2023年に行きたいロンドンの極上パン屋さん7選 | BRITISH MADE

Absolutely British 2023年に行きたいロンドンの極上パン屋さん7選

2023.02.03

今、ロンドンの街を歩いていると、どこを向いてもパン屋さんばかりでよりどりみどり。美味しいお店が増えて嬉しい限りなのだけれど、一体どこに行くべきか、時に分からなくなることもあるだろう。そんなあなたに、自分の足で回って「コレ!」と思った職人ベーカリーをご紹介したい。彼らのクラフトマンシップに対する、ありったけの敬意を込めて。

ちなみにロンドンのベーカリー・マップは東に偏りがちなのだが、それも時代を表しているのかもしれない。今回はあえて日本のベーカリーをはじめアジア系の店は番外にしているので悪しからず。

ではでは独断と偏見でお届けする、ロンドンの極上ベーカリー7選!


1. Fortitude Bakehouse フォーティチュード・ベイクハウス

自然との調和が成った深い味わいで賞
Fortitude Bakehouse フォーティチュード・ベイクハウス
「ロンドンでどこのパン屋さんがいちばん美味しい?」と聞かれたら、私なら迷わず「Fortitudeでしょう!」と答える。ラッセル・スクエア駅すぐ裏手。看板がなければ見逃してしまう石畳のミューズにひっそり佇むフォーティテュードの何がすごいかって、おかず系から菓子パンまで、どのアイテムをいただいても見た目を上回る味わいを堪能できることだ。チームを率いるのは1980年代からベーカリー・ビジネスに身を投じているアイルランド生まれのディー・レタッリさん。今でこそロンドン中のパン屋がサワードゥを使っているようにも思えるが、彼女はその先駆け。有機小麦の生地をサワー種でゆっくり時間をかけて発酵させることによるメリットを研究し、今ではパンだけでなくケーキにもサワー種を使っている。フォーティテュードのパンは、食べると身体が喜ぶ感じと言うと大袈裟だろうか。いやでも本当に。
Fortitude Bakehouse フォーティチュード・ベイクハウス
私のオススメはおかず系のパン! どれをいただいても具材やトッピングのセンス良い組み合わせや調理に唸ることになるのだが、特にモロッコ風オムレツBerber Omlette’sと香ばしく両面をグリルしたフラットブレッドの融合を楽しむサンドイッチはぜひ。頬張るとジューシーなパテの旨味がじわっと口の中に広がり、たまらない。日替わりでフルーツを焼き込む名物のモーニング・バンも人気商品。最近はたっぷりのクリームを挟んだ丸いバン(ベニエと呼ばれている)が写真映えして大人気だが、クリーム系にあまり触手が動かない私はまだ試さずじまい。近い将来必ず。

35 Colonnade, London WC1N 1JD
https://www.fortitudebakehouse.com
【似ているオススメ店】
E5 Bakehouse
https://e5bakehouse.com
様々な媒体で何度もご紹介しているロンドンの重鎮的なアルチザン・ベーカリー。粉や生地そのものへの絶対的な敬意と親和性を感じることが共通点。サワードゥ・ブレッドならここのハックニー・ワイルドがロンドン・ナンバーワン! サワードゥ・ブレッドの個人的な次点はマズウェル・ヒルに新しく登場しているBoulangerie Pierre Alixのベーシックなもの。


2. Toklas Bakery トクラス ・ベーカリー

ベスト・ニューカマーで賞
Toklas Bakery  トクラス ・ベーカリー
最近のマイブーム的な素敵パン屋さん。劇場街でもあるストランド近く、人もまばらな裏通りに2021年秋、ひっそりと誕生したToklasはイギリスが世界に誇るアート専門誌「Frieze」の創業者が手がけるちょっとアーティなベーカリーだ。20世紀初頭の華やかなりしパリの美術界で活躍したアリス・B・トクラスに由来する店名が、どこかエキゾチック。ロンドンのハイエンドなベーカリー業界でしっかりと研鑽を積んだヘッドベイカーが特徴あるパンを生み出しファンを虜にしている一方、広々としたカフェ・スペースも実はオススメの理由。Friezeがバックに付いているだけあり独特のポップなインテリアが楽しく、アートにゆかりがありそうな客層をチラチラ眺めつつ菓子パンにかぶりつくのも一興。
Toklas Bakery  トクラス ・ベーカリー
イチオシはふわっとした口当たりの生地と上品なピスタチオ・クリームのコンビを楽しむ俵形デニッシュ。マーマレード味のボストックや筒型のバスク・チーズケーキ、温めてサーブしてくれるチェルシー・バンズも人気アイテムだ。ランチ時間なら上質の日替わりサラダとキッシュのランチは満足度が高くお手軽なのでぜひ。もっとゆっくりできるなら併設されているレストランへ! 日本人の古橋シェフが気負わない地中海料理を振る舞ってくれるはずだ。もちろん香り高い特製サワードゥ・ブレッドの注文もお忘れなく。

1 Surrey Street, London WC2R 2ND
https://www.toklaslondon.com/toklas-bakery


3. Pophams Bakery ポップハムズ・ベーカリー

デニッシュ・ペストリーの王様で賞
Pophams Bakery  ポップハムズ・ベーカリー
イズリントンの住宅街に颯爽とオープンして以来、5年以上にわたってデニッシュ・ペストリーの新境地を拓き続けているPophams。その見目麗しくも完璧なアイテムは今も多くのロンドナーたちを魅了し、現在のところ東ロンドンを中心に3号店まで打ち立てている。人気の秘密は定番クラシックとは一線を画した独自路線のフレーバーやシェイプ。個人的にはデニッシュ生地そのものの美味しさにも秘密があると思っている。生地がフレーク状に外れていくタイプではなく、細やかな層になっていることで口当たりも風味も良くなる。バターの分量が関係しているのではと睨んでいる。ともかくあれもこれもと試したくなる名店。
Pophams Bakery  ポップハムズ・ベーカリー
ローズマリー&シーソルト、西洋ネギ&チーズ、ブラッド・オレンジ&チョコ、ラズベリー&ピーナッツ・バターなど、それまでロンドンではあまりお目にかかれなかった楽しく繊細なフレーバーにロンドナーたちは夢中に。いずれのショップも週末ともなると軽食やサンドイッチなどを求める人でテーブルの争奪戦が起こり行列ができるほどの人気ぶりで、広々としたロンドン・フィールズ店も例外ではない。ポップハムズある限り、ロンドンのペストリー・レベルは常にマックスなのだ。

197 Richmond Road, London E8 3NJ
https://www.pophamsbakery.com
【似ているオススメ店】
Sourdough Sophia
https://sourdoughsophia.co.uk
ロックダウン中のホビーがビジネスに変身した北ロンドンの実力派ベーカリー。変わりデニッシュではポップハムズに勝るとも劣らない珠玉のアイテムを揃える。中でもマーマイト・ロール、日替わりデニッシュ類、そして名物クルフィンは外せない美味しさ。北ロンドンのクラフト食材店でもたまに見かける。


4. Jolene ジョリーン

古代農法のサポーターはクールなブレッド・バーで賞
Jolene ジョリーン
上質レストランがパン屋さんを立ち上げたら・・・しかも古代農法をサポートするサステナブル・コンセプトだとしたら・・・そんな素敵なブレッド・バーが、東ロンドンの緑のスクエア、ニューイントン・グリーンにあるJolene。ここはいつ来てもカッコいい! モダンで温かいアーバン・ラスティックなインテリア。清々しく心地よい空気がゆったりと流れ、いつも光に満ちているのがいい。敷地内で引いた小麦粉を使うこだわりもすごいのだが、その小麦が特別な自然農法を実践するWildfarmedから直送された「動物たちが耕す健康な土地で自然栽培されている古代小麦」だと聞くにつけ、そのサステナブルな姿勢にも共鳴することになる。古代小麦で作るパンは素朴な味わい。センスあふれる軽食をいただきながら、ナチュール・ワインをバーで一杯。そんな楽しみ方ができる自然派ブレッド・バー が、ジョリーンなのだ。姉妹店のBig Joが北ロンドンにオープンし、ジョリーンも3店舗を追加。そちらも大好評。
Jolene ジョリーン
ランチ時間以降は食事をする人であふれ返るので、喫茶利用をしたいなら午前中、もしくは15:00以降が狙い目(ベーカリーは16:00まで)。ブランチもあるのでいずれにせよパンと食事が目当ての人が多く、その洗練された現代風メニューの美味しいこと。スポンジ系のケーキは正直、日本人の口にはとても甘いのだけれど、パンはどれをいただいても間違いない。

21 Newington Green, London N16 9PU
https://www.jolenen16.com
【似ているオススメ店】
Layla Bakery
https://www.laylabakery.com
西ロンドンに2021年春にオープンして以来、行列のできる人気者になったレイラ・ベーカリーも実はWildfarmedの小麦を使っているブレッド・バーの一つ。こだわりオーナーさんの素敵な空間なので、西に出かけた際はこちらへもぜひ。


5. Dusty Knuckle Bakery ダスティ・ナックル・ベーカリー

太っちょサンドで勝負する社会派で賞
Dusty Knuckle Bakery  ダスティ・ナックル・ベーカリー
東ロンドンのダルストンでコンテナから出発したDusty Knuckleも大人になり、カルト的存在から誰もが知る人気ベーカリーへと成長。2軒目をオープンし、 ますます地域に貢献中。というのも共同創業者のマックス・トビアスさんには、当初から社会からはみ出し気味な若者に職業訓練の場を与えるという明確なヴィジョンがあったから。家庭に恵まれない若者たちが自分の足で独り立ちするには手に職をつけることが肝要で、中でもパン作りは手で生地をこね、生きた生地の発酵を待ち、焼き上げていく過程や、食べたお客さんに笑顔と栄養をもたらすという一連の行程が何よりも満足と癒しにつながると見抜いた。この持続可能な方法で何人もの若者に将来を与えてきたダスティ・ナックルは、今や地域のパートナー企業として重要な役割を演じている。食通たちに人気の有名デリ、オットレンギとパートナーシップも結んでいる。
Dusty Knuckle Bakery  ダスティ・ナックル・ベーカリー
ダスティ・ナックルのシグニチャーは、すりおろしたジャガイモを混ぜ込んだ生地を焼く「ホワイト・ポテト・サワードゥ」。しっとりクランペットのような食感になり、サクサクのクラストとも好相性でナンバーワン人気だ。またランチ時間に登場する丸々太っちょのサンドイッチは現代的なフィリングの旨さでも客を魅了する名物。その他、フェタ・チーズ&ハチミツのデニッシュなども美味しい。

【似ているオススメ店】
Chestnut Bakery
https://www.chestnutbakery.com
やはりパン職人を育成することも目的の一つとして立ち上がったアルチザン・ベーカリー。2軒あるお店のうちベルグレイヴィアにある本店では見習い職人の皆さんが働いている様子を見られるブースあり。ペストリー類はなかなかのお味で、イートインならフラットブレッドをぜひ。


6. Yeast Bakery イースト・ベーカリー

モダン・フレンチ・パティスリーの名門で賞
Yeast Bakery  イースト・ベーカリー
共同経営者のベン・キーンさんとアンジェラ・チャンさんは、フランス風のヴィエノワズリーにこだわり続ける職人さん。特にクロワッサンには一家言あり、その整然としたクラシックな佇まいと風味豊かな生地に長年培ってきたクラフトマンシップを感じることができる。創業は2011年と10年選手ではあるものの卸業に徹していたところ、パンデミックを機に自分たちのベーカリー・カフェを東ロンドンの運河沿いに構えたのが2021年のこと。以来、ディテールと味にこだわる姿勢でご近所だけでなく遠方からもリピーターを迎える大人気デスティネーションとなった。運河沿いの好立地にあり、犬の散歩の途中で立ち寄る常連さんも多い。
Yeast Bakery  イースト・ベーカリー
基本にあるのがクロワッサンへのこだわり。その延長に「Croaf」と名付けたクロワッサン・ローフがあり、さらにまん丸いお月様の形をした究極のクロワッサン「Circle Swirl」がお目見え。ニューヨークで超話題になっている車輪型クロワッサンのイースト・ベーカリー版は、レッドベリーと抹茶の2種。赤い方はラズベリー・ヴァニラ・クリーム入りでレッドベリーのクランブルをまぶしたもの。緑の方は抹茶&ホワイトチョコ・クリーム。持ち帰りで1個7.15ポンド(約1150円)するが飛ぶように売れているらしい。またパリッと表面を焼き付けた小さなクイニーアマンも、何種類もあるシグニチャーである。ここではクロワッサンやペストリー類をぜひ。ケーキはフランス風の滑らかなものがお好きな方向け。週末ブランチも人気!

Unit 1 Canal Place, 1-3 Sheep Lane, London E8 4QS
https://www.yeastbakery.com
【似ているオススメ店】
Café Kitsuné
https://www.pantechnicon.com/cafe-kitsune
ナイツブリッジにある日本 x 北欧カルチャー発信地、パンテクニコン内にある、パリ発のジャパニーズ x フレンチ・カフェ「カフェ・キツネ」(ややこしいですね)のペストリー! これは芸術。パンというよりケーキ。抹茶クロワッサンなどお近くにいる場合はぜひ。


7. GAIL’s ゲイルズ

チェーンなのに味と安定感がカリスマで賞
懲りずに何度でもマイリストに登場するGail’s(笑)。しかし! どのブランチも毎日大賑わいであることからして、私以外のロンドナーもゲイルズ中毒であることがお分かりいただけると思う。「ヘタな独立系ベーカリーよりもゲイルズ! 」とロンドナーの大半が密かに思っていることは間違いないのである。1990年代に創業したゲイルズも現在はイギリス全土に100店舗を擁する中規模チェーンになった。大味になってしまうのではと心配になるが、ゲイルズに限って言えば、それがないからこそ人気を保持しているのだと言えよう。定番品の決してブレない味、確かな技術、トレンドを取り入れた新商品、季節ごとに刷新されるサンドイッチやサラダ、滋味あふれるスープなど、人気の理由は枚挙にいとまがない。十分にトレーニングされた愛情あふれるパン職人の皆さんが、それぞれのお店で毎日パンを焼いている。個人ベーカリーと変わらない姿がそこにある。
それぞれお気に入りの品があると思うのだが、個人的なおすすめは、各種サンドイッチ、季節のサラダ、ソーセージ・ロール、フェタ&ほうれん草ロール、チーズ・スコーン、シナモン・バン、ブルーベリー&カスタード・ブリオッシュ、チョコレート・バブカ、ピーカン&シナモン・クラム・ケーキ、チョコ&タヒーニ・バイツ、ハニー・ケーキ、ナッツ・ビスケット、チェダー・チーズ・クラッカー、ダーク・サワードゥ、それからそれから・・・やや、紙面が尽きそうなのでここらで打ち止めとしよう。

https://gailsbread.co.uk
【似ているオススメ店】
Bread Ahead
https://www.breadahead.com
クオリティの高いチェーン店という意味で似ているブレッド・アヘッド。しかしこちらは6店舗のみ。そのうち1店舗はサウジアラビアに! ブレッド・アヘッドが打ち立てたドーナッツの金字塔は、その親に当たるSt John Bakeryでさえ倒すことがかなわないのかもしれない。


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もちろんこの他にも素晴らしいベーカリーはロンドン中にある。

最近はシナモン・バンで頭角を現した「Buns from Home」がさまざまなバンのバリエーションを作っていて人気だ。食事系のパンも各地域に素晴らしいベーカリーが点在している。

自分のお気に入りを見つけて、ブレッド・ライフを楽しもう!


Text&Photo by Mayu Ekuni




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江國まゆ

江國まゆ

ロンドンを拠点にするライター、編集者。東京の出版社勤務を経て1998年渡英。英系広告代理店にて主に日本語翻訳媒体の編集・コピーライティングに9年携わった後、2009年からフリーランス。趣味の食べ歩きブログが人気となり『歩いてまわる小さなロンドン』(大和書房)を出版。2014年にロンドン・イギリス情報を発信するウェブマガジン「あぶそる〜とロンドン」を創刊し、編集長として「美食都市ロンドン」の普及にいそしむかたわら、オルタナティブな生活について模索する日々。

http://www.absolute-london.co.uk

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