ドレイクスのアイデンティティ。自社工場にこだわり、シャツを作り続ける理由とは?|Drake’s銀座店 Naka | BRITISH MADE Staff blog

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ドレイクスのアイデンティティ。自社工場にこだわり、シャツを作り続ける理由とは?|Drake’s銀座店 Naka

およそ9年前の2013年頃にドレイクスはイギリスのシャツ工場である『CLEEVE OF LONDON』を買収しています。おそらく同時に『RAYNER & STURGES』も買収しているのかと思いますがその資料が手元にほとんどなく詳細はわかりません。このシャツ工場の買収以前にもドレイクスはオリジナルのシャツを提案していたようですが、それはイタリア製のものが主だったようです。ネクタイをイギリスの自社工場で生産しているドレイクスにとって、イギリス製のシャツを顧客の方々に提案したいと思うのはごく自然な流れだったのでしょう。

私物のシャツ。約4年ほど前に購入したものです。

さてここで改めてドレイクスの歴史について遡ってみましょう。ドレイクスの創業は1977年で、アクアスキュータムのアクセサリーコレクションを担当していたマイケル・ドレイク氏がスカーフのコレクションからスタートさせました。ネクタイのイメージが強いドレイクスですが、実はスカーフから始まったブランドだったようです。

 

ドレイクス・ヒストリー

その後、1986年に『Hill & Drake』というネームタグでネクタイを取り扱い始めたのが、自社ネームタグの始まりだったようです。その後は『Michel J Drake』タグなど時代により変遷し、今の『Drake’s』タグとなっています。この前後のいつにドレイクスは自社工場を持ち始めたのかは私もわかりませんが、タイのコレクションを始めた当時は名前の通りチャールズ・ヒル氏とマイケル・ドレイク氏の二名が中心となりネクタイをデザインし続けていたようです。ここでチャールズ・ヒル氏の名前を初めて聞く方も多いと思いますので、簡単に説明させていただきます。

チャールズ・ヒル氏はドレイクスの現デザイナー マイケル・ヒル氏の父で、ターンブルアンドアッサーでタイをデザインされていたようです。現デザイナーのお父様が初代のマイケル・ドレイクス氏と共にドレイクスを担っていたと考えると感慨深いものがあります。

2017年発行のCommon Thread Vol.2よりマイケル・ドレイク氏

 

新デザイナーの就任と共同経営者の選出

時は経ち、2010年頃にマイケル・ドレイク氏が引退することとなり、ドレイクスは大きな変革を迎えます。デザイナーはマイケル・ドレイク氏と長年仕事を共にしていたチャールズ・ヒル氏のご子息であるマイケル・ヒル氏が就任します。共に経営を担うのは数社の大手企業の候補を退け選ばれたマーク・チョー氏です。当時はまだ今ほど注目を集めていなかったマーク・チョー氏でしたが、彼のファッションやドレイクスへの想いがマイケル・ドレイク氏に届いた結果と言えるでしょう。

2017年発行のCommon Thread Vol.2よりマイケル・ヒル氏

 

ドレイクスがイギリスにあるシャツ工場を買収

新生ドレイクスはまずロンドンのクリフォードストリートに路面店を構えます。(現在は移転し、サビルロウに店を構えています。)その後、2012年頃に主にタイを生産していた本社工場を北ロンドンのハバダッシャーストリートへ移転し、そこにファクトリーストアを併設します。翌年にはイギリスはサマセット州にある老舗シャツメーカー(ファクトリー)『CLEEVE OF LONDON』を買収することとなります。これは当時まだスカーフやマフラー、タイ、シャツ程度しか取り扱いのなかったドレイクスが現在のようなトータルブランドとなる第一歩となりました。マイケル・ヒル氏とマーク・チョー氏の二人はこの数年の間に怒涛のようにブランドを大きくするための布石を投じて行きました。

銀座店店内に飾られているドレイクスの旧自社工場の絵。移転前の工場の様子をアメリカのアーティストであるアダム・ダント氏が描いています。

 

シャツ工場買収の話に戻します。私が以前手にした資料によると、当時のクリーブオブロンドンの職人は約30名、ターンブルアンドアッサーの職人は80名程度だったようです。クリーブオブロンドンは1975年に創業しているようで、規模はタンブルアンドアッサーより小さいのですが、職人の技術豊かな手法で今でもドレイクスのシャツを着心地良く維持しています。また、現在ではイギリスのシャツ工場は少なくなり、イギリス製のシャツ自体に希少価値があるとも思うのです。

(左から)
Drake’s – White Cotton Poplin Spread Collar Shirt ¥30,800(税込)

Drake’s – Blue Ticking Stripe Cotton Oxford Cloth Button-Down Shirt ¥27,500(税込)

Drake’s – Khaki Cotton Two-Pocket Work Shirt ¥42,900(税込)

 

ドレイクスシャツ工場の特徴
イギリス製らしい肩まわり

こちらに関しては私も実はまだ理解ができていません。非常に紳士服に造詣が深いお客様からそのように言われたことがあります。どうやらシャツもイギリス製、イタリア製、フランス製、アメリカ製というように各国のシャツの縫製に少々傾向があるようです。そのお客様に何度か具体的に話を聞こうとしたのですが、おそらく言葉にするのは難しく感覚的なものが強いのでしょう、自分の理解が追い付きませんでした。これは私の経験不足にもよるもので各国のシャツをそれぞれ細部まで着込んだことがないためで、もしお詳しい方がいらっしゃいましたらぜひお教えいただきたいと思います。

 

フラシ芯を用いた柔らかな衿

フラシ芯という言葉はご存知でしょうか。一般的にはシャツの衿にコシを持たせるために衿の中に芯地を入れます。その芯地を大まかに区別すると接着芯もしくは非接着芯となりますが、フラシ芯は非接着芯のことを指します。シャツの縫製のほとんどは接着芯を用いているのですが、その場合生地の裏側から芯地を接着して表地と貼り合わせます。

接着芯を使用した場合、型崩れしにくくなり、アイロン掛けなどのお手入れが楽になり、シワも伸ばしやすいように思います。その半面、接着芯の場合はシャツの生地自体にやや硬さが出てしまい生地本来の質感を表現し辛い面もあります。

非接着芯のフラシ芯の場合は、アイロンがけで洗った後のシワを伸ばすことが難しいように思います。しかし、シャツ生地自体の質感を活かしやすくなり柔らかな衿を表現しやすく、首周りもストレスのない着心地をお楽しみいただけます。さらに言えば、フラシ芯ならではのステッチ部分の経年変化もございます。下の写真をご覧ください。

写真左 Drake’s – Cotton Chambray Button-Down Shirt ¥33,000(税込)

上写真はどちらもドレイクスのシャツの衿ですが、左が新品のシャンブレー生地、右は4年ほど着込んだデニム生地(私物)となります。生地自体は違うのですが何度も洗い、着用するごとにステッチ部分が縮み、ジーンズのような色落ちが表現されています。デニム生地がとても分かりやすかったためピックアップをさせていただきましたが、その他のオックスフォード生地などでも同様にステッチ部分が経年変化しフラシ芯独特の柔らかな風合いに変化していきます。これもドレイクスのシャツの楽しみのひとつだと思うのです。

 

衿型のバリエーション

[ボタンダウンカラー]

ドレイクスでは現在メインで取り扱っている衿型となります。このS字の柔らかなカーブはボタンダウン発祥のアメリカの某ブランドに影響され作られています。最初はドレイクスのシャツ工場でもこのS字の雰囲気は出していませんでしたが、約5年ほど前から現在のカーブとなっています。フラシ芯でボタンダウンを作っているのはとても贅沢ですし、ドレイクスのシャツを楽しむのであればまずはこの衿型をお楽しみください。

 

[ドレイクススプレットカラー]

ドレイクス定番のスプレットカラーです。少なくともここ5年ほどはこの衿型をずっと提案しています。ビジネスや冠婚葬祭など、一番使う場面の多い衿型でしょう。ドレイクスのスプレットカラーも同様にフラシ芯を使用しており、衿のステッチ周りの微細な生地のシワ感や衿先にかけての微妙なカーブがスーツスタイルを柔らかな印象にしてくれます。

 

[ドレイクスロングポイントカラー]

これはドレイクスオリジナルのカラーです。ボタンダウンカラーのボタンを無くしたらどうなるか、そのアイデアで生まれた衿型となります。ドレイクスではボタンダウンシャツにネクタイを締めたとき、衿先のボタンは留めないことが多いということも影響しているでしょう。これは、初代のマイケル・ドレイク氏が好んで行っていた着こなしであり、現在のドレイクスは彼に敬意を表して同じ着こなしを提案しています。また、衿のカット自体に微妙なカーブが付けられており、クラシックなスーツスタイルやジャケットスタイルによく合います。この衿型は毎シーズン型数が少ないため、見つけたら必ず手に入れることをオススメします。

 

最後に

ドレイクスにとってシャツは非常に重要なアイテムのひとつです。以前、どこかで掲載されていたマイケル・ヒル氏のインタビューではこのような言葉が書いてありました。

『当時はイタリア製のシャツを仕入れ、取り扱っていました。イギリス製のシャツは現在では非常に少なく生産できる工場も限られている為、フォーマル向けのシャツばかりで自分たちのタイのバリエーションに対して合うシャツが少なく、満足いくラインナップが揃えられなかったのです。そこで私たちは自分たちの手でシャツを作ることに決めました。2013年、サマーセットにシャツ専用の自社工場を持つことができたので、タイのノウハウを生かすだけでなく、タイとシャツの組み合わせで、より強いドレイクスとしてのアイデンティティを表現できるようになりました。』

このドレイクスとしてのアイデンティティを表現することを彼らはとても大事にしています。ドレイクスのタイをお持ちの方は大勢いらっしゃるかと思いますが、シャツをお持ちの方はまだまだ少ないのではないでしょうか。タイがドレイクスならシャツもドレイクスで合わせる。そうすることで彼らのアイデンティティをより強く感じることができるはずです。

Drake’s銀座店 Naka

 

追伸

今回、ご紹介した内容は私が様々な資料を探し、まとめた内容となっています。細かな元号の違いや事実と異なることもあるかもしれませんが、もし気になる点があればお教えいただければ幸いです。

 

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