ブリティッシュ“ライク” イギリス映画で棚からひとつかみ 〜映画「泥棒貴族」〜

2020.04.23

泥棒貴族
この場で紹介する予定だった作品も含め、新作映画の公開がコロナウイルスの影響を受けて続々と延期になっている。情勢が落ち着きを取り戻し、公開日が定まったあかつきには改めて紹介したい。そのような理由から、今回は久々に自身のアーカイブから、イギリスに関連する作品をイギリス映画で棚からひとつかみと題して紹介したい(どこかで聞いたことがあるようなタイトルだが)。

紹介する映画は「泥棒貴族」(原題GAMBIT)だ。本作は、1966年にアメリカ、イギリス、フランスで制作された。主演は、僕の大好きな英国人俳優マイケル・ケインだ。この1965〜1967年にかけては、「国際諜報局」、「パーマーの危機脱出」、「泥棒貴族」、「10億ドルの頭脳」と、彼のキャリアの中でもとりわけ好きな作品が多い。以前、映画監督ガイ・ハミルトン追悼の回で「国際諜報機局」と「パーマーの危機脱出」を紹介した。「泥棒貴族」は、先述した二作のようなクールなスパイ物とは作風が異なり、滑稽さを帯びているのが特徴だ。マイケル・ケインには、どことなく頼りなさと不安を覚えるのだが、最終的にはそれを払拭するような展開が痛快だ。
冒頭の30分はマイケル・ケイン扮するハリー・ディーンの想像の中という類稀な展開だ。このシークエンスによって作品に惹きつけられたといっても過言ではない。やはり、マイケル・ケインはクールでカッコいいじゃないかというイメージを植え付けられた。ところがどっこい。それ以降は何かが違う。犯行を完璧に遂行したいハリーと、実際にはどこか間抜けな三枚目の彼との差に大いに笑わされてしまうからだ。同様に、シャーリー・マクレーン扮するニコールは、ハリーの想像の中ではクールな相棒だったはずが、蓋を開けてみればお茶目でお喋りと、どうにもイメージした人物とはかけ離れているのである。あのマイケル・ケインが、ボタンを掛け違い、冷静さを欠く シチュエーションはどう考えても面白おかしい。

さて、マイケル・ケインに関して書き始めると終わりが一向に見えなくなってしまうため、ここで彼のパートナー役を務めたシャーリー・マクレーンに着目したい。劇中では、実際のニコール、ハリーの想像の中のニコール、さらにディーン夫人を演じるニコールの三役を見事に使い分けている。作風を破壊せずに芝居で三役の違いを表現している点は見事としか言いようがない。

そして、その見事な芝居をアシストするシャーリー・マクレーンの個性的なメイク、ヘアスタイル、衣裳も注目に値する。例えば、夫人役を演じるニコールはオリエンタルで個性的なスタイルで、本来のニコールはコケティッシュでチャーミングなスタイルだ。中でもハリーを見かねたニコールが彼の所業に加担するシーン。カーキのスポーティなパンツスタイルは非常にモダンで印象に残った。本作の衣裳を担当したのはジーン・ルイス。長年コロンビア・ピクチャーズで活躍したコスチュームデザイナーだ。数多の作品の衣裳を手掛け、本作でもアカデミー賞衣裳デザイン賞にノミネートされている。1962年、マリリン・モンローがジョン・F・ケネディ大統領の誕生日に“ハッピーバースデー”を歌った際のドレスをデザインしたのも彼である。

なお、本作は2012年にコリン・ファース主演で「モネ・ゲーム」(原題は泥棒貴族と同様 GAMBIT)というタイトルでリメイクされている。自宅で時間を費やすことが多い今、余暇の活用に名作を鑑賞してみてはいかがだろうか。
泥棒家族
「泥棒貴族」DVD
発売・販売 :復刻シネマライブラリー
GAMBIT © 1968 Universal Pictures.Renewed 1994 by Universal Pictures.
All Rigths Reserved.
Text by Shogo Hesaka


plofile
部坂 尚吾

部坂 尚吾

1985年山口県宇部市生まれ、広島県東広島市育ち。松竹京都撮影所、テレビ朝日にて番組制作に携わった後、2011年よりスタイリストとして活動を始める。2015年江東衣裳を設立。映画、CM、雑誌、俳優・タレント・文化人のスタイリングを主に担い、各種媒体の企画、製作、ディレクション、執筆等も行っている。山下達郎と読売ジャイアンツの熱狂的なファン。
江東衣裳
http://www.koto-clothing.com

部坂 尚吾さんの
記事一覧はこちら

同じカテゴリの最新記事