ヤバイよ、ロンドンの物価高。手頃で美味しい食事はどこ? | BRITISH MADE (ブリティッシュメイド)

Absolutely British ヤバイよ、ロンドンの物価高。手頃で美味しい食事はどこ?

2025.06.12

「ヤバイよ、ロンドンの物価高。この先どうなる?」が、実は今回のテーマだったのだが……書き進めていくうちになんとなく暗くなってしまったので(笑)、この稿は別の機会に譲るとして、視点を変え「物価高のロンドンで、旅行者の皆さんに優しい食事処とは?」というテーマで書いてみることにした。

それにしても、老いも若きも悲鳴をあげたい、超物価高な昨今のロンドンなのである。正直、感覚的にはパンデミック前の1.5倍。物によっては2、3倍。家賃は信じられないレベルで高騰中。為替レート次第ではあるが、最もリーズナブルな選択肢であるはずのシェアハウスの1部屋が現在、月20万円が相場となっている。レストランも軒並み値上がりし、ロンドナーたちもいっときのように外食を頻繁に楽しむという感じではなくなっているようだ。

そこで今日は、「リーズナブルなディナー」に焦点を当ててみたい。ランチはカフェで済ませられるはずなので、あえてディナーに挑戦。1名25ポンド前後(約5000円、飲み物次第)のおすすめを挙げてみようと思う。

5000円と言えば日本なら大満足のディナーをいただけるお値段ではあるが、ロンドンでは正直、十分な予算とはいえない。選ばなければ「安い店」はまだまだあり、中心部から離れれば安くて美味しい店も見つかるだろう。そこで今回はあえて「ゾーン1のお手頃ディナー」を。チェーンも含めて安さだけが魅力ではない、筆者おすすめの店を紹介していこう。

救世主No.1:Farmer J ファーマージェイ
〜栄養満点、ロンドナーのための新世代カンティーン〜

ロンドンお手頃外食特集
人は夕食に何を求めるのか。おそらく「1日を終えていただく、ほっとする温かい料理」なのではないだろうか。Farmer Jはこの点をしっかりと掬い取る優秀なカフェ・チェーンで、この3年間でピカデリー、オックスフォード・サーカス、ロンドン・ブリッジ、シティなど市内15ヵ所に展開している急成長中のブランドである。カウンター内にはハリッサ味のチキン、照り焼きサーモン、豆腐料理、マカロニチーズなどホカホカの料理と、各種サラダがズラリと並び、3種の惣菜を選べる弁当風ボックスにすれば15ポンド程度で栄養バランスも申し分ない。中心部の支店は19:30-21:00くらいまで営業。最近できたピカデリー店は内装も落ち着いていてディナー向き。目下、多忙なロンドナーたちの栄養食堂としてじわじわと浸透中。

www.farmerj.com

救世主No.2:Megan メーガン
〜若い世代に大人気の地中海風カフェ・レストラン〜

ロンドンお手頃外食特集
市内に約15店舗を構える地中海料理カフェ&レストラン。このブランドもほんの数年前までは数店舗を数える程度だったのだが、安く美味しく楽しく気軽に飲めることから、特に若い世代にあっという間に浸透。メインの皿は15〜20ポンド程度。人気のグリル料理のほかに、バランスよく食べられるヘルシーな「ボウル」シリーズ(12〜16ポンド)もあり、飲み物を頼んでも30ポンド以内に抑えることが可能。もう一つ、カクテル好きな若い世代をターゲットにしていることからドリンク・メニューが充実していることにも注目。ノンアルなら各種ハウス・ソーダ(4.5ポンド)が賢い選択だ。地中海風のライトな雰囲気のなか、リーズナブルにロンドンの夜を堪能したいあなたにおすすめ。

megans.co.uk

救世主No.3:Roti Chai ロティ・チャイ
〜忘れてならないインド料理、ここは一つの選択肢〜

ロンドンお手頃外食特集
ハイド・パークに程近い静かな一画にすでに10年以上佇んでいる楽しいインディアン・カンティーン。1階の「ストリート・キッチン」は前菜類が7〜10ポンド程度、メインのカレーは11〜15ポンドと良心的。うまく頼めば25ポンド程度で大満足できること請け合いだ。ロンドンにカレー屋は数多いが、ここはモダンなメニューとコンテンポラリーな雰囲気が魅力。セモリナ粉で作ったまあるいシェルにポテトやひよこ豆を詰めた「Pani Puri」 や、ライスが美味しいビリヤニはいつもおすすめ。ロンドンでは「インド料理店をいかに使うか」が、食費を抑えるヒントにもなるはずだ。

www.rotichai.com

救世主No.4:Rock and Sole Plaice ロック&ソウル・プレイス
〜魅惑のチッピー。イギリス人のソウル・フードははずせない〜

ロンドンお手頃外食特集
1871年創業、中心部にあるロンドン最古のフィッシュ&チップス店の一つ。英国伝統のソウル・フードを、清潔感のあるカフェ風食堂で食べたいならここがおすすめ。タラ、ハドックをはじめ、6種の白身魚から選べるフィッシュ&チップスは、20〜22ポンド。これだけでもう幸せ&お腹いっぱい。コロコロとした愛嬌あるポテトフライ(チップス)が特徴。面白いのはコールスローやガーキンに加えて、ロンドンが発祥と言われる小玉ねぎや固ゆで卵のピクルスなどのサイド・メニューが充実していること。盛り合わせもあるのでシェアしてみるとよいアクセントになるだろう。暖かい季節はとくにアンブレラのある外テーブルが大人気。今もロンドナーに愛され続ける名物店として賑わっている。

www.rockandsoleplaice.com

救世主No.5:Patogh パトグ
〜郷愁を感じるペルシャ風ケバブを食べよう〜

ロンドンお手頃外食特集
すでに25年以上営業しているイラン風ケバブのお店。ササン朝ペルシャのにぎやかな村にタイムスリップしたような、不思議な感覚を覚える知る人ぞ知る名店。炭火で香りよく焼かれるケバブ(7〜12ポンド)と、ペルシャ名物の大きなナン・ブレッド、フモスなどの前菜を注文しても予算内。ドリンクにはお茶をぜひ。おすすめは鶏肉のつくねケバブ。鶏肉ミンチはロンドンでは珍しいのでぜひ試してみてほしい。店の雰囲気を堪能しつつ料理を楽しんだら長居は無用。支払いをキャッシュで済ませて早めに次の人にテーブルを譲ろう。店の近くにある大通りEdgeware Roadは通称「リトル・ベイルート」とも呼ばれ、レバノンをはじめアラブ系の食文化を堪能できる通り。中東風デザートをいただけるカフェも夜遅くまで営業しているので、食後はそちらに移動するのがおすすめ。

www.patoghlondon.com

救世主No.6:Windmill ウィンドミル
〜メイフェアのど真ん中でパイ料理とサンデーローストを〜

ロンドンお手頃外食特集
パブはいつでもどこでも救世主だ。例えばメイフェアのど真ん中で営業しているウィンドミルは、パイ料理を得意とするガストロパブで、サクサクのパイに副菜もついて20ポンド前後と、お得感いっぱい。権威あるグレート・ブリティッシュ・パイ・アワードで金賞を受賞した実力派でもある。季節限定パイのほか、個人的 にはサンデーローストもおすすめ。柔らかな肉とロースト野菜は英国伝統の日曜日のごちそうなのでぜひ。最近のパブはバーとダイニングが分かれていて、ダイニングはレストランのような仕様になっている。お手頃に食事をするには、バー・エリアのテーブルに座って、前菜などを飛ばしてシンプルに食事をすることだ。どのパブもバー、ダイニングにかかわらずかなり居心地のよい空間を演出しているのでパブをどんどん活用してほしい。

www.windmillmayfair.co.uk

救世主No.7:Cay Tre Soho ケイ・トレ ソーホー店
〜中心部でベトナム料理ならここ〜

ロンドンお手頃外食特集
ロンドンにおけるベトナム料理の本場、ショーディッチで産声をあげ、あまりの人気にすぐさま中心部に進出した老舗ベトナム料理レストラン。複数のお皿をシェアする代わりに、フォーやライス・ヌードル・ボウルを一人一つ頼む作戦はどうだろうか。おすすめは具をもりもり載せたライス・ヌードル「Vermichelli」の「Bun Sa」。そしてポークをさまざまな形で楽しむ「Bun Cha Hanoi」。ご飯が恋しいなら「Rice Plates」 の中から目玉焼き付きの肉料理を選ぼう。店はSohoのど真ん中にあり、サクっと食べて観劇やライブ鑑賞に出かけるのにぴったりのロケーションでもある。ベトナム料理は手軽な食事オプションでもあり、Cay Treでなくてもあまり失敗はないので見つけたら入ってみる価値あり。

caytrerestaurant.co.uk

救世主No.8:Casa do Frango カーサ・ド・フランゴ
〜ポルトガル風のペリペリ・チキンを素敵空間で〜

ロンドンお手頃外食特集
ロンドナーたちが大好きな日常使いのファミレスといえば、ペリペリ・チキンのNando’s。ナンドスよりも、もっと大人の環境でチキンを楽しめる庶民派居酒屋がこちら。2018年に一号店をロンドン・ブリッジにオープン、現在は3店舗を市内に構える人気ブランドに。中心部メイフェアにできた2店舗目は、広さも快適さも十分であるにもかかわらず、お値段は庶民価格のまま。名物のペリペリ・チキンはハーフで15ポンド。前菜として2.5ポンドのエンパナータを一人1個頼み、小さな副菜(7〜12ポンド)をいくつかシェアすれば、30ポンド以内で満腹になる。レストランの敷居が高いと感じている方でも楽しめるお店なので、覚えておくと重宝するはず。

www.casadofrango.co.uk/locations/mayfair

救世主No.9:Rosa’s Thai ロサズ・タイ
〜ロンドンらしいカジュアルな現代タイ・カフェ〜

ロンドンお手頃外食特集
現代風のバンコク料理をいただけるタイ料理チェーン。14歳から料理をしているタイ人女性がゼロから作り上げたブランドで、2008年の創業から今ではロンドン市内に約30店舗を構えるビッグ・ビジネスに成長、現在は地方都市にも展開中。カラフルな色使いとポップなインテリアで世代を超えたファンを獲得している。おすすめのカレー類は15ポンド前後でお手頃なのだが、ライスを別注文する必要があるので20ポンドは考えておいてほしい。2名ならカレーとヌードルなどをそれぞれ注文し、野菜の副菜とともにシェアすると、予算内で満足感のあるディナーになるはずだ。メニューの見直しが定期的に行われるので、ロンドンにおけるタイ料理のトレンドを知るのにももってこい。

rosasthai.com

救世主No.10:Agora アゴラ
〜ロンドン・ブリッジのギリシャ風一杯飲み屋〜

ロンドンお手頃外食特集
今年4月にオープンしたばかりのギリシャ風串焼きバー。ワイン・グラス1杯といくつかの惣菜で1名25ポンド、サービス料込みという離れ技を実現してしまったのでご紹介したい。とにかくどのアイテムも単価が安い。まさに「会社帰りの一杯」にもおあつらえ向き。名物のフラットブレッド、スプレッド各種、串焼きをいくつかで大満足。ロンドンの胃袋バラ・マーケットの一画で、軽く飲んで食べて楽しめるだけでなく、ロンドンの鼓動を感じることができる財布に優しいレストラン・バーなのである。ウォークイン大歓迎の姿勢を貫いているが、すぐに長い行列ができるので4名以上なら事前予約がおすすめ。もちろんロンドナーと一緒に長い行列に並ぶ体験も、旅の思い出になることだろう。

www.agora.london

以下にも、上記リストを作成したあとで思いついたオススメ店を簡単にリストアップしておこう。気づけばやはり、ロンドンらしくさまざまなジャンルをカバーすることになった。いずれも知っておくと助かる店ばかりだ。

Farnco Manca

現代風のピザ・チェーンの頂点に立つブランド。ピザ7.95〜14.25ポンド。ロンドン市内に36店舗。

www.francomanca.co.uk

Mildreds

野菜不足解消に役立つ良質のベジ・レストラン。メインが平均17ポンド。ロンドン市内に6店舗。

www.mildreds.com

Lina Stores

Sohoの名物デリから始まったロンドナー御用達イタリアン。パスタ9〜17ポンド。ロンドン市内に9店舗。

www.linastores.co.uk

Flat Iron

ステーキ好きに愛されるステーキハウス。ステーキ15ポンド+副菜3.5ポンド〜。ロンドン市内に15店舗。

flatironsteak.co.uk

Pret A Manger

常にセンスよく仕上がっている各種スープ(5.75ポンド前後)がおすすめ。中心部の支店は20:00くらいまで営業。ロンドン市内に約270店舗。

www.pret.co.uk/en-GB

ロンドン市内各地にある屋内フードホール

Mercato Metropolitano
Market Halls
Seven Dials Market

いかがだっただろうか。

通常のレストランでももちろん、注文する料理の数を減らせば安くなるのは当たり前なのだが、やりすぎると店側に迷惑がかかってしまう。なぜなら彼らもロンドンの高い地代を払いつつ商売をしており、テーブル単価を何気に設定しているからである。ディナーに関して言うと、1名の消費単価の目安は、おそらく現在は50ポンド程度。ドリンクが多めになると80ポンドくらいが相場だろう。

ドリンクは最終支払額を左右する大きな要素だが、アルコールをたくさん飲みたいなら、レストランでは1杯にとどめ、あとはパブに行くことをおすすめする。またアルコールを飲めない皆さんにも、一言アドバイス。

日本では無料の「お冷」(ときにはお茶……)が出てくるのが当たり前で、それでドリンクをすませてしまうこともあると思うが、イギリスではエチケットとしてドリンクを最低でも1杯は注文することをおすすめしたい。ミネラル・ウォーターでも、レモネードでも。客としてはそのほうがスマートだし、偏見の強いスタッフに嫌な顔をされることもなく、気持ちよく食事ができるはずなのである。

ちなみにパブでもビール1パイントが7〜8ポンド(約1400〜1600円)はするご時世。本当に安く済ませたいなら、庶民の味方、Weatherspoon系列のパブに行くとかなりセーブできる。

ロンドンの食シーンを体験することは、ロンドンの文化を知ることでもある。夜でも臆さず、ホテルに引っ込まず、ぜひ外の空気を吸って思い出作りをしていただければと願うばかりだ。

Text&Photo by Mayu Ekuni

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江國まゆ

江國まゆ

ロンドンを拠点にするライター、編集者。東京の出版社勤務を経て1998年渡英。英系広告代理店にて主に日本語翻訳媒体の編集・コピーライティングに9年携わった後、2009年からフリーランス。趣味の食べ歩きブログが人気となり『歩いてまわる小さなロンドン』(大和書房)を出版。2014年にロンドン・イギリス情報を発信するウェブマガジン「あぶそる〜とロンドン」を創刊し、編集長として「美食都市ロンドン」の普及にいそしむかたわら、オルタナティブな生活について模索する日々。

http://www.absolute-london.co.uk

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