テーラーメイドカーペット 英国発祥のウィルトン織機とブリティッシュウールの世界 | BRITISH MADE

テーラーメイドカーペット 英国発祥のウィルトン織機とブリティッシュウールの世界

2018.03.03

イギリスで初めて機械化されたウィルトン織機

カーペットとイギリスはとても深い関係があります。カーペットがはじめて機械化されたのは、1700年台、イギリスの産業革命の時代。イギリス産のウールは、反発力に優れカーペットにもとても適しています。ウールカーペットの文化が根付いているイギリスでは、日本のビジネスホテルのようなB&Bにも、しっかりウールカーペットが敷き込まれています。
そんなイギリスと深い関係にあるカーペットのものづくりや、ブリティッシュウール、堀田カーペットのつくるラグブランド「COURT」について、ご紹介したいと思います。
20180305_hotta_main COURTの1stコレクション「Fisherman’s COURT」
最初に、カーペットの歴史をご紹介したいと思います。
カーペットの歴史は古く紀元前に遡ります。もともとカーペットはCARPERE(カルペラ)が語源とされ、遊牧民が動物の革を床に敷いて使われ、その後動物の毛を紡いでそれを織って床に敷いて使われていました。
現存する最も古いカーペットは、紀元前5世紀ごろのものだとされる、「パジリク絨毯」が、1949年にロシア人考古学者によって南シベリアで発掘され、現在はロシアのエルミタージュ美術館に貯蔵されています。

日本ではじめてカーペットがつくられたのは1688年、現在の佐賀県(鍋島地域)で綿を使ってつくられ、「鍋島緞通」と呼ばれています。当時佐賀藩から将軍家への献上品としてつくられていました。
その後、兵庫県赤穂市「赤穂緞通」、大阪府堺市「堺緞通」、山形県「山形緞通」、 がつくられるようになりました。
長い歴史の中で生み出されたカーペットが、初めて機械化されたのは、イギリスの産業革命の時代になります。イギリス南西部にあるウィルトン市は、中世から羊の飼育が盛んで、それをもとに1700年台に機織り機をつくりあげました。それが現在堀田カーペットでも使っている「ウィルトン織機」の原型となっています。
20180305_hotta_machine5 ウィルトン織機
20180305_hotta_machine4 ジャカード
堀田カーペットでは、50年から60年くらい前につくられた日本製のウィルトン織機が9台稼働しています。(日本で稼働しているウィルトン織機は20台程度、メーカーも数社しかありません)
織機メーカーが日本になくなってしまい、職人の手で当時の織機をメンテナンスしながら大切に使用しています。

ウィルトン織機の大きさは、幅8m、長さ20mほどある巨大な織機で、表面に見えない糸も含めると最大で10,000本程度の糸を同時に織り込んでいきます。シャトルと呼ばれる緯糸(ヨコ糸)を飛ばす道具、ジャカードと呼ばれる柄出し装置、織機のセットアップ、少しでもタイミングがくるうと織ることができません。ウィルトン織機は、「織工」と呼ばれる職人が、1台に対して1人必ず必要です。織工は目で糸を確認し、耳で織機の音を聞き、感覚を研ぎすませながら製織していきます。一人前の職人になるには10年ほどの年月がかかります。
20180305_hotta_ito 糸を供給する「クリール」という場所にセットします。全て手作業で行われ、前に使った糸をハサミで切って新しい糸を結んでいく作業です。
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ウィルトン織機は、COURTの1stコレクションのようなニットの柄のような商品、ホテルの宴会場につかわれるような多彩なデザイン表現、住宅につかわれるような無地調の商品、機械のセットアップによって様々な商品を織ることができます。
ウィルトン織機は、そのデザイン性だけではなく、経糸(タテ糸)と緯糸(ヨコ糸)を丁寧に織り上げていくことから、耐久性にも大変すぐれ、5つ星ホテルや高級ブティックでも使用されています。
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COURTは、このようなウィルトン織機の特徴を活かし、イギリス産のウールを中心につくられたラグブランドです。

ウールカーペットの魅力
〜ブリティッシュウールがカーペットに適している訳〜

ウールは、皆さんご存知のとおり「羊の毛」です。羊の種類は、世界中に3000種類以上いると言われています。人間の髪の毛が、人種や個人によって、黒、ブロンド、カーリー、細い、太い、と様々あるように、羊の毛も種類や育っている環境、お尻の毛やお腹の毛などによって、それぞれ違う性質を持っています。皆さんがイメージする羊は、「白」だと思いますが、安定的に白い毛を手に入れるため、品種改良の末に白い羊が出来上がりました。
ですので、羊には、黒い羊、グレーの羊、ベージュの羊、など染色では手に入れることのできない、独特の色合いや風合いを持っている羊がたくさんいます。
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COURTの2ndコレクションは、そんなウールの魅力を表現したコレクションになっています。特徴あるウールを、染色することなく羊の毛の色そのまま使用して、ラグをつくっています。
その中でも、ブリティッシュウールは土足で使うこともあるカーペットにとっては、最適なウールです。弾力性に優れ、反発力があり、足で踏んだときの感触は他のウールにくらべて大変心地がいいですが、一方で荒々しい毛であることから、素肌でふれると少しイガイガするように感じることもあります。
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COURTの1stコレクション「Fisherman’s COURT」、3rdコレクション「College COURT」ではブリティッシュウールを中心に使用しています。
20180305_hotta_college COURTの3rdコレクション「College COURT」
特に1stコレクションでは、ブリティッシュウールを使用し、ハリスツイードの生地と同じ、「綿染め」という染色方法を採用しています。
一般的に色をつけるとき、「糸」になった状態で染色する「糸染め」ので、「赤」は「赤」にしか染まりませんが、「綿染め」は、羊の綿の状態で予め20色ほど染色し、それを混ぜ合わせて糸をつくっているので、大変奥行きのある色合いが表現できるのが特徴です。また、様々な色が混じっていることで、汚れが目立ちにくいということも特徴です。

ウールは、自宅で使用するカーペットに最適な素材です。

20180305_hotta_room 自宅の敷き込みのカーペット
1. 汚れがつきにくく、落としやすい。
基本的にウールは水を弾く性能を持っています。冷たい水をこぼしても簡単には染み込みません。また、仮に汚れても、遊び毛と呼ばれる毛が少しずつカーペットから出てきます。それを掃除機で吸い取ることによって、表面の汚れを少しずつ落としてくれる効果があります。

2. 調湿効果に優れ季節に関係なく使用できる。
ウールのスーツが夏場でも快適なことと同じように、ウールカーペットも夏場でも快適におすごしいただけます。年中さらさらの質感を維持してくれます。6帖の部屋にウールカーペットを敷き込むと、2L程度の湿気を吸い取ってくれるため、結露の対策にも向いています。

ぜひ皆さんのご自宅で、ウールの魅力を感じていただきたいと思います。

「COURT」のPOP–UP STOREを銀座店で開催中
2018年2月22日(木)〜3月18日(日)

Text by Masaya Hotta / 堀田 将矢


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COURT(堀田カーペット)

COURTは堀田カーペットが手がけるウールラグブランドです。
住宅の敷き込み用カーペットが少なくなっている現代。
私たちは、ウールカーペットの心地よい暮らしを伝えていくために、ウールカーペットをもっと身近なインテリアにしたいと思いました。敷き込み用カーペットの暮らしを伝えるきっかけになるブランドになりたいと思っています。

この連載の中で、そんな「床材」の中の「カーペット」について、そのものづくりや暮らしについてご紹介し、皆さんの暮らしの中に、「カーペット」が空気のようで、それでいて手放せない、そんな暮らしの一部になっていくことを願ってご紹介していきたいと思います。

http://hdc.co.jp/court/

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