BRITISH MADE

English Garden Diary 12月のイギリス。クリスマス気分を盛り上げるスパイスの香り

2018.12.20

見上げると、薄墨色の大きな天幕をゴシック様式の寺院の塔が支えているように見えるイギリスの冬らしい空。そして、視線を下せば、「シャレー」と呼ばれる木製の小さな山小屋スタイルの出店が並ぶクリスマスマーケット。

ここは、街自体が世界遺産に登録されている歴史ある美しい場所、バース。クリスマスマーケットは毎年11月下旬から12月初めにかけて開催されています。

販売されているのは、地元在住のアーティストやイラストレーターによるクラフト作品や、バース近郊のラベンダー園で採れたラベンダー製のクリスマスリース。クリスマスツリー用のオーナメントや、クリスマスに欠かせないクリスマス・プディングやミンスパイといったイギリスらしいお菓子もあります。
バースのクリスマスマーケット。ロケーションがすばらしい。
マーケットではクリスマスツリーに飾るオーナメントもたくさん見つかる。
こうしたマーケットは規模の違いこそあれ、イギリス各地で開催されています。また、クリスマスマーケットに限らず、イギリスでは、クリスマスが近づくと、街だけでなく国全体が浮き足立ったかのように、にぎやかになるのです(今年はEU離脱問題があって、それどころではない、という人も一部にはいるかもしれませんが、それでもやっぱりクリスマス準備は必要なのです!)。

実際のところ、この国では「クリスマスが近づいてから」というよりは、夏のホリデー期間が終わり、9月になると、待ち構えたかのようにクリスマス商品がスーパーの店頭に並び始めます。そして11月になる頃には、人々の間で「クリスマス・ショッピング進んでる?」と挨拶のように聞く回数が増えていくのもいつものこと。
ロンドンのクリスマス風景。
日本からやって来て、こちらに住み始めたすぐは、どうしてこんなにも人々がクリスマスにこだわるのか、わかりませんでした。たとえば、クリスマスプレゼントは一人に一個ではなく、それぞれの人がいくつものプレゼントを送りあうこととか。クリスマスツリーは人工のものではなく、生の木にこだわる人が多いこととか(生の木はぽろぽろと落ちる葉の片付けなどに手間がかかるのですが、その香りのよさは格別です)。
街角に見つけたクリスマス。
でも、イギリス人たちと一緒にクリスマスを過ごす回数を重ねたことで、この頃では、その重要さを実感できるようになってきた気がします。

クリスマスは冬至を祝うお祭りが起源だとも言われますが、日が短く、暗い冬が長く続くイギリスに暮らすと、かつて人々がその日をいかに待ち望んでいたかが想像できます。そしてそれは、現代のイギリスでも同じ。日本の冬のように晴天が続くということはめったにないこの国。冬はにわか雨も多く、寒くて暗くて湿った日々を過ごす中で、クリスマスはまさに一筋の明かりのようなものでもあるのです。
この時期にはアンティークショップのショウウィンドウもクリスマス仕様に。
また、幼い頃のクリスマスの楽しかった思い出が忘れられないというイギリス人は少なくありません。たくさんのプレゼントをもらった時のワクワクした気持ち。それを自分の子供たちにも受け継ぎたいと、大人になってからも、子供のように(または子供以上に)クリスマスを楽しみにしている友人もたくさんいます。

そんな、イギリスのクリスマスを彩るものといえば。。。

たとえば、クリスマスマーケットでも売られていたミンスパイ(Mince pie)。これは、リンゴやドライ・フルーツ、柑橘類の皮の砂糖漬けやスパイスを煮込んで作った、ミンスミートと呼ばれるフィリングを詰めた直径5~7センチほどの小さなタルト。イギリスでは、クリスマス・イブの夜、子供たちが寝る前に、暖炉のそばにプレゼントのお礼として、サンタクロースにこのミンス・パイとシェリーを置いておきます。
また、クリスマスの時期には、来客へのお茶請けにこのミンスパイを出すことも多く、あたたかいミルクティーを飲みながら、これをつまんでおしゃべりするのが12月のティータイムの定番です。
ミンスパイを食べると、スパイスの香りが口いっぱいに広がる。
たとえば、マルドワイン(Mulled wine)。シナモンやクローブ、ナツメグといったスパイスとオレンジを入れ、砂糖を加えてあたためたワイン。こちらも、クリスマスマーケットには必ず出店があって、その香りをかぐだけで、クリスマス気分にスイッチが入ります。また、寒い中を訪ねて来てくれた来客に、紅茶の代わりにこのワインを作ってあげれば、家中に広がるスパイスの香りで「ウェルカム」の気持ちも伝わります。
クリスマスマーケットには必ずマルドワインを売るお店が。
たとえば、クリスマスケーキ(Christmas cake)。日本のものとは違って、どっさりとドライフルーツが入ったかなり重厚なケーキ。マジパンとその上からシュガーペースト(ロイヤルアイシング)で覆われるので、見た目は白く、その上にクリスマスらしいデコレーションが施されます。このケーキにもやっぱりスパイスがたくさん使われていて、ふわりと良い香りが広がります。

こうしてみてくると、イギリスのクリスマスに、シナモンやクローブなど、スパイスの香りは欠かせないものだと気づきます。
イギリスではマルドワインを作るキットがスーパーで手軽に買える。
マルドワインなら自宅でも簡単にイギリスのクリスマス気分を味わえるので、皆さんもぜひ、作ってみてはいかがでしょう? そして、あたたかいワインを飲みながら、素敵なクリスマスをお迎えください。

マルドワインの作り方
材料:
赤ワイン(750ml)…… 1本
オレンジ……2個
ブラウンシュガー……70g
シナモンスティック……3本
クローブ……10粒
ナツメグ(パウダー)……小さじ1
作り方:
1、オレンジ1つを半分に切り、果汁を絞る。もう一つは輪切りにする。
2、鍋に1とすべての材料を入れて中火で砂糖が溶けるように時々混ぜながら煮る。
3、沸騰させないように気をつけて煮て、香りがワインに十分移ったら火をとめる。
マルドワインには、ほかにもスターアニスやカルダモンといったスパイス類や、ポート酒やリキュール類を入れたりと、様々なレシピがありますので、自分の好みの組み合わせを見つけてください。

Photo & Text by Mami McGuinness

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マクギネス真美

マクギネス真美

イギリス在住の編集&ライター。9年半の雑誌編集を経て「ちょっと長めのホリデー」のつもりで渡英。たくさんのあたたかな人たちとの出会いにより滞在が長期化し、現在に至る。 2004年よりイギリスを拠点に書籍・雑誌・新聞・インターネット等にて企画、編集、取材、執筆、コーディネイト、撮影を手がける。テーマはライフスタイル、ガーデニング、料理、人物インタビューや旅ガイドなど。メディアを問わず、イギリスの素敵なひと、場所、ものごとをひとりでも多くの方に伝えたいと考えている。『英国ニュースダイジェスト』ではイギリスの食に関するコラム「英国の口福を探して」を連載中。2012年以降、文化放送、NHKラジオ、TOKYO FM等のラジオ番組に出演も。
ホームページ:
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