化欄)、SWITCH、サンデー毎日、encoreほか。編著書に『東京事変 チャンネルガイド』、『椎名林檎 音楽家のカルテ』がある。

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