R.I.P. Ma’am. エリザベス女王を偲んで | BRITISH MADE

English Garden Diary R.I.P. Ma’am. エリザベス女王を偲んで

2022.09.21

2022年9月8日、エリザベス女王がスコットランドのバルモラル城にて亡くなられました。96歳というご高齢にもかかわらず、亡くなる二日前にも新首相リズ・トラス氏任命の公務を果たしていたという、まさに生涯現役を貫いた人生でした。


1952年2月6日に父親であるジョージ6世が急逝したため、25歳で即位。君主の座についたエリザベス女王。今年の6月に戴冠70周年「プラチナ・ジュビリー」の祝典が盛大に開催されたのは記憶に新しいところでした。

当然のことながら、イギリスのメディアでは連日、エリザベス女王についてのニュースが伝えられ、その生涯を伝えるドキュメンタリー番組なども数多く放映されています。それらを見ると、70年間の在位中にエリザベス女王がこの国に残したものはほんとうにたくさんあったということを、あらためて感じています。

たとえば、ロンドンの地下鉄に新しく開通した路線は、女王の名前を冠して「エリザベスライン」と名付けられたことは7月のコラムでご紹介しました。

ほかにもイギリスの生活の中には、エリザベス女王に関連したものが色々と存在しているのをご存知でしょうか。


*現金(紙幣と硬貨)

R.I.P. Ma’am. エリザベス女王を偲んでカードでの支払いがメインのイギリスでは、最近では現金を使う機会は極端に減っていますが、紙幣と硬貨、どちらにもエリザベス女王の肖像。手元の硬貨を探すと、1968~1984年まで使用された、アーノルド・マーチンがデザインした硬貨も見つかりました。

イギリスで流通している紙幣には、エリザベス女王の顔が印刷されています。初めて女王の顔がイギリスの紙幣に印刷されたのは、1960年発行の1ポンド札でした。

現在、女王の顔が描かれた紙幣は45億枚流通していて、それは総額約800億ポンドに相当すると言われます。女王逝去にともない、現在使われている紙幣から新国王であるチャールズ3世の顔をあしらった紙幣に交換されることが決まっています。ただし、すぐに全てが変わってしまうというのではなく、少なくとも2年はかかるそうです。

硬貨にもエリザベス女王の肖像が使われており、1953年に発行された最初のデザインから数えて、これまで5種類のポートレートが登場しています。

最新のデザインは2015年に発行されたものですが、1953年に発行されたもの以外の4種類は、現在でも流通しているそうです。また、紙幣と同様に硬貨も新国王の肖像へとデザインが変更される予定ですが、その期限については正式に発表されてはおらず、ロイヤルミント(王立造幣局)によれば、現段階ではまだエリザベス女王がデザインされた硬貨を発行しているということです。


*切手とポスト

R.I.P. Ma’am. エリザベス女王を偲んで記念行事のたびに発行されたエリザベス女王をデザインした切手。もちろんコレクターアイテムとなっています。写真はエリザベス女王在位60周年を記念したダイヤモンド・ジュビリーの際に発行されたもの。
R.I.P. Ma’am. エリザベス女王を偲んでイギリスの郵便ポストに記されたエリザベス女王の紋章“EIIR”。チャールズ3世の紋章は“CR”または“CIIIR”としてポストに表示されるのではないかといわれている。

イギリスの郵便ポストには、エリザベス女王の“ER”という王室紋章が刻まれていますが、新国王に変わったからといって、これらのポストが撤去されることはないと、ロイヤルメール(イギリスの郵便事業を行う企業)が発表しています。

切手にもエリザベス女王の肖像が使用されていますが、これについても、今後、新しい君主の横顔の画像を使用した切手が発行されることになっています。その日程については、バッキンガムパレス(王室)と相談の上、決定次第発表するということが伝えられているだけで、詳細についてはまだ国内でもわかっていません。

日本と同様に、イギリスでも記念切手の販売は盛んで、コレクターアイテムとして人気がありますが、エリザベス女王に関する記念切手は、結婚記念日や誕生日、その他のイベントなども合わせて81種類が発行されたそうです。

そのエリザベス女王の記念切手の数々は、ロイヤルメールのウェブサイト上で見ることができます。


*パスポート

R.I.P. Ma’am. エリザベス女王を偲んでEU離脱によってデザインや色が変わったイギリスのパスポート。時をそれほど経ずして、またリニューアルが必要となった。

私はイギリスのパスポートを所持してはいませんが、家族のものを見せてもらうと、表紙を開いた1ページ目には、“国務長官は、英国女王陛下の名において、パスポートの持ち主が自由に通行できるように許可し、必要な援助と保護を与えるよう、すべての関係者に要請する”という言葉が書かれています。英語で“Her Britannic Majesty’s Secretary” “Her Majesty” という部分が、国王が男性となることで、このままでは不適切な文章となってしまいます。そのため、これらはすべて男性代名詞に変更する必要があります。

女王の死後、イギリスのパスポートオフィスには「今持っているパスポートが使えなくなって、再取得しなくてはいけないのか?」という問い合わせがあったようですが、すでに発行されたものについては、次の更新まで、現状のものを使用できるということになっているそうです。

ということで、イギリス人の夫は、2030年の更新まで今のままのパスポートを使えることになりますが、私としては、早く新しいデザインの実物パスポートを見てみたいという気もしていたので、ちょっと残念です。


このようにみてくると、チャールズ3世という新国王が誕生したとはいえ、すぐにエリザベス女王の遺したものが取り替えられるというわけではなさそうです。ただ、少しずつ変化が起こっていくことは間違いなく、まさにイギリスの歴史が大きく変化する時に自分がこの場所に住んでいるということを不思議に感じたりもしています。

これを読んでくださっている皆さんが、つぎにイギリスを訪ねたときには、今日ご紹介したものたちはどのように変化しているでしょうか。ぜひ、歴史の変わっていくプロセスを実感しに、イギリスにいらしてみてくださいね。

R.I.P. Ma’am. エリザベス女王を偲んで2012年のダイヤモンド・ジュビリーの際に発行されたオイスターカード(ロンドンの公共交通機関などで利用できる非接触型ICカード)。女王の肖像を使った商品は王室が許可したものから、パロディ的なものまで、イギリス内では枚挙にいとまがない。

Photo&Text by Mami McGuinness


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マクギネス真美

マクギネス真美

英国在住20年のライフコーチ、ライター。オンラインのコーチングセッションで、人生の転換期にある方が「本当に生きたい人生」を生きることを日本語でサポート。イギリスの暮らし、文化、食べ物などについて書籍、雑誌、ウェブマガジン等への寄稿、ラジオ番組への出演多数。
音声メディアVoicy「英国からの手紙『本当の自分で生きる ~ 明日はもっとやさしく、あたたかく』」にてイギリス情報発信中。

ロンドンで発行の情報誌『ニュースダイジェスト』にてコラム「英国の愛しきギャップを求めて」を連載中。

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