ロンドンでこの春行くべき最注目カフェ5選 | BRITISH MADE (ブリティッシュメイド)

Absolutely British ロンドンでこの春行くべき最注目カフェ5選

2024.04.10

まだちょっと肌寒いかな?と思える日々ではあるけれど、ロンドンではすでに爽やかな空気を求める人々で屋外席が大賑わい。今回は春から夏にかけて英国を訪れたいと思っている皆さんへ、最新カフェたちをご紹介しよう。ロンドナーたちの心はもうコートを脱ぎ捨て、すっかり春の装い。

1. Donutelier ドーナッテリア

イスラエルからやってきたケーキみたいな盛り盛りドーナッツ

Donutelier ドーナッテリア
イギリス人のドーナッツ好きは今に始まったことではない。一番人気は今も昔もジャム・ドーナッツ。それでも最近はバラエティも増え、ドーナッツ新時代の到来を街のあちこちで感じることができる。中でもレスター・スクエア駅すぐそばの角地に2023年に登場した「ドーナッテリア」は華やかさではどこにも負けないヒットメーカー。カウンターに並ぶ生き生きとしたドーナッツたちを一目みれば、このシンプルな揚げ菓子が再定義されるべきだと実感するはずだ。

ドーナッテリアのドーナッツは、まるでケーキ。チョコレートの鎧でコーティングされ、時にビスケットや色とりどりのクリーム、そしてフルーツの王冠をかぶっている。その全てのエレメントが心地よい調べを奏で、素敵なアンサンブルを形作る。十分に堪能したら思い切りよくナイフを突き立て、口に頬張ってそれぞれのメロディを存分に味わってほしい。

Donutelier ドーナッテリア
ケーキのようなドーナッツという新コンセプトをロンドンにもたらしたのは、もう30年以上イスラエルでチェーン展開をしているベーカリー「Roladin ロラディン」だ。パン屋さんだけあってクロワッサンをはじめとしたペイストリー類も素晴らしい出来栄え。外のウィンドウからキッチンを覗き込むと職人さんが一つひとつ丁寧に飾り付けしている様子を見学できるのも面白い。季節限定品や新たなフレーバーの開発にも余念がなく、たとえばイースター時期にはアールグレイ&トンカ・ビーンズのガナッシュ、マスカルポーネ・クリーム、ナッツ入りホワイト・チョコレートのコーティングを楽しむ春いっぱいのアイテムもお目見えした。カロリーのことなんて気にせずドーナッツの新境地に真っ直ぐ向き合ってみてはどうだろうか。店内にはテーブル席もあり、コーヒーも本格的なのが嬉しい。

ちなみにイスラエル国外で初めてのドーナッツ専門店なのだから、店名の綴りはぜひとも英国式に「Doughnutelier」としてもらいたかったところだ。え? ちょっと込み入りすぎている? そこがイギリス人らしさなのだから仕方ない。

48-50 Charing Cross Road, London WC2H 0BB
https://donutelier.co.uk


2. Qima Cafe キーマ・カフェ

イエメン発「生活を助けるコーヒー」をテーマに急成長中

Qima Cafe キーマ・カフェ
今、ロンドンで最もユニークな焼き菓子やスナックを提供している人気急上昇中のコーヒーハウスがここ。アラビア半島南端のイエメンにルーツを持つコーヒー焙煎所&専門業者が母体で、2022年秋のオープン。創業者の祖父が17歳のときにイエメンの小村で始めたカフェが、その全ての根幹にある。

イエメンのコーヒー? あまり聞いたことがないと思われるかもしれないが、じつは世界に先駆けて飲料としてのコーヒーの栽培・売買を始めた国だと言う。Qima Cafe創業者の祖父はコーヒー業者として成長し成功。「人々の生活を支える」ことを決意し、国中に学校、診療所、道路を建設し、何千もの生活を助けたのだそうだ。「企業の社会責任」などという言葉ができるずっと前のことだ。

その孫であるファリス・シェイバニーさんは英国生まれの英国育ち。ルーツであるイエメンと英国を行き来しているうちに「コーヒー」を媒介にイエメンの経済的窮状を救うことができるのではと思い立ったことが、Qimaの始まり。エシカルであることを理念として、コーヒー農家と周辺ビジネスを潤すために奮闘している。

Qima Cafe キーマ・カフェ
入ってすぐ目に留まるのは、これまでのロンドンでは見たことがないようなスナックたち。コーヒー業者だけにコーヒー豆の形をしたチョコレート・スイーツ、チーズクリームを包んだメロンパンのようなコーヒー・フレーバー菓子など、心奪われるものが多い。イエメン風ミルク・ローフにさまざまな惣菜を挟んだサンドイッチも大人気。落ち着いた風合いの湯呑み型カップも心地よく、新世代のコーヒータイムを満喫できること請け合い。

イエメンのコーヒーに興味があるなら、豆や粉を販売しているのでぜひ。サプリメント瓶のようなユニークな容器にはテイスティング・ノートや由来がぎっしりと書かれている。世界のコーヒー品種の98%以上がイエメンに遡るそうで、Qimaではその遺伝子的研究を進めて新たなテイストの発掘を目指している。現在の取り扱いコーヒーはイエメンだけでなく、世界各地約5000の農家と契約し、40カ国以上の焙煎所やカフェに卸しているそうだ。コーヒーとイエメンの歴史に思いを馳せつつカップを傾けるだけで、知らずにコーヒー生産国の生活をサポートできるパワースポットでもある。

21 Warren Steet, London W1T 5LT
https://www.qimacafe.com


3. The Rex ザ・レックス

ミシュラン・スターシェフの馬小屋風デリカテッセン

The Rex ザ・レックス
メイフェアの一画、Bruton Placeが今熱い。見るからに古い厩舎が連なる趣あるその通りは、ここ数年のうちに建物の一つひとつがトレンディなレストランやパブ、カフェ、ブティックに世代交代しつつある最注目のストリートなのである。その通りに今年になってオープンした「The Rex」は、スリランカ出身のミシュラン・シェフと富豪のギャラリー・オーナーがタッグを組んで提案するラグジュアリーなデリカテッセンだ。

洗練された田舎風ブティックのような店構え、石の床やタイル張りの壁、馬を繋いでいたリングや鉄柵に至るまで、19世紀の馬小屋のインテリアをうまく復元・活用すると同時に、再生木材を使った味のある家具を取り付け、前例がないほど温かみのある美しいデリ空間を創り上げている。ヴィクトリア朝時代にスターシェフが腕をふるう惣菜屋さんがあったとしたら、まさにこんな感じだったのではと思うほどだ。

The Rex ザ・レックス
得意としているのは英国伝統のパイ料理! ホット・ケースの中には熱々のビーフやチキン、ベジタリアンの小さなパイ、スコッチエッグ、そしてミニ・ウェリントンのようにも見える名物のソーセージ・ロールなどが並ぶ。壁一面の冷蔵ケースの中には、スリランカ風カレーや、鴨とキジのラザニアをはじめとした調理済み惣菜、オーブンに入れて焼くだけのご馳走パイ料理、色とりどりのサラダ類がうっとりこちらを眺めている。贅沢なサンドイッチ類、上質の焼き菓子などもあり、メイフェアの住人がちょっとした家庭パーティーで料理をする時間がないときに大助かりしそうな素材ばかりだ。8.50ポンド(約1600円)する小さなソーセージ・ロールの上品なミートはほんのり甘くコクもあり、日本人好みであることを付け加えておこう。

同じチームがつい最近The Cocochine ココチーヌというモダン・ヨーロピアン・レストランを斜め向かいにオープンしたばかり。Bruton Placeにはこの後も続々と飲食店やブティックが参入してくる予定。目下、いちばん目を離せない通りなのだ。

38 Bruton Place, London W1J 6NX
https://therexdeli.com


4. Hiden Curry ヒデン・カレー

日本のカレーへの情熱が詰まったクールな溜まり場

Hiden Curry ヒデン・カレー
かのフィナンシャル・タイムズの食コラムで4年前の創業時に大絶賛された日本人経営のカレー・ブランド「Hiden」が、2023年に北ロンドンのトレンディなFinsbury Park駅すぐ近くに路面店をオープン。ポップなジャパン・クールを近隣にもたらし、諸手を挙げて歓迎されている。人気のヒミツはもちろん、カレーのベースとなる秘伝ルーのお味。フルーティーで深いコクがクセになる絶品ソースなのだが、驚いたことに油分を使わない野菜レシピ。15〜20種のスパイスを配合し、ビーフ、チキン、ベジの3種のカレーともに異なるブレンドで作るこだわりがある。正式名称に「Hiden Japanese Curry Lab」とあるだけあって、ここはまさにカレー研究所。日本のカレーと、世界のカレーを知るロンドン・シェフが、心を込めて開発した究極のルーをぜひ皆さんにも試していただきたい。

Hiden Curry ヒデン・カレー
Hiden特製チキン・カツをソースと一緒にクロワッサンに挟んだ「Katsu Sando」もボリューミーでランチにピッタリ。ヴィーガン・オプションを複数取り揃えるなどZ世代への配慮もある。食メニューに合わせるこだわりのコーヒーは、メイフェアの老舗ヒギンズのものを使用。抹茶ラテやほうじ茶ラテも日本人だからこそ作れる本物の味だ。しかも日本酒をはじめアルコールも扱っているので、絶品の唐揚げやカツなど居酒屋メニューをつまみながら、日本の食文化をカジュアルに知るのにも最適。締めやおやつには、日本x英国スイーツで大人気のブランド、Kichiyaの抹茶カヌレやチーズケーキはいかが?

イギリスでは今日本のカツカレーが日常食になり、スーパーでも調理済み惣菜を買える時代になった。しかし日本の魂が宿るこだわりのカツカレーは、それほど多くない。Hidenのイエロー・マジックが目下急速に浸透中なのは、Sushiと同様、本物を追求したい現地の人々が増えているからなのかもしれない。

53 Stroud Green Road, London N4 3EF
https://hidencurry.com


5. Storyline ストーリーライン

Modbarで決めたスタイリッシュな謎のカフェ

Storyline ストーリーライン
中心部周縁のマリルボーン地区に、シュッとした面持ちのモダンなカフェが佇んでいる。店構えに惹かれ、ふらりと立ち寄ってみるとカウンターに並ぶ魅惑的なケーキやパン、気負わない様子のスタッフたち、奥に並ぶModbar(エスプレッソマシンのポルシェ)の輝きが目に入り、ますます興味をそそられコーヒーを注文した。テーブルについて耳を澄ませば、フランク・シナトラの包容力ある温かな歌声が聴こえている。モダンで爽やかなインテリア、レトロな音楽がえも言われぬリラックス・ムードを作り出し、Storyline(ストーリー展開)などという意味深な名前を背負っているわりに、じつに健康的で爽やかな印象を放っているのは確かだ。

Storyline ストーリーライン
2023年夏創業のStorylineは公式ウェブサイトもなく、業界レビューも皆無。ほとんど情報のないインスタと、謎のTikTokアカウントのみが存在し、これを書いている今も誰がどんな目的でオープンしたのかわからない。しかしインテリアへのこだわりや、洗練されたロゴ、コーヒーの飛び抜けた美味しさからして、大きなカフェ愛があることは間違いないだろう。

スタッフと話してわかったのは、どこぞの「投資家」による事業であること、コーヒー作りへの情熱、ほぼ全ての焼き菓子をロイヤルと関係の深い個人が作っていることなど。試しに上品な長方形のキャロット・ケーキを食べてみると、しっとりとした伝統の味が幸福を呼び覚ましてくれた。特徴的な商品の一つに「Lokma ロクマ」と呼ばれるトルコ・イズミール地方の名物ミニ・ドーナッツがあり、そこを手がかりにするとトルコ系、または中東系の人々が関わっているとみて間違いないと思うのだが、どうだろうか。

Storylineは店の前を偶然に通りがかる人たちが「発見」するカフェだ。カフェは人が交差する場所であり、ストーリーであふれている。スタッフも客も、そしてオーナーでさえも。ストーリーラインを追ってまた訪れたい、そんな気持ちにさせられる不思議な魅力あふれるカフェなのだ。

8 Duke Steet, London W1U 3EW
https://www.instagram.com/storylinelondon


Text&Photo by Mayu Ekuni


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江國まゆ

江國まゆ

ロンドンを拠点にするライター、編集者。東京の出版社勤務を経て1998年渡英。英系広告代理店にて主に日本語翻訳媒体の編集・コピーライティングに9年携わった後、2009年からフリーランス。趣味の食べ歩きブログが人気となり『歩いてまわる小さなロンドン』(大和書房)を出版。2014年にロンドン・イギリス情報を発信するウェブマガジン「あぶそる〜とロンドン」を創刊し、編集長として「美食都市ロンドン」の普及にいそしむかたわら、オルタナティブな生活について模索する日々。

http://www.absolute-london.co.uk

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