日本一の靴磨き職人“石見 豪”氏のワークショップをレポート! | BRITISH MADE Staff blog

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日本一の靴磨き職人“石見 豪”氏のワークショップをレポート!

先日の8/17(土)、青山店では靴磨き大会、初代日本チャンピオンの THE WAY THINGS GOの職人兼オーナーの石見 豪さんを招いてワークショップを開催しました。

台風の予報があったので天候を心配していましたが、当日は晴れてカンカン照り。まさに真夏といった気候でしたが、石見さんは颯爽とスーツスタイルで来店。登場の時点から「プロは違う!」と肌で感じました。

余談ですが、ご本人曰く私服でもスーツ以外は身に着けないそうでスニーカーやカジュアル着は所有していないそうです。本職と同様に服装に関しても徹底した拘りを感じました。

本題のワークショップですが、今回は基礎編応用編と内容を分けて開催。基礎編は靴の良し悪し、扱い方、ケア方法、応用編はプロの極意が詰まったシューシャインのやり方について丁寧にレクチャー頂きました。今回のブログではその内容の一部について触れ、簡単ではありますがご紹介できれば思います。拙い文章で恐縮ですが、お付き合い頂ければ幸いです。

基礎編の参加人数は8名で予約満員。ご参加された方の中には、なんと兵庫から新幹線を使われたという方もいらっしゃいました。靴好き同士がテーブルを囲い、同じ空間で作業するのもこの場ならではの体験です。隣の席に着いた方と、持ち寄った靴についてお話される場面も見受けられました。

ではここから基礎編のケア方法のみ、順を追って説明させて頂きます。

 

①靴紐を外す

外羽根式の場合は、シューレースはすべて外します。内羽根式の場合はかんぬき止めのステッチが切れないようシューレースを外しきらずひと穴分残し、シューレースは靴の中にしまった状態で作業を行います。

また内羽根式の場合、タンと靴本体がステッチによって一部縫われている仕様の物があります。こうした仕様だとシューレースを外しづらい為この方法が便利です。

②ブラッシング

ブラシは用途に応じて素材を変え使用していきます。第一段階はホコリ落としのため、しなやかな馬毛のものを使用します。ブラシをかける際は靴の踵を持って、トゥに向かい一定方向にブラシをかけていきます。コバ、ウエストの辺りもホコリがたまりやすくブラシが入りづらい為、その隙間に入れ込むようにブラシをかけます。バンプの辺りは作業がし易いよう横方向にブラシをかけます。

③汚れ落とし

基礎編で最も時間をかけ説明してくださったのは、靴の汚れ落としの重要性についてです。普段、シューケアをする際は必ず行う工程かと思いますが、ここにもプロならではのポイントが存在していました。

今回使った汚れ落しは2種類あります。ハイシャインクリーナーと水性のクリーナーです。今まで使用してたワックスやクリームによって、この2種類を使い分けていきます。普段ワックスや油性のクリームを使用している方は、ハイシャインクリーナーを使用し、靴についた油分やロウを落としていきます。成分が近いクリーナーを使うことでよりきれいにワックスやクリームを落とすことができ、栄養分を入れ易い状態にすることができます。水性のクリーナーは、汚れが落ちきっているかの確認と、乳化性のクリームや汗の塩分などの汚れを落とすのに使用します。クロスにクリーナーを染込ませ、靴の表面の汚れを丁寧に汚れを落としていきます。繰り返しこの工程を行っていくと、次第に革はマットな風合いへと変化していきます。女性の化粧でいうところの、クレンジングに該当する作業です。ここで時間を惜しまずに丁寧に、作業を行うことでクリームの入りが格段に良くなるのです。

私自身、普段ケアをする際に汚れ落としの工程は欠かさずやっていましたが、恥ずかしながらここまで丁寧に時間をかけて行ったことはありませんでした。

実際に時間をかけ汚れを落とした後にクリームを入れると、革の質感が顕著に変わり弾力性が増していました。参加者の方々も普段の仕上がりとの違いに驚かれていました。「シューケアのポイントはクレンジングにある」と石見さんがおっしゃっていたのが印象的で、ひと手間かけるだけでこれほどに違いがでることを身をもって体感することができました。こうしたひと手間の積み重ねが、靴を永く活き活きとさせるためには重要なのだと改めて勉強になりました。そして靴を扱う者として、もっときちんとケアをやらなくてはと反省した次第です。

④靴に栄養を与える

靴の状態を保つ為に使うのが、主に乳化製クリームです。クリームには種類がたくさんあり成分もそれぞれ異なっています。今回使用したのは染料ベースで浸透力が高く、柔らかい乳化製のものを使用していました。

こうした柔らかいクリームであれば、指を使って靴全体にクリームを馴染ませていきます。指を使う理由として、体温によってクリームが馴染み易くなること、どれくらいのクリームを塗っているかがわかり易くなるというメリットがあるからです。なるべく厚塗りせず、少量を全体に伸ばしていくイメージで使用していきます。

⑤2度目のブラッシング

第2段階のブラシは、クリームを馴染ませる為コシの強い豚毛のものを使用します。クリームを革の中に浸透させるようなイメージをもって、靴全体をブラッシングしていきます。靴のバンプやウエストの辺りはクリームが行き渡り辛いため、しっかりブラシを入れ込みクリームを浸透させます。この段階になると、マットだった靴の表面が潤っていき輝きを放つようになってきます。

 

⑥カラ拭き

最後に仕上げとして、指にクロスを巻きつけ靴の表面をこすっていきます。汚れ落としには肌着のように少し伸びのある生地を使い、カラ拭きの際には少し起毛したネルシャツのような生地の物を使用します。

クロスで靴の表面をこすっていき、靴に残った余計なクリームを除去することで靴の輝きが増していきます。

この工程が完了すれば、ひとまず基礎的なシューケアは終了です。ケアが終わったシューズは、見違えるように美しくなっていました。後は好みでワックスを使い、さらに靴の輝きを引き出していきます。

 

応用編ではワックスのかけ方やコツについてレクチャーがメイン。写真はその様子です。普段では絶対教わることのできない、プロのシューシャインの極意を余すことなく教えてくださいました。

 

今回イベントに携わり、印象的だったのは石見さんの人柄でした。お客様が投げ掛ける質問ひとつひとつに親身になって答え、惜しみなく知識を披露してくださるその姿勢にとても感銘を受けました。その姿はまさに紳士。この人柄のおかげもあって、イベントは終始和やかに進行し、お客様もリラックスした空気感で過ごされていました。

今回紹介したのはイベントのほんの一部なので、伝わりきらない部分は多いかと思います。もし、これをきっかけにシューケアに関心を持って頂ければ、より靴を永く履いていただくことができるかと思います。青山店でも、今後継続してシューケアに関するイベントを行う予定です。詳細が決まり次第、また改めてご紹介できればと思います。

最後になりましたが、イベントを開催して頂いた石見さんと、参加していただいたお客様に感謝を込めて。

改めてありがとうございました。ぜひまた青山店でお会いできればと思います。それでは。

 

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