イギリスの人々が普段飲んでいる紅茶についての真実(!?) | BRITISH MADE

English Garden Diary イギリスの人々が普段飲んでいる紅茶についての真実(!?)

2021.03.18

イギリスといえば紅茶。イギリスといえば優雅なアフタヌーン・ティー。そんなイメージを抱いている方も多いと思います。でも実は、イギリスの人たちはとても気楽に、思い思いのやり方で紅茶を楽しんでいます。今日は、そんなイギリスの日常で繰り返されている紅茶の楽しみ方をご紹介します。

ティーカップではなくマグカップで飲むのが基本

マグカップ イギリスでは誰もが自分専用のお気に入りマグを持っている。

私がイギリスに暮らすようになって知ったのは、ほとんどの人がマグカップを使ってティーバッグの紅茶を飲んでいるという事実でした(ちなみにイギリスでマグカップは「マグ」と呼び、「カップ」はつけません)。カフェやティールームでも、紅茶やハーブティーにはティーバッグを使っているところがほとんど。観光でイギリスにやってきて、ティーバッグでお茶を出されてがっかりした、という方もいるかもしれませんね。

イギリス人義母に聞いたところによると、義父母が若い頃には、結婚する時に、ティーセット(お揃いのティーポットにカップ&ソーサー、ミルクジャグにシュガーボウル)を購入するのが一般的だったといいます。ただし、そういうティーセットを備えている家庭にお邪魔しても、たいていはマグカップで紅茶がでてきます。

また、何ごとにおいても「自分らしさ」を重要視するイギリスの人々なので、当然、マグにこだわりがある人もたくさんいます。これまでも、自慢のマグコレクションを見せてくれた人が何人もいました。また、縁がちょっと欠けてしまって、内側には茶渋が染み付いたご愛用のマグを何年も使い続けている人だっています。

ご愛用はもっぱらティーバッグ!

P&G 紅茶 240個入りのティーバッグでも、四人家族ならあっという間になくなる。

UK Tea & Infusions Associationのデータによれば、イギリスでは毎日約1億杯の紅茶が飲まれているといいます。そしてそのうちのなんと96%はティーバッグが使われています。

歴史をたどると、1908年(1904年という説もあり)に、ニューヨークの貿易省Thomas Sulivanが顧客に紅茶のサンプルを送る際、本来なら缶に入れるのを、絹の布袋に入れて送り、それを受け取った客がそのままポットに入れて使ったことが起源だといわれています。その後、絹の代わりにガーゼが用いられるようになったティーバッグは、1920年代のアメリカにおいて、大変ポピュラーになりました。
イギリスでは、第二次世界大戦時から続いていた紅茶の配給制が終わった1953年にTetley社がティーバッグの販売を開始。その便利さがうけ、その後10年のうちに従来の茶葉をポットに入れて紅茶を入れる方法から、カップに直接ティーバッグを入れる方法へと、イギリス庶民の紅茶の飲み方が大きく変化していったそうです。
フォートナム&メイソン 日本人観光客に人気のフォートナム&メイソンでも、ティーバッグ入りの紅茶がたくさん売られている。

ミルクは先か後か?

ミルク
イギリスでは98%の人が紅茶にミルクを入れるといいます。対して紅茶に砂糖を入れる人は30%。たしかに、イギリスでは何も言わなければミルクティーが出てくるというくらいに、紅茶にミルクはつきものです(そのため、普通の紅茶を飲みたいときには「ブラックティー」と注文します)。レモンを入れる人はほとんどいません。私は18年近くイギリスに住んでいますが、一般家庭で紅茶にレモンをいれるかと聞かれたことは一度もありません。

ちなみに、紅茶をいれるとき、マグにミルクを先にいれるか後に入れるかは、イギリスの人々の間で延々と繰り返されている論争のひとつです。

ミルクを先に入れる理由は、茶の習慣とともに中国陶磁器が上流階級の間で流行していた17世紀ヨーロッパまで遡るといわれます。当時の陶磁器は大変デリケートだったため、熱いお茶を注ぐと器が割れてしまうのではないかと案じられました。そのため、冷たいミルクを先に器にいれておくことで、それを避けるという意図があったといわれています。

現代のように、マグにティーバッグを入れて紅茶を作る際にはミルクを後から入れたほうがよい、という見方もあるようです。というのも、ミルクを先にいれてしまうと、マグに注いだお湯の温度が下がってしまい、紅茶を入れる際に最も重要な味や香りを抽出するための最適温度を保てなくなるためとのこと。とはいえ、自分なりの紅茶のいれ方にこだわりを持つ多くの人々は、自分のやり方を断固として変えないという人がほとんどです。

To dunk? Or Not to dunk?

ビスケット たくさんの種類があるビスケット。丸くて表面がツルツルしているのがリッチ・ティー・ビスケット。名前にティーが入っているくらいなので、紅茶に合うのは当然(!?)。

これまた意見の分かれる大問題が、紅茶と一緒に食べるビスケットについて。イギリスでは、男女問わず紅茶を飲む時にはビスケットをお茶請けにする人が多いのですが、その時、ビスケットを紅茶に浸してから食べるという人たちがいるのです。

たとえばチョコレートのついたビスケットでも「つける」派であれば、もちろん紅茶に浸してから食べています。一方で「つけない」派は、「よれよれしたビスケットなんてお断り」と顔をしかめます。

今や世界に知られるビスケットブランドのマクヴィティズは、1893年スコットランド創業で、イギリスの人気ビスケットのほとんどがこのブランドから発売されています。2016年には、テレビ番組などでも人気のスチュアート・ファリモンド博士の実験によって、紅茶にダンク(浸す)するのに最適なビスケットは、マクヴィティズ社のリッチ・ティー(Rich Tea)だと発表されました。ちなみに、これはエリザベス女王のお気に入りでもあり、毎朝紅茶とともに食べるのも、このビスケットだそうです。
ビスケットの本 2004年に出版され話題となった本『nice cup of tea and a sit down』には40種類以上ものビスケットが紹介されている。

イギリス紅茶の正統派いれ方とは?

紅茶ティーバッグ マグに入れるのに便利なように、マグに合わせた形のティーバッグも売っている。

少し前、ブログに「イギリスの紅茶について、ほんとうの淹れ方をあなたは知らない。」という記事を書いたところ、たくさんの反響をいただきました。「びっくりした。」という方もいた一方で、イギリス在住の方や、イギリス居住経験のある方からは「イギリス人がそうやっているのを見たことがある。」「自分もそうしている。」といったメッセージが届きました。

そこでご紹介した紅茶のいれ方で特にイギリスらしいのは、マグにいれたティーバッグを出す時に、しっかり絞るというところです。

絞り方は、マグの端っこにスプーンで押さえつける場合と、スプーンにのせたティーバッグを指で絞る場合とありますが、これ、意外に多くのイギリス人がやっています。

マナー的にはよくないかもしれません。でも、こんなふうに気軽に紅茶を楽しむイギリスの人たちと暮らしていると、「おいしい紅茶」の定義ってなんだろう? と考えるようになりました。

洗練されたホテルのラウンジでいただく、高級茶葉からいれられた紅茶ももちろんおいしいです。でも、今のところ私にとっておいしい紅茶とは、「A cup of tea?」と聞いて、大好きな家族や友人が入れてくれた、マグになみなみとつがれたミルクティーという気がしています。
ビル・ナイとアネット・ベニングの映画 ‘Hope Gap’には、イギリス流、紅茶のいれ方が登場します。
Photo&Text by Mami McGuinness


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マクギネス真美

マクギネス真美

イギリス在住18年のライター、ライフコーチ。東京での雑誌編集を経て渡英。 2004年よりイギリスを拠点に多媒体にて企画、編集、取材、執筆、コーディネイト、撮影を手がける。テーマはライフスタイル、ガーデニング、料理、人物インタビューや旅ガイドなど。メディアを問わず、イギリスの素敵なひと、場所、ものごとをひとりでも多くの方に伝えたいと活動している。『英国ニュースダイジェスト』ではイギリスの食に関するコラム「英国の口福を探して」を5年にわたり連載。イギリス料理についてのセミナー講師をしたり、文化放送、NHKラジオ、TOKYO FM等のラジオ番組に出演も。コーチングにより人生再起動ができた経験を経て、現在はライフコーチとして、人生をより良く生きたい方へのサポートも行っている。

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