映画『ロケットマン』公開。エルトン・ジョンの5曲 | BRITISH MADE

BM RECORDS TOKYOへようこそ 映画『ロケットマン』公開。エルトン・ジョンの5曲

2019.08.08

『ボヘミアン・ラプソディ』製作総指揮者の監督作

エルトン・ジョンの半生を描いた映画『ロケットマン』が公開されます。
シンガーソングライターとしてのエルトンの功績は、以前に彼のトリビュートアルバムがリリースされた際にも綴りました。彼のシングルとアルバムの総売り上げは、ビージーズやストーンズ、ピンク・フロイドを上回る約3億枚を誇ります。

エルトンを演じるのはタロン・エガートン。以前、エルトン本人もカメオ出演していた映画『キングスマン:ゴールデンサークル』で、若きエージェント、エグジーを演じていました。
かなり衝撃的な本人役でのカメオ出演でしたが、このキャスティングを経てのあの共演だったと、いま思えば納得です。

タロンは本作で、ほぼ全てのエルトンの楽曲を自らの声で歌っているとのこと。彼は17年の映画『SING/シング』でもエルトンの「アイム・スティル・スタンディング」を歌っていました。演技もさることながら歌が上手いんですよね。
私は現状、『ロケットマン』本編については未見です。どうやらミュージカル的な要素を織り込みながら、不仲な両親の元、孤独を感じながら育ったレズナルド・ドワイトが、エルトン・ジョンとして音楽的才能を開花させ、ソングライティングのパートナーとなるバーニー・トーピン(ジェイミー・ベル)との出会いを経て迎える成功と挫折の物語が描かれている模様です。

本作の監督はデクスター・フレッチャー。彼は、やはりここでも以前に書いた大ヒット作『ボヘミアン・ラプソディ』の最終監督とポストプロダクション(※本作は途中で監督が交代。正式クレジットは製作総指揮)を務めています。音楽を映像で表現する手腕に期待が募ります。そしてプロデューサーの一人にクレジットされているのは『キングスマン』シリーズを手掛けたマシュー・ボーンという強力な布陣です。

今回は、同作のサウンドトラックにも収録されている楽曲のなかから、劇場へ向かう前に「まずはチェックしておきたい」、広く知られる5曲をピックアップしてみました。

1.「アイ・ウォント・ラヴ」

ストレートなタイトルが前述の彼の少年時代と重なります。2001年リリースのアルバム『ソングス・フロム・ザ・ウエストコースト』収録の曲です。ビデオでリップシンク出演をしているのはロケットマンならぬアイアンマンでおなじみロバート・ダウニー・Jrです。

余談ですが当時のロバートは薬物依存を克服した直後でした。その後、『アイアンマン』で完全復活を果たすわけですが、当時のニュースを読み返すと、同じように薬物依存の経験があったエルトンが、復帰を果たすロバートへと「手を差し伸べた」キャスティングだったと報じられています。「愛がほしいけど、俺には無理なんだ」という歌い出しが、当時のロバートとの葛藤ともだぶります。

2.「ユア・ソング(僕の歌は君の歌)」

1970年リリースのアルバム『僕の歌は君の歌』に収録。バーニーが朝食をとっている間の10分間で、彼の歌詞に対してエルトンが曲を付けたことで生まれたというエピソードは、映画でも描かれている模様です。この曲を聴いたジョン・レノンは「俺たち(ビートルズ)の登場以来、最も新鮮な出来事」とエルトンの登場を称えました。イギリスでも何度もヒットした、あまりに有名な彼の代表曲です。

なお、こちらの映像は、この曲でエルトンとタロンが共演を果たした際の映像です。

3.「ロケット・マン」

映画の表題曲でもあるこの曲は72年にリリースされたエルトンにとって初のアルバムチャート全米1位を記録した『ホンキー・シャトー』に収録。バーニーは作詞にあたり、レイ・ブラッドベリの短編(『刺青の男』収録の『ザ・ロケット・マン』)にインスパイアされて生まれたそうです。働く現代人の孤独と悲哀が宇宙飛行士の姿によって描かれています。

4.「僕の瞳に小さな太陽」

壮大なスケールの旋律を持ったこの曲は74年リリースのアルバム『カリブ』収録。オリジナル音源のホーンアレンジはデル・ニューマン。さらにコーラスではビーチ・ボーイズのメンバーが参加しています。91年にはウェンブリー・アリーナで行われたジョージ・マイケルのステージに客演した際の音源がデュエットシングルとしてヒットしました。エルトンがシンガーとしての自信を得たという名バラードです。

5.「グッバイ・イエロー・ブリック・ロード」

73年リリースの2枚組アルバム『黄昏のレンガ道』に収録。美しいオーケストレイションは「僕の瞳に小さな太陽」と同じくデル・ニューマン。ジュディ・ガーランド主演の名画『オズの魔法使い』にインスパイアされて誕生したそうです。成功から夢が現実となっていた当時のバーニーが、自身の詩人としての至上を郊外生活の尊さによって描いていた一曲とのことです。

駆け足でピックアップした以上5曲は、前述の通り、本作のオリジナルサウンドトラックにも収録されています。
ロケットマン
成功の陰でもがき苦しみ、マネージャーであり恋人だったジョン・リード(リチャード・マッデン。ジョンは75から78年までクイーンのマネージャーも務めています)の存在に翻弄され、薬物中毒にまで堕ちてしまうエルトン。そんな彼が本編のなかでどのようなラストを迎えるのか、私も劇場で確認したいと思います。

映画『ロケットマン』は8月23日より公開です。ではまた!

(参考文献:エルトン・ジョンの日本盤アルバムの各ライナーノーツ)

Text by Uchida Masaki

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「キングスマン:ゴールデン・サークル」公開!
エルトン・ジョンに捧げるトリビュートアルバム


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内田 正樹

内田 正樹

エディター、ライター、ディレクター。雑誌SWITCH編集長を経てフリーランスに。音楽をはじめファッション、映画、演劇ほか様々な分野におけるインタビュー、オフィシャルライティングや、パンフレットや宣伝制作の編集/テキスト/コピーライティングなどに携わる。不定期でテレビ/ラジオ出演や、イベント/web番組のMCも務めている。近年の主な執筆媒体は音楽ナタリー、Yahoo!ニュース特集、共同通信社(文化欄)、SWITCH、サンデー毎日、encoreほか。編著書に『東京事変 チャンネルガイド』、『椎名林檎 音楽家のカルテ』がある。

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