著名人と創るグレンロイヤル 「“一人問屋”兼クラフトバイヤーが求める“働くバッグ”が生まれるまで。 日野 明子さん」 | BRITISH MADE

著名人と創るグレンロイヤル 「“一人問屋”兼クラフトバイヤーが求める“働くバッグ”が生まれるまで。 日野 明子さん」

2019.07.04

各ジャンルで活躍する3名の著名人とグレンロイヤルのアイテムを共同開発する企画がスタート。今回は“つくる人とつかう人を繋げる”ことを掲げ、国内の手仕事や地場産業と、お店との架け橋になる役割を果たしている「スタジオ木瓜」代表の日野明子さんにインタビュー。別注のコンセプトを含めた制作裏話をご紹介します。

Meeting Day 01.

ー今回はよろしくお願いします。まず始めに、グレンロイヤルの第1印象を聞かせてください。

「歴史のあるファクトリーからハンドメイドで生み出す製品の凄みを感じたのが第1印象です。ひと目見た時に“とても素敵だ”と率直に思いました。そしてブライドルレザーの触り心地も良く上品ですし、それでいて質感はしっかり。とても頼り甲斐があります。私は普段ほぼ純国産の製品しか使いません。私が取り扱う製品も、小規模であったり個人で作られている作家さんも多いのですが、繊細で優しいデザインの一方、強度に欠けることも少なくはありません。 元々グレンロイヤルの長財布を使い続けているのですが、そういう意味で“グレンロイヤル”の製品には安心感が持てます。私は大雑把な性格なので、レザー製品に限らず経年変化や道具の消耗が激しいのですが、グレンロイヤルの財布はガシガシと使い込んだ割にまだまだ綺麗な状態を保っています。つまり、それだけ質が良いことの証明だと思っています。」

日野明子さん 1967年生まれ。共立女子大学家政学部生活美術学科在学中に、秋岡芳夫氏に影響を受ける。大学を卒業後、松屋商事にて入社。1999年に独立し、「スタジオ木瓜」を設立する。お店と作家・産地をつなぐ問屋業を中心に、展覧会などの企画、地場産業のアドバイザー・講師、文筆業などで活躍。著書に『うつわの手帖・1、2』、『台所道具を一生ものにする手入れ術』など。

ー以前からご愛用いただいているグレンロイヤルですが、今回はどういったものを作る予定ですか?

「財布を使い続けていて、次に使うならレザートートバッグが良いと思い浮かびました。大雑把に扱ってもしっかりとしている強度感やブライドルレザーの触り心地など、グレンロイヤルの財布を使ってみて、気に入ったのでトートバッグを使ってみたいなと。そしてイラストレイターである“ソリマチ アキラ”さんが使い込んだトートバッグが掲載された記事を見たのもキッカケの一つです。あそこまで格好良い経年変化(美化)になるのだと感動し、私も使い込んでみたくなりました。」

財布 日野さんが愛用中のグレンロイヤルの“ZIP AROUND LONG WALLET”。数年前にブリティッシュメイド 青山本店にて出会ったとのこと。“気に入ったモノは使い込むのがモットー”という日野さんの言葉が伝わってくる。

ー具体的な形のイメージをお聞かせください。

「実用性と収納面を重視したストレスの無い使いやすさを目指したいと思います。普段の仕事道具と身の回りのものが小分けにできるよう内ポケットを付けたり、サイズ感は男性でも女性でも使える、大きすぎず小さすぎないちょうど良い大きさが良いなと考えています。そして人と身体のバランスも考慮したいと考えています。例えば大きすぎると電車で邪魔になってしまいます。そこで膝において収まる大きさなど配慮のあるサイズ感に仕上がれば良いなと思います。」

ー今回のアイテムはどんな方に持ってもらいたいですか?

「“働く人のためのバッグ”との名の通りビジネスから、小旅行だったりとアクティブに駆け巡る人に持ってもらえれば良いと思います。」

Meeting Day 02.

初回打ち合わせの後日、製作されたサンプルを持って再度インタビューへ伺いました。グレンロイヤルから今回上がってきたファーストサンプルを並べて比較してみました。

レザートートバッグ 中央がファーストサンプル、左右がベースとなった定番モデル。主にサイズ感の調整や内ポケット、閉じられるマグネットのフラップを付属。ハンドルを支える部分を縦に長くして、外径の正方形とのアンバランスを狙ったり、細かく仕様変更。

シンプルなデザインながらも実用性を備えたレザートートバッグ。定番には無かった程よいサイズ感。レギュラーコレクションにはない内ポケット仕様は文房具、名刺入れ、スマートフォンなど生活必需品ものが入るように。またロゴのサイズ感を小さく控えめにする等こだわりが詰まった信頼性のあるバッグが形となりました。

「とても素敵な出来上がりで本当に嬉しくなりました。」

ーサンプルをご覧になって、いかがでしょう?

レザートートバッグ

「バッチリの仕上がりです!使用頻度の高い私の生活にも耐えうる逸品になりそうです。ブライドルレザーの安心感。それが一番ですね。今まで使っていたバッグも何度と無くダメにしてしまったことがあるので…。そして使い勝手も良いですね。収納面で言えば必要最低限のものが入りながらと言いましたが、私は誰もが認めるほど、荷物が多い人間です。荷物を全部入れてみてもパソコンを入れてもあまり重さも感じさせないので良いですね。これで使い込んでいったらどんどん馴染んでいきそうなのが楽しみです。ハンドルの長さも引きずらないくらいでちょうど良い。マグネット蓋の安心感からA4の書類に皺を寄せないで収納できるなど使用面で、ストレスがほとんどないのも魅力です。」

レザートートバッグ

「グレンロイヤルで昔から使われていたハンターグリーンのステッチを活かしたのもやっぱり良かったです。私はシンプルなものが好きではありますが、あまりにシンプルすぎると面白みがないので、こういった小さい部分で遊び心のようなアクセントを演出できるのはとても良いです。」

レザートートバッグ

「そしてサイズ感も抜群です。イメージ通り男女問わず持ってもらえるバランスの取れたサイズに仕上がったと思います。そして幅広すぎると電車で座った時に隣の人にあたってしまい、邪魔にならないかといつも気になっていたので、その点もクリアできました。柔らかな風合いの服を着ることが多いんですが、このサイズ感がそんな服とも相性が良くてコーディネート面でも使いやすいです。」

ー具体的に何か改善点はありますか?

「内側のサイドポケットのサイズです。片方はスマートフォンが収納できるよう目指しましたが機種によっては収納できない可能性があるので十分に入るにサイズ感を調整して、もう一方は名刺入れが取り出しやすい程度に2cmか3cmほど浅くした方が使いやすいかも?と先日出張した際にバッグのポケットを使っていて“あったら良いなぁ。”と思った仕様です。あとは内側の後ろポケットを下まで通るように出来ますか?そうすることで書類が縦でホールドできるので、書類用スリーブとしてより使いやすいディテールとなるのではと思います。」

レザートートバッグ

「また、ボルドーのカラーリングも可愛いですね。男性でも使えそうですし、ボルドーというカラー自体に面白みがあるのでステッチはあえてマッチングカラーにしたいです。ブライドルレザーでボルドー、そしてこのちょうど良いサイズ感はきっと素敵なものになるはずです。」

今回はほぼ改善点もなく完成された形となりました。そこで今回は3日目の完成品までお披露目!細かな修正を経て、より洗練されたセカンドサンプルをお持ちしました。

Meeting Day 03.

「まさにイメージ通りの“働く人のためのバッグ”が形となりました。」

ーセカンドサンプルをお持ちいたしました。ご覧頂いた印象はいかがでしょうか?

「大大大満足です!ステッチワークや内側ポケットの微調整、ほんのちょっとのことで印象が洗練され、さらに使いやすくなりました。ファーストサンプルと同じく見た目はシンプルなのに高機能に進化している。そんなことに驚きつつも純粋に面白いなと思いました。まさに“働く人のためのバッグ”になったと思います。どんどん荷物を入れて私らしく使い込んでみたくなる、そんな素晴らしい仕上がりです。」

レザートートバッグ

ーファーストサンプルからの改善点ですが、使い心地などいかがでしょうか?

「まず、ずっと心配だった左右のポケットのサイズは理想通りでした!片方はスマートフォンに深く、もう片方は名刺入れが収納できるように浅く取ることでより実用性が増しました。これによってスマートフォンの幅広い機種に対応し、取り出しづらさといった気になっていた部分も解消されました。より用途ごとにフォーカスできるディテールとなったと思います。」

レザートートバッグ

「内側ポケットの底をあえて抜くことでA4の書類用スリーブと変身させたのも良かったです。ファイルも飛び出さず、収まりがとても良い!一見すると“一体なんの仕様だ?!”と思われるかもしれませんが気づけば便利な機能です。“こうすればもっと良いかも?”とパッと思いついたアイデアでしたが我ながら満足です。」

レザートートバッグサイズ感

「そして、バッグ自体のサイズ感について。こちらに関しては絶妙なバランスのサイズ感だとファーストサンプル時から私の中で絶賛です。横幅に関しても肩幅以下が鉄則!ということで拘りましたが、実際に座りバッグを膝に置いた時、ちょうど手を伸ばして上から底を抑えられるサイズとなり、一層使いやすい。バッグを支えて自然に肘が微妙に曲がるぐらい。偶然にも私の腕の長さとぴったり同じだったのです。(私は腕はすごく短いです。)これ以上、長さがあると上から手を伸ばして底を抑えずらいので、人間工学的(大げさですが)にもちょうど良いです。
持っていても快適、電車の中でもかさばらず人の邪魔にもならないような、まさに当初コンセプトにあったストレスの無いサイズ感を実現できていると思います。あとマチはそのままにしたのですが、偶然にもこの幅広のマチがお弁当箱を収納できるのにも使える気づき、更にバッチリに思えました。笑」

「持ち手の柄やダブルステッチの部分も長くして正解でした。単純に長くすることで“ユニオンジャック”のように見えて可愛くなるのかな?と思った程度ですが、全体的なサイズ感に対して、職人的なアプローチが光るステッチワークも相まって一層“良いモノ”の雰囲気がにじみ出ていますね。」


「ブライドルレザーだからこそ使い続けられるという安心感。」

ー仕上がった商品の魅力についてお聞かせください。

「持っていて安心感を得られる、そんなところが全体的な魅力ですね。まず第1にグレンロイヤルならではのブライドルレザーの重厚さ、上品な光沢を持つ質感。ひと目で良いものだと分かるレザーへの安心感が挙げられます。そしてステッチワークなど職人らしいクラフトマンシップを随所で感じさせるのもハンドメイド感による安心感があります。また、丸みのあるレザーハンドルですがやや太さを出したので“もしかしたら重くなってしまうんじゃないか?”と心配でしたが軽く仕上げられたのも良かったです。これなら男女問わず、どなたでも持ちやすく、快適に使ってもらえると思います。肩掛けでも手提げでも、しっくりと馴染んでくれるのも良いですね。そしてなにより、ブライドルレザーだからこそ使い続けられるという安心感ですね。」


「また、グレンロイヤルの定番モデルにはない仕様を挑戦できたことも良かったです。トップにマグネット式のフラップ、内ポケットを付けるなど、ほんの少しだけですが、結果的にシンプルなデザインをキープしながら安心感かつ実用性に富んだ仕様を突き詰められたかなと思っています。」


ー今回のグレンロイヤルとの物作り、いかがでしたでしょうか?

「真摯に私の要望を聞いてもらえて、かつそれが実現したことがなにより嬉しかったです。どこまでが出来て、どこまでが出来なくてというお互いフィードバックを重ねて作り上げたことで一緒に取り組んでいるという気持ちが一層沸きました。あとは個人的にはファーストサンプル制作前も印象的でしたね。ステッチにとことん拘ってしまって、販売価格がドンと上がってしまって…。それを反省しつつも、同時にあの小さな部分に職人のどれほどの技術力や時間を含めた価値が詰まっているのだろうと実感もできました。とにかくも私としては本当に、素敵なプロジェクトに参加させていただき楽しかったのが1番の気持ちです。ソリマチ アキラさんの“経年美化”を目標にこれからガンガン使っていこうと思います。」

TOTE BAG WITH SIDE POCKETS ¥108,000(税込)

つくる人とお店を結ぶ“お見合いおばさん”


「スタジオ木瓜」代表 日野 明子さん
ひとり問屋
1967年神奈川生まれ
共立女子大学家政学部生活美術学科在学中に教授であった秋岡芳夫氏に影響を受ける。松屋商事(株)(百貨店松屋子会社・1998年に解散)にて北欧テーブルウェアおよび国内クラフト/工芸品の営業を経て、1999年独立、スタジオ木瓜を設立。一人で問屋業を始める。百貨店やショップと作家・産地をつなぐ問屋業を中心に、テーブルウェアを主体とした生活に関わる日本の手仕事の関連の 展示会や企画協力を行う。
http://utsuwacafe.exblog.jp

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