UKロックとエレキギターのダイジェスト | BRITISH MADE

BM RECORDS TOKYOへようこそ UKロックとエレキギターのダイジェスト

2018.09.13

UKロックの今昔を支える楽器の中の人気者

以前、ザ・フーの回でも同じ書き出しで紹介しましたが、今年5月、ギターの老舗ブランドであるアメリカのギブソンが、日本で言うところの民事再生法を米国裁判所に申請しました。経営破綻の主な要因は、他業種への投資や買収による債務による圧迫(要は拡大経営に失敗した)で、むしろギター事業そのものは順調だったそうで、ブランドは今も継続中です。

この時、昨今のヒップホップの台頭と紐付けて、ロックの衰退を象徴する出来事だといった報道も見受けられました。私ももちろんヒップホップだってたくさん聴きますが、ロック育ちの身としては心を痛めました。

では、ここ日本の現状はどうなのか? 先日、たまたま楽器業界の関係者と話をしたところ、そりゃ90年代のバンドブームの頃に比べたら落ち込んだものの、決して売れていないわけではないのだそうです。特にフェンダーやギブソンといった有名どころは、無論モノにもよりますが、昔に比べたらだいぶ安くなったので(昔はマジで高かった……)、かつて憧れていた大人が“大人買い”しているようですし、若い子はアニメやガールズバンド、バンギャル(バンドギャル)の影響で、中高生の市場はどちらかというと主に女性というか元気な“女子”に支えられているようなんです。

このあたり、イギリスの現状もぜひどなたか教えていただきたいものですが、今回はエレキギターへのエールも込めて、あらためてUKミュージシャンの大御所と代表的なエレキギターを(ざっくりとではありますが)検証してみたいと思います。

まず、基本的な話ですが、エレキギターは大半がアメリカのブランドです。これは、そもそもイギリスのミュージシャンがアメリカの音楽に憧れた流れとイコールだと言えます。その大元がフェンダーとギブソンという2大ブランドです。無論、機種にもよりますが、主にフェンダーはシャキシャキしていて音の線が(ギブソンに比べると)細く、ギブソンは(フェンダーに比べると)骨太なサウンドといったパブリックイメージです。

■ フェンダー使いのUKミュージシャン

ストラトといえば、まずは何と言ってもこの人、エリック・クラプトンです。
クラプトンといえば、“ブラッキー”に代表される黒のストラトキャスターがひと時代のトレードマークでした。このリンクは2005年のクリーム再結成ですが、やはり黒のストラトを抱えています。いい音してますね。
クラプトンはかつてレースセンサーという、ノイズの少ない画期的なピックアップ(弦の音を拾い増幅させるマイクです)を広めたこともあり、まあストラトを世界中に売った立役者と言っても過言ではないでしょう。

そしてストラトならこの人も。ジェフ・ベックです。
かつてはレスポールも弾いていましたが、もう長い間ストラト派のイメージですね。
私はかつてフェンダー・ジャパンのショールームでベックのシグネチャー(特注専用)モデルの複製版を試奏させてもらいましたが、ネックの形状がとんでもなくへんで驚きました。だいたいネックの握りって半楕円なんですが、ベックのシグネチャーはほぼ三角という独特のグリップ感でした……。

さらにディープ・パープルのリッチー・ブラックモアです。「スモーク・オン・ザ・ウォーター」や「ハイウェイ・スター」ではなく「ストレンジ・カインド・オブ・ウーマン」を選んでみました。

あとはピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモアやビートルズのジョージ・ハリソンもソロ転向後しばらくはストラトを抱えた姿が印象的でした。

次はテレキャスターです。

テレキャスといえば、ストーンズのキース・リチャーズです。
キースは何種類かのオープンチューニング(※ざっくり言うと、左手でコード(和音)を押さえなくても、手放し状態ですでに何らかのコードが鳴る状態)を施したギターを使います。ストーンズのジャーン♪とかジャカジャーン♪といったイントロのほとんどは、そこから生まれたものです。しかも、その中〜高音域の響きを重視すべく、メインのギターでは一番太い6弦を外しています。つまり5弦テレキャスなのです。

ちなみにこれは有名な81年のツアー映像ですが、1分10秒あたりで、キースが黒のテレキャスカスタムで、ステージに闖入した観客を速攻でブン殴ってます(笑)。

キースにかかると、ギターもいろいろな使い方があるようです(笑)。

■ ギブソン使いのUKミュージシャン

次はギブソンです。
まずは太い鳴りが自慢のレスポール。ジミー・ペイジにご登場いただきましょう。衣装もキテます(笑)
この人はバイオリンの弓(ボウ奏法)でレスポールを弾いたり、ストリングベンダー(※弦を引っ張り上げて音程を上げる装置)や自動チューニング機能搭載(!)のギターを使うなど、ギミックがお好きな御大でもあります。極めつきは「天国の階段」の名演と共に知られる、ギブソンのダブルネックSGギターでしょう。
そして北アイルランド出身のゲイリー・ムーア。惜しくも11年に逝去しましたが、ハードロックからブルースへ転向した際の“鳴きの名曲”がこちら。のちにクラプトンもカバーをしました。

■ エピフォン使いのUKミュージシャン

現在ギブソン傘下のエピフォンは、カジノモデルなど、セミアコタイプの箱型ボディが有名です。ここで90年代組からオアシスを。

■ リッケンバッカー使いのUKミュージシャン

UKスタイルとは切ってもきれない、繊細な鳴りが持ち味のリッケンバッカーもご紹介。
やっぱりビートルズとジャムですかね。
このビデオではジョンもジョージもリッケンを抱えています。

そしてジャムは「イン・ザ・シティ」です。
この2組のイメージが強く、モッズなサウンドのミュージシャンたちに愛されるようになりました。

■ UK生まれのギターブランド

じゃあイギリスのギターブランドは皆無なのか? そうではありません。ひとつにはゴードンスミスというブランドがあります。
フォルムはギブソン/フェンダーそれぞれのモデルのアレンジ風味。日本で知られたミュージシャンは使用していませんが、UKのロック/パンク系に愛されているようです。

あとはゼマティス。
こちらはシルバーの彫金やパール張りで知られる工芸品のようなルックスのギターです。有名なユーザーはロン・ウッド。日本でも現在ロンドン在住の布袋寅泰が使用しています。
本当に超ざっくりの駆け足でしたが、いかがでしたか? もちろんヴォックスやダンエレクトロ、ギルド、グレッチなど、まだまだUKミュージシャンとギターブランドの関わり合いやエピソードは尽きませんが、とりあえず今日はこのへんで。

かつてギターを弾いていたけどホコリをかぶってしまっている方も、最近興味が湧いている方も、よかったらぜひ手にとってみてください。私も腕こそ人並み以下ですが、やっぱりちょっとでも弾けると楽しいものですよ(笑)。

個人的にはBRITISH MADE のブランドだと、これからの季節、マカラスターのニットやジョセフ・チーニーのチャッカブーツとギターなんて最高にクールな相性だと思います。しかも今秋から今冬は、クイーンやクラプトンのヒストリー映画も日本公開されます(追ってご紹介の機会があれば)。ぜひ、新たなギターの魅力を見つけてください。ではまた!

Text by Uchida Masaki

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内田 正樹

内田 正樹

エディター、ライター、ディレクター。雑誌SWITCH編集長を経てフリーランスに。音楽をはじめファッション、映画、演劇ほか様々な分野におけるインタビュー、オフィシャルライティングや、パンフレットや宣伝制作の編集/テキスト/コピーライティングなどに携わる。不定期でテレビ/ラジオ出演や、イベント/web番組のMCも務めている。近年の主な執筆媒体は音楽ナタリー、Yahoo!ニュース特集、共同通信社(文化欄)、SWITCH、サンデー毎日、encoreほか。編著書に『東京事変 チャンネルガイド』、『椎名林檎 音楽家のカルテ』がある。

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