ウェールズでようやく出会えた、噂の(?)岩海苔「ラバーブレッド」 | BRITISH MADE

English Garden Diary ウェールズでようやく出会えた、噂の(?)岩海苔「ラバーブレッド」

2021.08.19

これまでたくさんのイギリスの食べ物に出会い、味わってきました。それを5年にわたり、雑誌のコラム「英国の口福を探して」にてご紹介してきたのですが、ずっと食べたいと思いながら、その機会がなかったのが「ラバーブレッド」。ウェールズ地方で食されている岩海苔です。

「イギリスで海苔?」と驚かれたかもしれませんね。そうなんです、ウェールズでは日本と同様に海苔を食べるんです。

ところで、まずはウェールズについてご紹介しましょう。

ウェールズは、グレートブリテン島の南西にあり、グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国(The United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)を構成する国の一つです。
首都カーディフまでは、ロンドンから車で約3時間。電車でならロンドン・パディントン駅から約2時間の距離にあります。人口約313万人。600を超える古城があり、歴史と美しい自然で知られる場所。また、かつては産業革命の原動力のひとつともいえる炭鉱の町としても栄えました。

ウェールズの食べ物といえば、ビスケットのような形なのに「ケーキ」と名前がついた、食べ出すと止まらなくなるお菓子ウェルシュケーキや、バラブリスというフルーツケーキなどが有名です。これらは以前食べたことがあったのですが、ラバーブレッドは三度目のウェールズ訪問の今回、初めて体験することができました。

ヴィクトリア時代開設の市場で海苔に出会う

カーディフに着いた翌日、ウェールズ在住の友人に教えてもらい、ラバーブレッドを目指してカーディフの街中にあるカーディフ・マーケットに向かいました。
カーディフマーケット カーディフマーケットの入り口。
カーディフマーケット ヴィクトリア時代から続く市場の建物。映画やドラマなどにも登場している。
この場所には18世紀からファーマーズ・マーケットがあったと言われていますが、現在の形のカーディフ・マーケットは1891年にオープンしました。1階部分とバルコニーと呼ばれる2階部分にもお店があり、野菜や肉、鮮魚などの生鮮品から、ウェルシュケーキや、バラブリスなどのお菓子、また古書やレコード、生地や洋服など、かなりバラエティに富んだ品揃えの市場です。
ウェルシュケーキ 市場内で手作りされているウェルシュケーキ。
ウェルシュケーキ ウェルシュケーキはイングランドのスーパーなどでも売られているが、焼きたては格別おいしい。
さて、お目当てのラバーブレッドを売っているのは、魚屋さん(フィッシュモンガー)です。トリニティストリートという通り側のマーケット入り口すぐのところにあるお店なので、すぐに見つけることができました。アシュトンズ(Ashton’s)というこのお店は、1866年からこの市場でビジネスをしているという老舗です。店頭にはスコットランド産のサーモンや燻製タラなど、様々な魚介類が並んでいますが、お目当てのラバーブレッドは見当たりません。すると、友人が陳列ケースの一番端にあるのを見つけてくれました。
魚屋 ラバーブレッドを売っている魚屋さんアシュトンズ。
ラバーブレッド お目当てのものは、一番隅っこに置かれていました!
初めてみたラバーブレッドは、焦茶に緑が混ざったような色で、のっぺりとしたペースト状のもの。 子供たちは見るなり ‘cowpat(牛の糞)’なんて呼んでいましたが、その気持ち、わからなくもない(笑)。でも、海苔の佃煮やもずくを見慣れている日本人には、色や質感にそれほど違和感はありません。
ラバーブレッド 買ってきたラバーブレッド。見た目はまさに海苔の佃煮。
この日は、食通の友人がラバーブレッドの食べ方を教えてくれるというので、横に並んでいたコックルと呼ばれるアサリを小さくしたような貝も一緒に購入。

お店の人によれば、ラバーブレッドもコックルもウェールズのペンクラウド(Penclawdd)というエリアで採れたものとのこと。ここはとくにコックルをはじめとする海産物で有名なエリアだそうです。

さて、ようやく出会えたラバーブレッド。味は日本の海苔を思い起こしてなんとなく想像できるものの、佃煮ではないペースト状の海苔をウェールズの人たちがどんな風に味わうのか、興味津々でした。

パンよりご飯が欲しい!?

友人が教えてくれたラバーブレッドの食べ方は2つ。ひとつはオーツ麦と混ぜて、ちょうどウェルシュケーキのような、小さな円盤型にしたものを、ベーコンを調理した時の脂で焼く方法。これにレモンを絞って、カリカリに焼いたベーコンと一緒に食べます。香ばしく焼けたオーツ麦に磯の香りがほんのりするラバーブレッドは相性がよく、おせんべいのようにも感じます。ラバーブレッドの塩味をレモンの酸味が緩和して、ベーコンと合わせてもしょっぱさをそれほど感じません。
さらに「ちょっとポッシュに(高級感を出して)」と言って、友人は一緒に買ってきたコックルの身を混ぜたラバーブレッドケーキも作ってくれました。コックル自体は、その剥き身に塩とビネガーをかけて食べるだけでもおいしいもの。ラバーブレッドに混ぜれば、さらに栄養価が上がるのは間違いありません。コックルが入っても食感がやや変わっただけで、それほど味が変わるわけではありませんでしたが(基本的に磯味なので)、確かに贅沢感はありました(気のせいかもしれませんが)。
ラバーブレッド 友人お手製のベーコンとオーツ麦、コックルとラバーブレッドで、調理開始。
ラバーブレッド まずは自分の好きな量のオーツ麦とラバーブレッドを混ぜ合わせます。
ラバーブレッド もっとラバーブレッドの割合を多くする人もいますが、今回はカリカリ感を出すためにも、オーツ麦を多めにしてみました。
ラバーブレッド ミニハンバーグのようなパテ状にまとめます。
ラバーブレッド 表面に小麦粉をまぶします。
ラバーブレッド ベーコンの脂を使って、表面に軽く焦げ目がつくまでフライパンで焼きます。
もうひとつは、ウェールズの観光ガイドなどでもよく紹介されている、食パンに合わせる方法。こちらは温めたラバーブレッドを、バターを塗ったトーストの上にジャムのようにのせてレモン(またはビネガー)を絞って食べます。ラバーブレッド自体はほんのり磯の香りと味がするだけで、強い味付けはなされていないため、こちらは好き嫌いが分かれそう。海苔の佃煮を食べたことがある身としては、食感にそれほど違和感はないものの、どうせならやはり醤油や味醂で煮込んで、白ごはんにのせて食べたいと思いました。
ラバーブレッド レモンを絞って、カリカリに焼いたベーコンと共に召し上がれ!
友人によれば、他にも、イングリッシュブレックファストやロースト料理のお皿にほんの少しのせて、薬味のようにして食べることもあるそうです。

カーディフから戻った後、調べてわかったことですが、実は日本の海苔養殖には、イギリスの藻類学者であったキャサリーン・メアリー・ドリュー=ベーカーさんの研究が多大な影響を及ぼしているといいます。彼女が発見した海苔の生態を知ることにより、日本の海苔養殖において、海苔の胞子を人工的に育てる養殖法が考えだされたというのです。
イギリスと日本が海苔を通じてつながっていただなんて、ウェールズのラバーブレッドのおかげで知ることができました。

カーディフマーケット以外でも、ウェールズ内デリカテッセンなどで、缶詰のラバーブレッドが売られていることもあります。また、オンラインでこのラバーブレッドを購入することも可能です。みなさんもぜひ、ウェールズの海の幸ラバーブレッドを試してみてください。

*オンラインでの購入:
www.parsonspickles.co.uk/products-page/

*カーディフマーケット(Cardiff Market)
住所:St Mary Street, Cardiff, CF10 1AU
営業時間:8:00~17:00(月曜~土曜)

Photo&Text by Mami McGuinness


plofile
マクギネス真美

マクギネス真美

イギリス在住18年のライター、ライフコーチ。東京での雑誌編集を経て渡英。 2004年よりイギリスを拠点に多媒体にて企画、編集、取材、執筆、コーディネイト、撮影を手がける。テーマはライフスタイル、ガーデニング、料理、人物インタビューや旅ガイドなど。メディアを問わず、イギリスの素敵なひと、場所、ものごとをひとりでも多くの方に伝えたいと活動している。『英国ニュースダイジェスト』ではイギリスの食に関するコラム「英国の口福を探して」を5年にわたり連載。イギリス料理についてのセミナー講師をしたり、文化放送、NHKラジオ、TOKYO FM等のラジオ番組に出演も。コーチングにより人生再起動ができた経験を経て、現在はライフコーチとして、人生をより良く生きたい方へのサポートも行っている。

▶︎ mamimcguinness.com
▶︎ twitter
▶︎ Facebook
▶︎ Instagram
▶︎ note

マクギネス真美さんの
記事一覧はこちら

同じカテゴリの最新記事